転写とは?DNAからmRNAへ情報を写すしくみ

核内でDNAの一方の鎖を鋳型としてmRNAが合成される転写の流れを示す図 生物基礎
核内ではDNAの必要な領域が開き、一方の鎖を鋳型としてmRNAが合成される

真核細胞では、DNAは核内にあります。一方、タンパク質合成の場となるリボソームは核外の細胞質にあります。離れた二つの場所の間で、遺伝情報はどのように受け渡されるのでしょうか。

ビオップ

なんでなんで?! DNAを核の外へ持ち出さないなら、細胞質のリボソームはどうやって遺伝情報を受け取るの?

わや先生

必要な遺伝子の情報を、核内でmRNAへ写します。DNAそのものではなく、情報を写したmRNAが核外へ移動します。この写し取りが転写です。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 転写と鋳型の意味を説明できる
  • DNAとRNAの塩基・糖・鎖の違いを説明できる
  • 鋳型DNAからmRNAの塩基配列を求められる
  • すべてのDNAが一度に転写されるわけではないと説明できる
この記事の位置づけ

『遺伝情報はどうタンパク質になる?転写と翻訳の全体像』で見た二段階のうち、DNAからmRNAへ情報を写す転写を詳しく扱います。mRNAをアミノ酸配列へ読み替える翻訳は、次の記事で扱います。

転写はDNAの情報をRNAへ写す過程

転写とは、DNAの塩基配列をもとに、相補的な塩基配列をもつRNAを合成する過程です。タンパク質合成に使われる情報を運ぶRNAをmRNAといいます。

mRNAは伝令RNA、またはメッセンジャーRNAとも呼ばれます。真核細胞では、転写は核内で行われます。転写を終えたmRNAはDNAから離れ、必要な加工を受けて核外へ移動します。

DNA全体を写すわけではない

転写されるのは、その細胞がそのとき利用する遺伝子の領域です。DNA上の全領域や、すべての遺伝子が、どの細胞でも常に転写されているわけではありません。

核内でDNAの一方の鎖を鋳型としてmRNAが合成される転写の流れを示す図
図1 核内ではDNAの必要な領域が開き、一方の鎖を鋳型としてmRNAが合成される

DNAの一方の鎖が鋳型になる

DNAは2本鎖ですが、一つの遺伝子を転写するとき、RNAの合成に直接使われるのは一方の鎖です。新しい分子をつくるときに配列の基準となるものを鋳型といい、転写の基準となるDNA鎖を鋳型鎖といいます。

転写では、鋳型となるDNA鎖の塩基に対して、相補的なRNAのヌクレオチドが並び、それらがつながってRNAが合成されます。生物基礎では、まずどのDNA鎖が鋳型かと、どの塩基同士が対応するかを押さえましょう。

「DNAに対応するRNA」だけでは不十分

DNAには2本の鎖があるため、配列問題ではどちらが鋳型鎖かを最初に確認します。鎖を取り違えると、相補性を正しく使っても別の配列になります。

RNAではチミンの代わりにウラシルを使う

比較項目 DNA RNA
糖 デオキシリボース リボース
塩基 A・T・G・C A・U・G・C
基本的な鎖 2本鎖 1本鎖
RNAはリボースをもち、チミン(T)ではなくウラシル(U)を使う

RNAの塩基のうち、DNAとの違いを見分ける目印がウラシル(U)です。ウラシルはアデニン(A)と相補的に結合します。DNAではAの相手をTが務めますが、RNAではUがその役割を担います。

鋳型DNAとRNAの対応

  • 鋳型DNAのAには、RNAのU
  • 鋳型DNAのTには、RNAのA
  • 鋳型DNAのGには、RNAのC
  • 鋳型DNAのCには、RNAのG

四つを別々に暗記するより、「RNAではTを使わず、Aの相手はU」と相補性から考えます。

鋳型DNAの塩基配列から相補的なmRNA配列を求める例を示す図
図2 鋳型DNAのTAC GGAに対し、相補的なmRNAのAUG CCUがつくられる

鋳型DNAからmRNA配列を求める

例として、鋳型DNAの塩基配列が次のように示されているとします。

配列変換の例

鋳型DNA:TAC GGA
mRNA:AUG CCU

  1. 鋳型DNAを確認する:DNAのどちらの鎖を基準にするかを、問題文から確認する。
  2. 相補的な塩基を置く:TにはA、AにはU、CにはG、GにはCを対応させる。
  3. RNAではUを使う:DNAのAに対応するRNAの塩基を、TではなくUとする。
鋳型DNAからmRNAの塩基配列を求めるときの確認手順を示す図
図3 配列問題では、鋳型DNA・相補性・Uの使用を順番に確認する

DNAの2本の鎖が示された場合

DNAの2本の鎖が示されているときは、問題文に「鋳型」「転写に使われる鎖」などの説明がないか確認します。mRNAの配列は、鋳型となるDNA鎖との相補性を使って考えるのが基本です。

ビオップ

DNAには遺伝子がたくさんあるなら、毎回ぜんぶを長いmRNAに写せば早くない?

