草地だった場所に木が育ち、長い時間をかけて森林になることがあります。その間に、植物が育つ条件はどう変わるのでしょうか。一次遷移と二次遷移、土壌や光の変化、極相の意味を、一続きの流れとして整理します。
なんでなんで?! 誰も木を植えていないのに、草地が森に変わることがあるの?
植物が育つ条件と、そこに生える植物の両方を、時間を追って見てみましょう。
この記事でわかること
- 裸地・荒原・草原・陽樹林・混交林・陰樹林の特徴と植物例
- 土壌の発達、種子・胞子の届き方、林床の光が遷移に関わるしくみ
- 一次遷移と二次遷移の違い、極相とギャップによる森林の更新
森林の階層構造と、陽樹・陰樹の性質をつなぐ記事です。植物名の順番だけでなく、次の植物が育ちやすくなる理由を考えます。
まず結論|植生と環境が影響し合って変わる
ある場所の植生が時間とともに変わっていくことを遷移といいます。植物は土壌や光などに影響される一方、育つことで周囲の条件も変えます。この両方向の関係が、植生の移り変わりを考える手掛かりです。

一次遷移は、土壌がほとんどない所から
一次遷移は、新しい溶岩の上など、土壌がほとんど形成されていない場所から始まる遷移です。初めは水分や養分を得にくく、根を張れる場所も限られます。そこへ周囲から種子や胞子などが運ばれ、厳しい条件に耐えられる生物が定着します。
遷移の初めに侵入・定着する種を先駆種(パイオニア種)と呼びます。地衣類やコケ植物などが例として挙げられますが、必ずそれらだけが最初に現れるわけではありません。地面の状態や周囲の植物によって、草本や木本が早い段階で定着する場合もあります。
岩石が細かくなることに加え、生物の遺体などに由来する有機物が蓄積・分解されることが、土壌の形成に関わります。土壌が発達すると水分や養分を保持しやすくなり、根を張れる場所も増えます。その結果、別の植物が育ちやすい条件が生まれます。
裸地から陰樹林まで、六つの段階を追う
ここでは、日本の暖温帯で森林が成立する場所を例に、乾いた裸地から始まる一次遷移を説明します。こうした乾燥した地面から始まる遷移を乾性遷移と呼びます。大きな流れは裸地→荒原→草原→陽樹林→混交林→陰樹林です。
① 裸地|根を張る土壌がほとんどない
新しい溶岩の表面などでは、岩石や礫が露出し、植物はほとんど生えていません。水がたまりにくく、植物が利用できる養分や、根を広げる隙間も限られます。以前の植物の種子や地下茎が土の中に残っている場所とは、出発条件が違います。
最初の生物が定着するには、周囲から胞子や種子などが届く必要があります。ただ届けば育つわけではなく、乾燥や養分の乏しさに耐えられることも必要です。風化による岩石の細粒化や、風で運ばれる細かな粒子の蓄積も、地面の変化に関わります。
② 荒原|地衣類やコケ植物などがまばらに定着する
教科書の模式的な流れでは、地衣類やコケ植物などが岩の表面や隙間に定着した段階を扱います。植物などによる地表の覆いはまだ少なく、岩石が広く見えています。これが、この遷移の例での荒原です。地衣類は菌類と藻類などが共生したもので、コケ植物とは別の仲間です。
定着した生物の遺体などに由来する有機物が、岩石の細かな粒子とともに蓄積し、土壌が少しずつ形成されます。地面が水分を保ちやすくなり、草本が根を伸ばせる場所も増えていきます。コケ植物は種子ではなく胞子で増えるので、「すべて種子が飛んできた」とは説明しません。
③ 草原|草本が増え、土壌がさらに発達する
土壌ができてくると、ススキやイタドリなどの草本が育ち、地表を広く覆うようになります。枯れた葉や茎、根などが有機物を供給し、その分解も進みます。根が地面を保持する働きも加わり、土壌は一般に厚くなり、水分や養分を保持しやすくなります。
土壌が発達すると木本も定着しやすくなり、ヌルデやヤシャブシなどの低木・小高木が育つ段階を経て、高木の多い林へ進むことがあります。したがって、草原が突然、完成した陽樹林へ変わるわけではありません。詳しい模式図では、この間に低木林を一段階として入れます。
