生物はなぜこんなに違うのに、共通点がある?|共通性と多様性

ヒト、植物、細菌の違いと、細胞・DNA・エネルギー利用という共通点を示す図 生物基礎
外見や暮らし方が違っても、生命活動の基本には共通点があります。

ヒト、植物、細菌は、姿も暮らし方も大きく違います。それでも、細胞の中ではDNAの情報を使い、リボソームでタンパク質をつくり、ATPを利用しています。共通する仕組みと異なる特徴を、進化の一本の歴史として結びましょう。

ビオップ

なんでなんで?! ヒトと植物と細菌なんて全然似ていないよ。本当に同じ仲間なの?

わや先生

見た目ではなく、細胞の仕組みと遺伝情報を比べると、共通の歴史が見えてきます。共通性は「受け継いだ部分」、多様性は「枝分かれ後に変化した部分」です。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 生物の共通性を示す証拠を説明できる
  • 共通祖先・進化・多様性を一本の流れで説明できる
  • 系統樹の分岐点と枝の意味を正しく読める
  • DNAの塩基配列の違いを、系統関係を考える証拠として利用できる
この記事の位置づけ

『生物に共通する特徴とは?』で生物の共通性を確認した後に読む記事です。中心は、共通祖先から仕組みを受け継ぎ、枝分かれ後の変化によって多様性が生じる流れです。系統樹と塩基配列は、共通テストの資料を読むための入口として少し先取りします。

まず結論

共通性と多様性をつなぐ式

共通祖先から受け継いだ仕組み + 枝分かれ後に蓄積した変化 = 現在の生物の共通性と多様性

生物が共通性をもつのは、現在の生物どうしがたまたま同じ仕組みを別々に手に入れたからではなく、共通祖先がもっていた基本的な仕組みを受け継いできたためだと考えられています。

違って見える生物に共通するもの

ヒト、植物、細菌の違いと、細胞膜、DNA、RNA、リボソーム、ATPなどの共通点を示す図
図1 見た目や生活様式が違っても、生命活動の基本には共通点がある
比べる特徴 ヒト 植物 細菌
細胞膜をもつ ○ ○ ○
DNAとRNAを利用する ○ ○ ○
リボソームでタンパク質を合成する ○ ○ ○
ATPを利用する ○ ○ ○
核をもつ ○ ○ ×
光合成を行う × 細胞による 種類による
すべて共通する特徴と、一部だけに見られる特徴を分けて読む

共通性とは、単に形が似ていることではありません。DNAからRNAを経てタンパク質がつくられること、ほぼ共通した対応規則で遺伝情報が読み取られること、ATPがエネルギーの受け渡しに使われることなど、生命活動の基本的な仕組みが広く共通することです。

「全生物に共通」とは限らない特徴

核・ミトコンドリア・葉緑体は、すべての生物に共通する構造ではありません。また、すべての植物細胞が光合成するわけではなく、細菌にも光合成を行う種類があります。代表例の丸暗記ではなく、どの範囲に当てはまる記述かを確かめます。

共通性は共通祖先から受け継がれた

ある複数の系統のもとになった祖先を共通祖先といいます。生物は遺伝によって親から子へDNAを伝えるため、祖先がもっていた仕組みは、変化を伴いながら子孫へ受け継がれます。

現在のすべての生物が、細胞膜・DNA・RNA・リボソーム・酵素・ATP利用などを共有することは、非常に古い共通祖先から基本的な仕組みを受け継いだという考えを支える証拠になります。別々の証拠が同じ歴史を示すことが重要です。

  • 細胞の証拠:細胞膜で外界と隔てられ、リボソームでタンパク質をつくる
  • 分子の証拠:DNAやRNAの塩基配列、タンパク質のアミノ酸配列に対応関係がある
  • 代謝の証拠:酵素を用いて反応を進め、ATPを利用する
ビオップ

じゃあ、今いる細菌がだんだん変わって、そのままヒトになったの?

わや先生

そこは注意です。現在の細菌がヒトの直接の祖先なのではありません。非常に古い共通祖先から別々の系統へ枝分かれし、細菌の系統もヒトにつながる系統も、それぞれ現在まで進化してきました。

枝分かれと変化が多様性を生む

生物の集団内には、DNAの複製時に起こる突然変異などによって、個体間に遺伝的な違い(変異)が生じます。集団が分かれて別々に世代を重ねると、それぞれの集団で受け継がれる変異の種類や割合が変化し、集団間の違いがしだいに蓄積します。このような、世代を通した生物集団の遺伝的な変化を進化といいます。

共通祖先から受け継いだ部分が共通性として残り、枝分かれ後に変化した部分が多様性として表れます。したがって、共通性と多様性は反対の概念ではなく、同じ進化の歴史の二つの側面です。

