ヒトの体は非常に多くの細胞からできています。一方、大腸菌やゾウリムシは一つの細胞で生活します。数が大きく違うのに、なぜどちらも「細胞が生物の基本単位」といえるのでしょうか。
なんでなんで?! 細胞一つの大腸菌と、たくさんの細胞からなるヒトが、どちらも「細胞が基本」なの?
細胞の数ではなく、体のつくりと生命活動の土台が細胞にあるからです。観察の歴史と、単細胞生物・多細胞生物の両方から確かめましょう。
この記事でわかること
- 細胞を生物の基本単位と呼ぶ理由を説明できる
- 細胞説に関わる人物と、その観察・提唱内容を対応させられる
- 単細胞生物と多細胞生物の違いがわかる
- 細胞・組織・器官・個体の関係を整理できる
- 顕微鏡資料から細胞の大きさを読み取れる
『生物に共通する特徴とは?』と『生物はなぜこんなに違うのに、共通点がある?』で生物全体の共通性を見た後、ここから教科書順に細胞の学習へ入ります。細胞説の歴史、単細胞生物と多細胞生物、細胞の大きさを一つずつ整理します。
まず結論
細胞は、生物の体をつくる構造の基本単位であり、生命活動が行われる機能の基本単位でもあります。
- 単細胞生物:一つの細胞が一個体として働く
- 多細胞生物:多数の細胞が分業して一個体をつくる

細胞は「構造」と「働き」の基本単位
細胞は、生物の体を細かく見ていったときに現れる基本的な構造です。細胞膜によって外側と区切られ、その内側でさまざまな化学反応が進みます。
細胞をレンガのような「体の材料」だけだと考えないことが大切です。物質を取り入れる、エネルギーを利用する、必要な物質をつくるといった代謝の場でもあります。このため、細胞は生物の構造と機能の基本単位と表現されます。
ただし、多細胞生物の細胞を一つ取り出せば、いつでも独立して生きられるという意味ではありません。多くの細胞は、ほかの細胞と物質や情報をやり取りし、支え合って働きます。
細胞説は、どのように形づくられた?
現在では「生物の体は細胞からできている」と学びますが、この考えは一人の研究者が一度に完成させたものではありません。顕微鏡の改良と観察の積み重ねによって、植物と動物に共通するつくりが明らかになりました。
| 人物 | 観察・提唱した内容 | 区別するポイント |
|---|---|---|
| ロバート・フック | 1665年、コルクの薄片に見えた小さな区画をcell(細胞)と名づけた。 | 観察したのは死んだ植物組織に残る細胞壁の区画で、核ではない。 |
| レーウェンフック | 17世紀後半、自作の顕微鏡で原生生物や細菌などの生きた微生物を観察した。 | フックが見たコルクの区画に対し、運動する微小な生物を観察した。 |
| ロバート・ブラウン | 1831年、植物細胞の中に核を発見した。 | 「細胞」という名称をつけた人物ではない。 |
| シュライデン | 1838年、植物の体は細胞からできていると提唱した。 | 植物について述べた。 |
| シュワン | 1839年、動物の体も細胞からできていると提唱し、植物と動物を共通の考えで捉えた。 | 動物について述べ、細胞説を広い生物に一般化した。 |
| フィルヒョー | 19世紀半ば、すべての細胞は、すでに存在する細胞から生じると唱えた。 | 細胞が自然に突然生じるのではなく、細胞分裂によって受け継がれることを示す考え。 |
フックが最初に細胞を見つけたなら、核や細胞質も全部見えていたの?
そこが重要な区別です。フックがコルクで見たのは、死んだ細胞の細胞壁が残した小部屋のような区画です。生きた細胞の中身や核を発見したわけではありません。
- すべての生物は、一つ以上の細胞からできている。
- 細胞は、生物の構造と機能の基本単位である。
- 新しい細胞は、すでに存在する細胞から生じる。
人物名と内容を一対一の暗記だけにしないことが大切です。「コルク」「生きた微生物」「核」「植物」「動物」「既存の細胞」という手がかりから判断できるようにしましょう。また、細胞をもたず、単独では増殖できないウイルスは、通常の細胞説が対象とする生物とは区別されます。
単細胞生物は、一つの細胞で生活する
単細胞生物は、一つの細胞からなる生物です。細菌、ゾウリムシ、酵母などが例です。
一つの細胞が、外界から物質を取り入れ、エネルギーを得て、成長し、増殖します。「細胞が一つだから何もできない」のではなく、一つの細胞の中に生きるための働きがまとまっています。
ただし、単細胞生物をすべて同じつくりだと考えてはいけません。細菌は原核生物、ゾウリムシや酵母は真核生物で、細胞内部のつくりが異なります。
多細胞生物では、細胞が分業する
ヒトや多くの植物は、多数の細胞からなる多細胞生物です。細胞は働きに応じた形をもち、互いに協力します。例えば神経細胞は情報を伝え、筋細胞は収縮し、赤血球は酸素の運搬に関わります。
同じような形や働きをもつ細胞が集まると組織になります。複数の組織がまとまって特定の働きをするものが器官です。器官どうしも連携して、一つの個体をつくります。
細胞 → 組織 → 器官 → 個体
植物でも、表皮組織などの組織が集まって葉や根などの器官をつくります。
細胞の大きさはどう表す?
多くの細胞は肉眼では見えないため、顕微鏡で観察します。細胞の大きさでは、マイクロメートル(µm)という単位がよく使われます。
1 mm=1,000 µm / 1 µm=1,000 nm