わや先生

必要な遺伝子やRNAの種類は、細胞の種類や状態によって異なります。必要な領域を選んで転写することが、細胞の働き分けにつながります。

転写でつくられるRNAはmRNAだけではない

遺伝情報をタンパク質合成へ運ぶmRNAのほか、アミノ酸を運ぶtRNA、リボソームの構成に関わるrRNAなども、DNAの情報をもとに転写されます。

「転写されたRNAはすべて翻訳される」という説明は正しくありません。翻訳されてタンパク質のアミノ酸配列を指定するのはmRNAです。tRNAやrRNAは、RNAとして働きます。

共通テストでは三つを最初に確認

  1. 分子と鋳型:示されているのはDNAかRNAか。DNAなら、どちらが鋳型か
  2. 相補性:鋳型DNAの各塩基に、RNAのどの塩基が対応するか
  3. 範囲:DNA全体、遺伝子全体、転写された部分のどれか

そのうえで、RNAにはTではなくUが含まれることを確認します。「すべてのDNA領域がmRNAへ転写される」「RNAはA・T・G・Cからなる」といった記述は誤りです。

確認問題

問1 転写とは何ですか。
解答例:DNAの一方の鎖を鋳型として、相補的な塩基配列をもつRNAを合成する過程です。
問2 DNAとRNAでは、糖と塩基にどのような違いがありますか。
解答:DNAの糖はデオキシリボースで塩基はA・T・G・C、RNAの糖はリボースで塩基はA・U・G・Cです。
問3 鋳型DNAの塩基配列がTAC CGAのとき、合成されるmRNAの塩基配列を答えてください。
解答:AUG GCUです。鋳型DNAのT・A・C・C・G・Aに、RNAのA・U・G・G・C・Uが対応します。
問4 鋳型DNAのAに対応するmRNAの塩基は何ですか。
解答:ウラシル(U)です。RNAではチミン(T)を使わず、DNAのAにはRNAのUが対応します。
問5 「一つの細胞では、DNAの全領域が一つのmRNAへ転写される」という記述は適切ですか。
解答:適切ではありません。その細胞で必要な遺伝子の領域などが選ばれて転写されます。
問6 tRNAやrRNAも、転写後に翻訳されてタンパク質になりますか。
解答:なりません。tRNAやrRNAはRNA分子として働きます。

まとめ

この記事のまとめ

  • 転写は、DNAを鋳型としてRNAを合成する過程である。
  • 真核細胞の転写は核内で行われ、タンパク質合成の情報を運ぶRNAがmRNAである。
  • RNAはリボースをもち、塩基としてTではなくUを使う。
  • 配列問題では、鋳型DNA・塩基の相補性・TではなくUを使うことを確認する。
  • DNAの全領域や全遺伝子が、常に一度に転写されるわけではない。
わや先生

核外のリボソームへ、DNAそのものを運ぶ必要はありましたか。

ビオップ

必要ない! 必要な遺伝子のDNA領域で、一方の鎖を鋳型にしてmRNAをつくるんだね。RNAではAの相手がUになることも忘れないよ!

Plus|核酸の向きと転写の詳しいしくみ

「生物」で一歩先へ

DNAやRNAの鎖には、5′側と3′側という向きがあります。「生物」では、RNAポリメラーゼという酵素が鋳型DNAに沿ってRNAを合成する向きと結び付けて学びます。生物基礎では、まず鋳型DNAと塩基の相補性を理解できれば十分です。

遺伝子の近くには、RNAポリメラーゼなどが転写を始める位置の目印となるプロモーターがあります。調節タンパク質などが関わり、どの遺伝子をいつ転写するかが調節されます。

真核細胞で転写された直後のRNAには、最終的なmRNAに残るエキソンと、途中で取り除かれるイントロンが含まれる場合があります。イントロンを除き、エキソンをつなぐ加工をスプライシングといいます。加工を終えたmRNAが核外へ運ばれます。

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