体液性免疫とは?B細胞と抗体が異物を排除する流れ

樹状細胞の抗原提示、ヘルパーT細胞、抗原に合うB細胞の増殖、形質細胞への分化、形質細胞による抗体の産生・分泌を順に示した図 生物基礎
図1 体液性免疫の流れ。抗原に合うB細胞が増殖して形質細胞へ分化し、形質細胞が抗体を産生・分泌する

体内へ入った異物に合う抗体は、最初から血液中に十分あるわけではありません。樹状細胞からヘルパーT細胞、B細胞へ情報がつながり、抗体がつくられる流れを順に追います。

ビオップ

なんでなんで?! 抗体はB細胞がつくると聞いたけれど、異物が入ったらB細胞がすぐに抗体を出すの? ヘルパーT細胞はどこで関わるのかな。

わや先生

抗体がつくられるまでには、抗原提示から抗体産生へ進む順序があります。「情報を示す細胞」「指令をつなぐ細胞」「抗体を分泌する細胞」を分けて整理しましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 体液性免疫で抗体がつくられるまでを順序立てて説明できる
  • 樹状細胞・ヘルパーT細胞・B細胞・形質細胞の役割を区別できる
  • 抗原と抗体の特異的な結合を説明できる
  • 抗体の働きを、食作用や細胞への攻撃と混同せずに説明できる
  • 実験結果から、抗体産生に必要な段階を考察できる
この記事の位置づけ|生物基礎

抗体がつくられる基本の流れと特異性を扱います。抗体の詳しい立体構造、種類の違い、遺伝子の組換え、細胞表面の受容体など、分子レベルのしくみには進みません。免疫記憶は次の記事への予告にとどめます。

まず結論|抗原提示から抗体産生へつながる

抗体ができるまでの一本道

体内に侵入した異物のうち、リンパ球によって異物として認識される物質を抗原といいます。樹状細胞は異物を取り込み、その一部を細胞表面に示してヘルパーT細胞へ伝えます。これを抗原提示といいます。抗原提示を受けたヘルパーT細胞の働きによって、抗原に合うB細胞が増殖し、形質細胞へ分化します。形質細胞は抗体を産生し、体液中へ分泌します。抗体を中心とするこの防御が体液性免疫です。

樹状細胞の抗原提示、ヘルパーT細胞、抗原に合うB細胞の増殖、形質細胞への分化、形質細胞による抗体の産生・分泌を順に示した図
図1 体液性免疫の流れ。抗原に合うB細胞が増殖して形質細胞へ分化し、形質細胞が抗体を産生・分泌する

体液性免疫とは

体液性免疫は、血液やリンパ液などの体液中へ分泌された抗体を中心として異物に対応する獲得免疫です。ここでいう「体液」は、血液だけを指す言葉ではありません。

抗体はタンパク質です。抗体そのものが食細胞のように異物を取り込むわけでも、キラーT細胞のように感染細胞を直接攻撃するわけでもありません。

抗体がつくられるまでの流れ

  1. 樹状細胞が異物を取り込む:自然免疫の食作用によって、侵入した異物を取り込みます。
  2. 抗原提示を行う:樹状細胞がリンパ節などへ移動し、取り込んだ異物の一部を抗原としてヘルパーT細胞へ示します。
  3. ヘルパーT細胞が働く:提示された抗原を認識したヘルパーT細胞が、同じ抗原に対応するB細胞の増殖と分化を促します。
  4. B細胞が増殖する:多数あるB細胞のうち、その抗原に対応するものが選ばれて増えます。
  5. 形質細胞へ分化する:B細胞の一部が形質細胞へ分化します。形質細胞は、その抗原に結合する抗体を大量に産生し、体液中へ分泌します。
B細胞と形質細胞を分ける

