細胞は、核をもたない原核細胞と、核をもつ真核細胞に大きく分けられます。ただし、違いを「核の有無」だけで終えると、細菌と菌類、リボソームと細胞質などを取り違えやすくなります。
なんでなんで?! 大腸菌も酵母菌も「菌」ってつくよ。どっちも核をもたない細菌じゃないの?
名前の「菌」だけでは分類できません。大腸菌は原核生物の細菌、酵母菌は真核生物の菌類です。まず、細胞内が膜によってどのように区切られているかを比べましょう。
この記事でわかること
- 原核細胞と真核細胞を、核膜と細胞小器官から区別できる
- 両方に共通する構造を説明できる
- 細菌と菌類を、名前ではなく細胞のつくりから分類できる
- ミトコンドリアや葉緑体をもたない原核生物も、呼吸や光合成を行える理由がわかる
『細胞とは何か?生物の基本単位をつかむ』で細胞が生物の基本単位だと確認した後に、原核細胞と真核細胞を比べる記事です。まずは核膜と細胞小器官の有無を確実にし、呼吸・光合成の詳しい反応は後の代謝の記事へつなげます。
まず結論
原核細胞はDNAを包む核膜をもたず、膜で囲まれた細胞小器官ももちません。真核細胞はDNAを核膜で囲み、細胞内に複数の膜系の区画をもちます。
原核細胞を「中身がほとんどない細胞」と考えてはいけません。細胞膜、DNA、RNA、リボソーム、酵素など、生命活動に必要な基本の仕組みを備えています。

両方の細胞に共通する基本セット
| 共通するもの | 主な役割 |
|---|---|
| 細胞膜 | 細胞の内側と外側を隔て、物質の出入りに関わる |
| 細胞質 | 核以外の細胞内部。多くの化学反応が行われる場を含む |
| DNA | 遺伝情報を担う |
| RNA | 遺伝情報の発現などに働く |
| リボソーム | タンパク質を合成する |
| 酵素 | 代謝反応を促進する |
細胞質基質は細胞内を満たす液状の部分、リボソームはその中などにある小さな粒です。図でリボソームを示す矢印は、広い空間ではなく一つ一つの粒を指します。リボソームは膜に包まれた細胞小器官ではありません。
原核細胞のつくり
原核細胞では、DNAは核膜に包まれず、細胞質中の核様体と呼ばれる領域にあります。細菌の主な染色体は一般に環状のDNA分子です。このほか、染色体とは別に小型の環状DNAであるプラスミドをもつ細胞もあります。
原核細胞には、核・ミトコンドリア・葉緑体・小胞体・ゴルジ体のような、膜で囲まれた構造はありません。一方、細胞膜・細胞質・リボソームなどはあります。
原核生物には細菌と古細菌が含まれます。高校生物基礎で身近に扱う大腸菌、乳酸菌、納豆菌、シアノバクテリアは細菌です。
真核細胞のつくり
真核細胞では、DNAの大部分が核膜に包まれた核に収められています。さらに、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体など、膜で囲まれた細胞小器官があります。
膜で区切られた区画では、異なる反応を同時に効率よく進められます。動物、植物、菌類、原生生物は真核生物です。真核生物には単細胞の酵母やゾウリムシもいるため、「真核生物=多細胞生物」ではありません。
| 比較項目 | 原核細胞 | 真核細胞 |
|---|---|---|
| 核膜で囲まれた核 | ない | ある |
| DNAの主な位置 | 核様体 | 主に核内 |
| 膜で囲まれた細胞小器官 | ない | ある |
| リボソーム | ある | ある |
| 代表的な大きさ | およそ1〜10 µm | およそ10〜100 µm |
| 生物の例 | 細菌・古細菌 | 動物・植物・菌類・原生生物 |
細菌と菌類を混同しない
| 細菌 | 菌類 | |
|---|---|---|
| 細胞の型 | 原核細胞 | 真核細胞 |
| 核 | ない | ある |
| ミトコンドリア | ない | ある |
| 細胞壁 | 主成分はペプチドグリカン | 主成分はキチン |
| 例 | 大腸菌、乳酸菌、納豆菌、シアノバクテリア | 酵母、カビ、キノコ |
細胞壁があることだけでは、原核細胞か真核細胞かを決められません。細菌にも、植物や菌類の真核細胞にも細胞壁があるためです。ただし、細胞壁の主成分は同じではありません。動物細胞には細胞壁がありません。
なんでなんで?! 細菌にはミトコンドリアがないなら、呼吸できないよね? シアノバクテリアは葉緑体がないのに、どうやって光合成するの?
反応ができないのではなく、反応の場所が違います。原核生物では、呼吸に関わる電子伝達系は細胞膜にあり、シアノバクテリアの光合成に関わる膜系は細胞内に発達しています。
細胞小器官がなくても代謝はできる
「呼吸はミトコンドリアで行われる」「光合成は葉緑体で行われる」は真核細胞についての説明です。原核生物はミトコンドリアや葉緑体をもちませんが、細胞質や細胞膜などに酵素や電子伝達系を配置し、呼吸・発酵・光合成など多様な代謝を行います。
ここでは、細胞小器官がなくても細胞膜などを反応の場にできることを押さえましょう。呼吸とATPの関係は「呼吸とは?」で整理します。
- 核膜で囲まれた核があるか
- 膜で囲まれた細胞小器官があるか
- 細胞膜・DNA・リボソームなど、全細胞に共通するものを確認する
- 代謝の有無と、真核細胞での反応場所を混同しない
確認問題
問1 原核細胞と真核細胞の両方にあるものを、核・DNA・ミトコンドリア・リボソームからすべて選んでください。
問2 原核細胞のDNAは細胞内のどこにありますか。
問3 酵母菌と大腸菌は、どちらも原核生物ですか。
問4 細胞壁をもつ細胞は原核細胞である、という判断が正しくない理由を説明してください。
問5 ある細胞には細胞膜、DNA、リボソームがある一方、核とミトコンドリアがありません。この細胞はどちらの型と考えられますか。
問6 ミトコンドリアをもたない細菌が呼吸できる理由を答えてください。
まとめ
- 原核細胞には核膜で囲まれた核と、膜で囲まれた細胞小器官がない。
- 真核細胞には核があり、ミトコンドリア・小胞体・ゴルジ体などがある。
- どちらにも細胞膜・細胞質・DNA・RNA・リボソーム・酵素がある。
- 細菌は原核生物、酵母・カビ・キノコなどの菌類は真核生物である。
- 原核生物も、細胞膜や細胞質などを反応の場として呼吸や光合成を行える。
大腸菌と酵母菌は、どこを見れば区別できましたか。
「菌」という名前じゃなくて、核膜で囲まれた核と膜小器官を見る! 大腸菌は原核生物、酵母菌は真核生物。リボソームは両方にあるんだね!
Plus|小さな細胞の中にも大きな代謝の多様性
細菌は形が単純に見えても、代謝は非常に多様です。酸素を使う呼吸、酸素を使わない呼吸、発酵、光合成、無機物の酸化で得たエネルギーを利用する化学合成など、さまざまな方法で生活します。
細胞の構造が単純であることと、代謝の種類が少ないことは同じではありません。環境中の物質循環を支えるうえでも、原核生物は重要な役割を担います。


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