④ 陽樹林|明るい場所で育つ木が林冠をつくる
明るい場所でよく育つアカマツやコナラなどの陽樹が成長すると、陽樹が多い森林である陽樹林になります。アカマツは種子に翼があり、風によって運ばれます。草地や林の空いた場所に種子が届き、その場所の条件が合えば若木が育ちます。
高木の枝葉が広がって林冠を覆うと、林床へ届く光は少なくなります。成長した陽樹は林冠で光を受けられますが、その下に芽生えた陽樹の若木は光不足で育ちにくくなります。一方、弱い光にも耐えられる陰樹の若木は、林床で育つことができます。
⑤ 混交林|陽樹が残る間に陰樹が成長する
陽樹林の下で育っていたスダジイやアラカシなどの陰樹が大きくなると、陽樹と陰樹がともに見られる混交林になります。ここでいう混交林は「陽樹と陰樹が混じる林」の意味です。針葉樹と広葉樹の違いとは別の分け方で、両者が同じ割合である必要もありません。
陽樹がすぐにすべて枯れるのではなく、林冠に古い陽樹が残る一方、下層では陰樹の若木が増えていきます。木の寿命や倒木などによる入れ替わりの中で、次の世代になれる陰樹の割合が高まります。
⑥ 陰樹林|林床で次の世代が育ち、構成が安定する
陰樹が優占するようになった森林が陰樹林です。この暖温帯の例では、スダジイ・アラカシなどの常緑広葉樹の森林になります。暗い林床でも同じような樹種の若木が育つため、大木が枯れても次の世代に置き換わり、森林全体の構成は比較的安定します。これが極相を考える手掛かりです。
陰樹も光を必要とし、大きくなって林冠に達すれば強い光を受けます。「陰樹は日なたでは育たない」「陰樹林には陰樹しかいない」という意味ではありません。寒冷な地域では針葉樹の森林が成立するなど、最終的な森林の姿は気候によっても異なります。
種子の特徴|「届くこと」と「育つこと」を分けて考える
遷移の初期には、遠くから運ばれやすい胞子や種子が、新しくできた場所へ入る手掛かりになります。小さく軽い種子や、翼・毛などをもつ種子・果実には、風で運ばれやすいものがあります。例えばアカマツの翼のある種子や、ススキの毛を伴う果実です。数多く散布されれば定着の機会は増えますが、すべてが発芽・成長できるわけではありません。
一方、シイ・カシ類などのどんぐりには、発芽後の初期成長に使う養分が蓄えられています。風で遠くへ飛ぶタイプではなく、落下した後にネズミや鳥などに運ばれ、食べ残されたものが発芽することもあります。種子の大きさや運ばれ方と、若木が必要とする光を合わせて考えると、森林への定着を説明しやすくなります。
「陽樹は必ず小さな種子、陰樹は必ず大きな種子」という区別ではありません。陽樹の例に挙げたコナラもどんぐりをつくります。陽樹・陰樹は光に対する性質から分け、種子の運ばれ方は別の特徴として整理しましょう。
二次遷移は、土壌などが残る所から

二次遷移は、森林の伐採跡や耕作をやめた畑など、以前の植生が失われても土壌などが残る場所から始まります。残った種子や根から植物が育つこともあり、土壌形成から始まる一次遷移より、一般に植生の回復が速く進みます。
土壌中に残っている種子を埋土種子といいます。光や温度などの条件が変わると発芽するものがあります。また、残った地下茎や切り株などから新しい芽が伸びる場合もあります。外から運ばれる種子だけでなく、その場所に残ったものからも再生できる点が重要です。裸地から始まる一次遷移の六段階を、必ず最初から繰り返すわけではありません。
「一次は自然、二次は人間が起こす」という区別ではありません。自然の火災でも土壌が残れば二次遷移が起こり得ます。災害の規模によっては土壌まで失われるので、原因の名前だけでなく、出発点に何が残っているかを確認します。
環境形成作用|植物は環境を変える側でもある
生物の働きによって周囲の環境が変えられることを環境形成作用といいます。枝葉が光を遮る、落ち葉などが土壌の有機物のもとになる、根が土壌を保持する、といった例があります。
「光が弱いため、ある植物が育ちにくい」は環境が生物に与える影響です。「木が成長して林床を暗くする」は生物が環境に与える影響で、環境形成作用に当たります。二つの向きを区別しましょう。