抗体を大量に分泌する段階では、B細胞は形質細胞へ分化しています。「B細胞が関わる」と「B細胞のまま大量の抗体を分泌する」を同じ意味にしないようにしましょう。

同じ「B細胞」でも、膵臓の細胞とは別物

免疫のB細胞と膵臓のB細胞を混同しない

この記事のB細胞は、免疫を担うリンパ球の一種です。一方、血糖濃度の調節で学んだ膵臓のランゲルハンス島のB細胞(β細胞)は、インスリンを分泌する内分泌細胞です。名前が同じでも、場所も働きも異なります。

抗原と抗体には特異性がある

ある抗体は、どの抗原にでも結合するわけではありません。抗原の形と抗体の結合部分の形が合うときに結合します。このように、特定の抗原とそれに対応する抗体が結合する反応を抗原抗体反応といいます。

図では鍵と鍵穴のように単純化して表すことがありますが、実際の分子は立体的です。生物基礎では、抗体には結合する相手の特異性があることを押さえれば十分です。

抗体Xが抗原Aには結合し、形が合わない抗原Bには結合しないことで、抗原と抗体の特異性を示す図
図2 抗原と抗体の特異性。抗体は、対応する特定の抗原に結合する

抗体が結合すると、異物を排除しやすくなる

抗体が抗原に結合すると、病原体や毒素が細胞へ作用しにくくなったり、複数の異物がまとまったり、食細胞が異物を取り込みやすくなったりします。これらの結果として、異物の排除が進みます。

したがって、「抗体が病原体を食べる」「抗体がどんな異物も直接破壊する」という説明は適切ではありません。特定の抗原へ結合し、ほかの防御の働きと協力すると捉えましょう。

抗体が抗原へ結合し、細胞への作用を妨げる、異物をまとめる、食細胞に取り込まれやすくする三つの結果を示す図
図3 抗体が結合したあとの主な結果。抗体はほかの防御と協力して異物の排除を助ける

資料問題では、どの段階を変えたかを追う

体液性免疫の実験では、樹状細胞、ヘルパーT細胞、B細胞、形質細胞のうち、どの段階が働かない条件なのかを確認します。そのうえで、抗体量や細胞数のどこに変化が現れたかを読みます。

抗体量が少ないという結果だけで、B細胞そのものが存在しないとは限りません。ヘルパーT細胞からの働きかけや、形質細胞への分化に問題がある場合も考えられます。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。各問題の直前にある資料だけで判断できます。

問1 抗体がつくられる順序を整理する

体液性免疫で起こる出来事A~Dを、最も適切な順に並べてください。

  1. B細胞が形質細胞へ分化する。
  2. 樹状細胞がヘルパーT細胞へ抗原提示する。
  3. 形質細胞が抗体を分泌する。
  4. ヘルパーT細胞の働きによって、抗原に合うB細胞が増殖する。
問1の解答・考え方

解答:B → D → A → C。抗原提示によってヘルパーT細胞へ情報がつながり、抗原に合うB細胞が増殖します。その一部が形質細胞へ分化し、形質細胞が抗体を産生・分泌します。

問2 抗原と抗体の特異性を読む

抗原A~Cに抗体X~Zを加え、結合が確認された場合を「+」、確認されなかった場合を「-」で示しました。

組合せ 抗体X 抗体Y 抗体Z
抗原A + - -
抗原B - - +
抗原C - + -
確認問題用のモデル実験。+は結合あり、-は結合なしを表す。

抗原Bと抗原Cにそれぞれ結合する抗体の組合せとして正しいものを選んでください。

  1. 抗原B―X、抗原C―Y
  2. 抗原B―Y、抗原C―Z
  3. 抗原B―Z、抗原C―Y
  4. 抗原B―Z、抗原C―X
問2の解答・考え方

正解:3。表の+を読むと、抗原Bには抗体Z、抗原Cには抗体Yが結合しています。一つの抗体がすべての抗原に結合するわけではありません。

問3 ヘルパーT細胞の働きを考える

同じ抗原を加えた細胞集団について、ヘルパーT細胞を含む条件Pと、ヘルパーT細胞だけを除いた条件Qを比べました。ほかの細胞数と培養条件は同じです。

条件 ヘルパーT細胞 形質細胞数(相対値) 抗体量(相対値)
P 含む 100 100
Q 含まない 14 11
確認問題用のモデル実験。相対値はPを100として比較した値である。