顕微鏡写真は印刷や画面表示で大きさが変わります。倍率だけでなく、一定の長さを示すスケールバーがあるかを確認すると、実際の大きさを判断しやすくなります。
写真上でスケールバーの2倍の長さがある細胞なら、実際の長さもスケールバーの値の2倍です。共通テストでは、写真の見た目ではなく比を使って計算する場面があります。
細胞や生物の大きさだけで、働きの複雑さを決めることはできません。 核の有無、細胞内の構造、遺伝情報、代謝など、比較の基準を確かめましょう。
確認問題
問1 フックがコルク片で観察したものと、その観察から行ったことを説明してください。
問2 シュライデン、シュワン、フィルヒョーの内容をそれぞれ説明してください。
問3 単細胞生物と多細胞生物の違いを、「個体」と「細胞」を使って説明してください。
問4 細胞、個体、器官、組織を、小さい階層から順に並べてください。
問5 ある細胞の直径が0.02 mmでした。何µmですか。
問6 10 µmを示すスケールバーが写真上で8 mm、細胞の長さが写真上で24 mmでした。細胞の実際の長さは何µmですか。
まとめ
- 細胞は、生物の構造と機能の基本単位である。
- フックの命名、レーウェンフックの生きた微生物の観察、ブラウンの核の発見を経て、細胞への理解が進んだ。
- シュライデンは植物、シュワンは動物が細胞からできると提唱し、フィルヒョーは細胞が既存の細胞から生じると唱えた。
- 単細胞生物では一つの細胞が一個体として働き、多細胞生物では多数の細胞が分業する。
- 多細胞生物は、細胞→組織→器官→個体という階層で捉えられる。
- 顕微鏡資料では、単位換算とスケールバーの比を使って実際の大きさを求める。
観察の積み重ねによって、植物も動物も細胞を基本としてできていることが分かりました。細胞の数や役割が違っても、この共通点は変わりません。
なるほど! 一つで個体になる細胞も、分業する細胞も、生命活動を担う基本単位なんだね。フックが細胞の中身を全部見たわけではないことも覚えたよ!
Plus|一つの細胞に、核は必ず一つ?
細胞の基本を学ぶと「一つの細胞には一つの核」と考えたくなりますが、例外もあります。ヒトの成熟した赤血球は核を失っており、骨格筋をつくる筋線維には多数の核があります。
基本原則を押さえたうえで例外を見ると、生物のつくりが働きに応じて変化していることが分かります。ただし、まずは「細胞は生物の構造と機能の基本単位」という本文の中心を確実にしましょう。


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