植物が「次の植物のために土をつくろう」としているわけではありません。成長や落葉などの結果として環境が変わり、その条件に合う植物が育つようになります。
陽樹林から陰樹の多い森林へ変わる理由

図3では、④陽樹林から⑥陰樹林への変化を、次の世代になる若木に注目して見直します。陽樹の枝葉が林床を暗くするため、陽樹自身の若木は育ちにくくなります。その条件でも育つ陰樹の若木が、世代交代を通じて増えていきます。
大きな陽樹が林冠に残っていることと、林床に陰樹の若木が多いことは矛盾しません。現在の姿を見るには大きな木を、今後の変化を考えるには若木の種類や数も見る必要があります。
極相は「何も変わらない森林」ではない
遷移が進み、植生の構成が比較的安定した状態を極相といいます。森林なら、木が枯れて若木に置き換わりながら、全体として似た構成が保たれる状態です。個体の成長や死亡が止まるわけではありません。
極相を「どこでも陰樹林になること」と捉えるのも誤りです。極めて乾燥する場所や寒冷な場所では、高い木が密に育つ森林は成立しにくくなります。気候や土壌などに応じて、植生の姿は異なります。
ギャップ|極相でも森林は更新される
林冠をつくる木が枯れたり倒れたりして、林冠の一部にできた隙間をギャップといいます。枝葉に遮られていた光が林床へ届きやすくなり、その下の光環境が変わります。
光が増えると、林床で育っていた若木の成長が促されます。新しく芽生えた植物が育つこともあります。やがて木々が成長して隙間を埋め、再び林冠がつくられます。このように、木が枯れた場所で次の世代の木が育つことを森林の更新といいます。
小さなギャップでは周囲の木に遮られる光も多く、もともと林床にあった陰樹の若木などが育ちます。一方、大きなギャップで十分な光が届けば、陽樹が育つ機会も生まれます。実際に育つ種類には、隙間の大きさだけでなく、残っている若木や運ばれてくる種子なども関わります。
森林全体の構成が比較的安定していても、小さな範囲ではギャップができ、若木が育つ変化が続いています。木の枯死→林床の光が増える→若木の成長→林冠の回復をつなげると、極相と世代交代が矛盾しないことが分かります。
火災・洪水・伐採などで植生が大きく変わることを攪乱(かくらん)といいます。攪乱が繰り返されれば、遷移の途中のような姿が維持されることもあります。草原だから必ず「まだ森になる途中」とは判断できません。
確認問題
当サイト独自の問題です。資料の数値は学習用です。選択式は最も適切なものを一つ選んでください。
問1 遷移の出発点を比べる
| 場所 | 地面の状態 |
|---|---|
| A:新しい溶岩地 | 土壌はほとんどなく、種子や根も残っていない |
| B:伐採跡地 | 土壌が残り、中に種子や根が見つかる |
A・Bの遷移の種類と、一般に回復が速い方を答えてください。
問1の解答・考え方
正解:Aは一次遷移、Bは二次遷移。一般にBの方が速い。Bでは土壌や種子・根などが残り、植物が育つ出発条件が整っているためです。経過年数だけで分類するのではありません。
問2 環境形成作用を選ぶ
環境形成作用の例はどれですか。
- 低温のため、植物の成長が遅くなった。
- 木の枝葉が増え、林床に届く光が少なくなった。
- 乾燥が続き、植物が枯れた。
- 日照不足で、陽樹の若木が育たなかった。
問2の解答・考え方
正解:2。生物の枝葉が増えることで、光という環境条件が変わっています。ほかは環境条件が植物に与える影響です。
問3 現在と将来の森林を分ける
| 樹種の性質 | 大きな木 | 若木 |
|---|---|---|
| 陽樹 | 30 | 2 |
| 陰樹 | 5 | 40 |
大きな攪乱がなく、今の光環境が続くと仮定します。今後、陰樹の割合が増える可能性を示す根拠を説明してください。
問3の解答・考え方
解答例:現在の大きな木は陽樹が多いが、次の世代になる若木には陰樹が多いから。大きな木だけでは今後の変化を見落とします。この資料だけで変化の速さや必ずそうなることまでは断定できません。