この結果から考えられることとして最も適切なものを選んでください。

  1. ヘルパーT細胞は、この条件でB細胞から形質細胞への分化と抗体産生を促す働きに関わる。
  2. ヘルパーT細胞自身が、測定された抗体をすべて分泌した。
  3. ヘルパーT細胞がなくても、形質細胞数と抗体量は変化しない。
  4. 抗体量が少ないため、QにはB細胞が一つも存在しなかったと断定できる。
問3の解答・考え方

正解:1。ヘルパーT細胞だけを除いたQで、形質細胞数と抗体量がともに低下しました。ただし、Qの抗体量は0ではなく、B細胞数を直接測ってもいないため、B細胞が存在しないとは断定できません。

問4 二つのB細胞を区別する

細胞Pと細胞Qについて、存在する場所と分泌する物質を調べました。

細胞 主に存在する場所 分泌する物質
P リンパ節など 分化後に抗体
Q 膵臓のランゲルハンス島 インスリン
確認問題用の比較資料。同じ「B細胞」という表記が使われる二つの細胞を区別する。

PとQの説明として最も適切なものを選んでください。

  1. PもQも、抗原提示を受けると形質細胞へ分化する。
  2. Pは免疫を担うリンパ球、Qは血糖濃度の調節に関わる内分泌細胞である。
  3. Pはインスリンを、Qは抗体を分泌する。
  4. PとQは、場所だけが異なる同一の細胞である。
問4の解答・考え方

正解:2。Pは免疫のB細胞で、形質細胞への分化を経て抗体産生に関わります。Qは膵臓のB細胞(β細胞)で、インスリンを分泌します。

問5 形質細胞への分化を止めた実験を考える

抗原に合うB細胞が増殖するところまでは正常ですが、形質細胞への分化だけが起こらない条件Rを考えます。通常の条件Sと比べた予想として最も適切なものを選んでください。

  1. RではB細胞が増えていても、Sより抗体量が少なくなると予想される。
  2. Rでは樹状細胞がすべて抗体を分泌すると予想される。
  3. Rでは抗原と無関係な抗体だけが必ず増えると予想される。
  4. Rでは皮膚や粘膜による侵入防止がただちに失われると予想される。
問5の解答・考え方

正解:1。抗体を大量に分泌するのは、B細胞から分化した形質細胞です。B細胞の増殖が正常でも、形質細胞への分化が進まなければ抗体量は少なくなると考えられます。

まとめ

  • 体液性免疫では、樹状細胞の抗原提示からヘルパーT細胞、B細胞へ情報がつながる。
  • 抗原に合うB細胞が増殖し、その一部が形質細胞へ分化する。
  • 形質細胞が抗体を産生し、体液中へ分泌する。
  • 抗体はタンパク質で、特定の抗原に結合する。
  • 抗原抗体反応によって、異物が作用しにくくなったり、排除されやすくなったりする。
  • 免疫のB細胞と、インスリンを分泌する膵臓のB細胞(β細胞)は別の細胞である。
  • 資料では、どの細胞・段階を変えたかと、抗体量の変化を対応させる。
わや先生

抗体がつくられるまでを、細胞の順序で言えますか。

ビオップ

樹状細胞が抗原提示し、ヘルパーT細胞が抗原に合うB細胞の増殖・分化を促す。そのB細胞が形質細胞になり、特定の抗原に結合する抗体を分泌するんだね!

Plus|次の記事への予告:免疫記憶

ここでは予告だけ

抗原に反応した細胞の一部は、同じ抗原が再び侵入したときの応答に備えて体内に残ります。この免疫記憶と、二回目の応答が速く強くなるしくみは、予防接種と合わせて別の記事で詳しく扱います。

参考資料

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