共通祖先から仕組みを受け継ぎ、系統が枝分かれして多様化する流れを示す図
図2 共通の仕組みを受け継ぎながら、枝分かれ後に違いが蓄積する

系統樹は「進化の道筋」を表す

生物の系統関係を枝分かれの図で表したものが系統樹です。読み方には三つの原則があります。

  1. 分岐点は、そこから分かれる系統の共通祖先を表す。
  2. より新しい分岐点を共有する二つの群ほど、互いに近い系統関係にある。
  3. 枝を分岐点のまわりで回転させても、枝分かれの順序が同じなら系統関係は変わらない。
系統樹を「進歩の階段」にしない

枝の先にいる生物は、すべて現在まで進化を続けてきた系統です。図の右側・上側にある生物が「高等」、分岐点に近い生物が「未進化」という意味ではありません。また、横方向の枝の長さは、目盛りなどの説明がない限り時間や変化量を表すとは限りません。

塩基配列から系統関係を推定する

対応するDNA領域の塩基配列や、タンパク質のアミノ酸配列を比べると、共通祖先から分岐した後に蓄積した変化を調べられます。一般に、同じ長さの対応領域で違いが少ない組合せほど、より新しい共通祖先を共有する可能性が高いと考えます。

生物A 生物B 生物C
生物A - 2 9
生物B 2 - 8
生物C 9 8 -
ある対応領域100塩基に見られた塩基の違いの数(仮想データ)

このデータだけなら、AとBの違いが最も少ないため、AとBが先にまとまり、その共通祖先とCにつながる系統樹が最も素直です。ただし、実際の研究では多くの遺伝子や化石・形態なども合わせ、変化速度の違いや偶然の一致も考慮します。

ここでは読み方の入口まで

ここでは、塩基配列の違いが系統関係を考える手掛かりになることを押さえましょう。DNAの構造と塩基の組合せは「DNAの二重らせん」で確認できます。

確認問題

問1 生物の共通性を示すものを、核・DNA・リボソーム・葉緑体・ATPからすべて選んでください。
解答:DNA、リボソーム、ATP。核と葉緑体は、すべての生物に共通する構造ではありません。
問2 生物が共通性をもちながら多様である理由を、「共通祖先」と「枝分かれ」を使って説明してください。
解答例:共通祖先から生命活動の基本的な仕組みを受け継いだため共通性があり、枝分かれした各系統に異なる変化が蓄積したため多様性があります。
問3 「現在の細菌は、ヒトへ進化する途中の生物である」という説明は正しいですか。
解答:正しくありません。細菌の系統とヒトにつながる系統は共通祖先から枝分かれし、どちらも現在まで独自に進化してきました。
問4 系統樹の分岐点は何を表しますか。
解答:その分岐点から分かれる系統の共通祖先を表します。
問5 上の仮想データから、最も近い系統関係にあると推定される組合せを答えてください。
解答:生物Aと生物B。対応する100塩基のうち異なる塩基が2個で、三つの組合せの中で最も少ないためです。
問6 塩基配列の違いが少ないという情報だけで、系統関係を必ず断定できますか。
解答:断定はできません。比較する領域や変化速度などの影響があるため、多数の分子データや形態・化石などの証拠も合わせて判断します。

まとめ

この記事のまとめ

  • 生物には、細胞膜・DNA・RNA・リボソーム・ATP利用などの共通性がある。
  • 共通性は、共通祖先から基本的な仕組みを受け継いだことに由来する。
  • 多様性は、枝分かれ後の各系統に異なる変化が蓄積した結果である。
  • 系統樹の分岐点は共通祖先を表し、図の左右や上下は高等・下等を表さない。
  • 塩基配列など複数の証拠を用いて、系統関係を推定する。
わや先生

最初は似ていないように見えましたが、ヒト・植物・細菌をつなぐものは何でしたか。

ビオップ

見た目じゃなくて、DNAやリボソーム、ATPを使う共通の仕組み! それを共通祖先から受け継いで、枝分かれした後に違いが増えたから、似ていないのに同じ生物なんだね!

Plus|「最初の生物」とLUCAは同じではない

教科書から一歩先へ

現存するすべての生物の系統をさかのぼったときの最も新しい共通祖先は、LUCA(Last Universal Common Ancestor)と呼ばれます。LUCAは「地球で最初に誕生した生命」とは限りません。LUCAより前にも複数の生命系統が存在し、そのうち一つの系統だけが現生生物へつながった可能性があるためです。

また、LUCAを現在の細菌と同じ生物だと考えることもできません。現生の細菌も、LUCAから長い時間をかけて進化した子孫です。LUCAの段階ですでに遺伝子と酵素を用いる情報・代謝系があったと推定されます。

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