問4 ギャップと若木の成長
極相に達した森林で、大木が倒れた場所では、倒れる前からあった若木の成長が速くなりました。林冠が閉じた周囲では、若木の成長に大きな変化はありません。水分や養分の条件に大きな変化はなかったとします。①成長の違いを光環境から説明してください。②この変化は、極相という説明と矛盾しますか。
問4の解答・考え方
解答例:①大木が倒れてギャップができ、若木に届く光が増えたため、光合成でつくられる有機物が増え、成長が促されたと考えられる。②矛盾しない。極相でも木の枯死と若木の成長による更新は続きます。個体の入れ替わりと、森林全体の構成が比較的安定していることを区別します。
問5 草原の維持を考える
同じ気候の隣接した二つの草地で、一方は毎年刈り取りを続け、他方はやめました。後者だけで低木が増えました。この結果から考えられることはどれですか。
- 草地がある場所は、必ず乾燥気候である。
- 刈り取りをやめると、どこでも直ちに極相になる。
- 刈り取りが木本の増加を抑えていた可能性がある。
- 土壌が残っているので、どちらでも遷移は起こらない。
問5の解答・考え方
正解:3。刈り取りで木本の成長が抑えられ、草地の姿が維持されていた可能性があります。人の管理も植生を考える条件に含まれます。
問6 種子が届けば、森林になる?
| 調査区 | 届いた種子の数 | 発芽後1年まで生き残った個体数 |
|---|---|---|
| A:土壌が薄く、乾燥しやすい | 100 | 4 |
| B:土壌が厚く、水分を保ちやすい | 100 | 28 |
光などの条件はほぼ同じでした。「種子が多く届きさえすれば、多くの植物が育つ」とは言い切れない理由を、この結果から説明してください。
問6の解答・考え方
解答例:同じ数の種子が届いても、生き残った個体数は異なるため、種子の到達だけでなく、土壌や水分などの定着条件も関わると考えられるから。ただし、この資料だけで土壌の厚さと水分のどちらがどの程度影響したかまでは区別できません。
まとめ
- 暖温帯の模式例は、裸地→荒原→草原→陽樹林→混交林→陰樹林。草原から陽樹林への間には低木林も見られる。
- 初期には土壌の形成・発達が、森林では林床の光の変化が、育つ植物の入れ替わりに関わる。
- 種子や胞子が届くことと、そこで発芽・成長できることは別。陽樹・陰樹を種子の大きさだけで決めない。
- 二次遷移では土壌や埋土種子、地下茎などが残ることが、回復の速さに関わる。
- 極相でもギャップの形成や若木の成長によって森林は更新される。気候や攪乱によって遷移の経路は異なる。
誰も植えなくても植生が変わる理由を、環境との関係から説明してみましょう。
植物が育つと土や明るさも変わって、その条件で育つ植物が入れ替わるんだね。草地が必ず同じ森になるわけじゃないことも分かった!
Plus|火山の噴火でも、出発点は一様ではない
噴火後も、溶岩に覆われた場所、薄い火山灰が積もった場所、地中に種子や根が残った場所では回復の条件が違います。北海道大学の火山遷移研究では、一次・二次の二つに単純に分けにくい中間的な条件も扱われています。「噴火後だから全部同じ」と考えず、残されたものを調べることが重要なのです。
参考資料
本文の用語・説明を確認するために参照した資料です。図解と確認問題は当サイトで作成しています。
- 文部科学省「高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編」:生物基礎「植生と遷移」の学習範囲。
- 北海道大学 露崎研究室「遷移」:一次遷移・二次遷移と極相。
- 北海道大学 露崎研究室「火山遷移初期動態」:火山遷移の多様な出発条件。
- 森林総合研究所 関西支所「研究情報 No.28」:森林土壌と人為的な影響。
- 福岡県「種子散布の多様性」:風や動物による種子の運ばれ方。


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