世界の森林や草原は、どのような気候のもとに広がるのでしょうか。主なバイオームの特徴と代表植物を整理し、気温・降水量の分布図、雨温図、日本の水平分布・垂直分布をつなげて、資料から判断する練習をします。
なんでなんで?! 同じくらい暖かい場所なのに、森も草原も砂漠もあるの?
暖かさと雨の量を組み合わせて見てみましょう。雨が降る季節にも手掛かりがあります。
この記事でわかること
- 世界の主なバイオームの特徴と代表的な植物
- 気温・降水量の分布図と雨温図の読み方
- 日本の水平分布・垂直分布と森林限界
植生や遷移の学習を、地域ごとの気候の違いへ広げます。図で位置関係をつかみ、葉の特徴や植物の例、気象資料を合わせてバイオームを考えていきましょう。
まず結論|気温と降水量を組み合わせて考える
ある地域の気候などに対応して成立する、植物とそこに暮らす動物などを含む生物のまとまりをバイオーム(生物群系)といいます。主に植生の相観を手掛かりに区分しますが、植物だけを指す言葉ではありません。
陸上のバイオームの大まかな分布には、年平均気温と年降水量が強く関係します。同じように暖かくても雨が少なければ森林は成立しにくく、雨があっても非常に寒い場所では高木の成長が難しくなります。

教科書型の分布図を、二つの軸から読む
図はタップ(クリック)すると、大きな画像で確認できます。

横軸は年平均気温で、右ほど暖かい地域です。縦軸は一年間の降水量で、上ほど雨や雪による水の供給が多い地域です。地図ではないので、右が東、上が北という意味ではありません。
同じ気温で比べるときは、図を縦に読むのが基本です。高温の範囲では、雨が多い方から熱帯多雨林、雨緑樹林、サバンナ、砂漠という対応を捉えられます。実際には雨の降る季節や乾季の長さも影響します。
同じ降水量で比べるときは、図を横に読みます。例えば年降水量が1,000mm前後でも、寒い地域の針葉樹林と、暖かい地域の硬葉樹林やサバンナでは姿が異なります。「雨が1,000mmなら必ずこのバイオーム」と、降水量だけで決めないことが大切です。
①気温の位置を横軸で探す。②降水量の位置を縦軸で探す。③二つが交わる位置の領域を見る。④問題文に季節の雨・葉・樹種などの情報があれば合わせる。図ごとに軸の範囲や目盛間隔も確認します。
森林のバイオームと代表的な植物
植物名だけを切り離さず、気候―葉の性質―植物の例を一組にすると整理しやすくなります。下表は代表例であり、その種類の植物が世界中の同じバイオームに必ず生えるわけではありません。
| 種類 | 気候・葉の特徴 | 代表的な植物の例 |
|---|---|---|
| 熱帯多雨林 | 一年を通じて高温で雨が多い。常緑広葉樹が中心。 | フタバガキ類(東南アジアなど) |
| 亜熱帯多雨林 | 暖かく雨が多い。常緑広葉樹が中心で、熱帯多雨林とまとめる図もある。 | ガジュマル・アコウ。ヘゴなどの木生シダも見られる |
| 雨緑樹林 | 高温で雨季と乾季がある。乾季に落葉する広葉樹が中心。 | チーク |
| 照葉樹林 | 暖温帯の湿潤な地域。厚く光沢のある葉をもつ常緑広葉樹が中心。 | スダジイ・アラカシ・タブノキ・クスノキ |
| 硬葉樹林 | 夏に乾燥し、冬に比較的雨が多い地域。小さく硬い葉をもつ常緑広葉樹など。 | オリーブ・コルクガシ(地中海沿岸)、ユーカリ類(オーストラリア) |
| 夏緑樹林 | 冬の寒さが厳しい冷温帯。冬に落葉する広葉樹が中心。 | ブナ・ミズナラ・カエデ類 |
| 針葉樹林 | 亜寒帯や亜高山帯など。寒さに耐える針葉樹が中心。 | エゾマツ・トドマツ(北海道など)、シラビソ・コメツガ(本州の亜高山帯など) |
生物基礎では、亜熱帯多雨林はガジュマル・アコウ・ヘゴ、照葉樹林はスダジイ・アラカシ・タブノキという代表植物との対応を、気候や葉の特徴と合わせて整理します。ヘゴは幹が木のように立ち上がるシダ植物です。そのため表の見出しは、樹木に限る「樹種」ではなく「植物」としています。代表植物はそのバイオームだけに生育するという意味ではありません。

夏緑樹林と雨緑樹林は、どちらも落葉広葉樹が中心ですが、葉を落とす時期の条件が異なります。夏緑樹林は冬の寒さ、雨緑樹林は乾季の水不足と結び付けます。照葉樹林と硬葉樹林はどちらも常緑のものが多く、葉だけでなく雨の季節性も確認します。
草原・荒原のバイオームにも植物がいる
| 種類 | 環境と姿 | 代表的な植物など |
|---|---|---|
| サバンナ | 高温で雨季・乾季があり、草原に樹木が点在する。 | イネ科草本、点在するアカシア類など |
| ステップ | 温帯の比較的乾燥した地域など。草本が中心で樹木は少ない。 | イネ科草本など |
| 砂漠 | 降水量が非常に少なく、植物がまばら。寒冷な砂漠もある。 | サボテン類(主に南北アメリカ)、乾燥に耐える低木や一年生草本など |
| ツンドラ | 寒さが厳しく、樹木が高く育ちにくい。短い夏に生育する。 | コケ植物・地衣類・草本・丈の低いヤナギ類など |
草原には高木の「代表樹種」がない場合もあるため、ここでは代表的な植物を挙げています。また、砂漠=高温、ツンドラ=生物がいない場所ではありません。生物が生きられる期間や、水の利用しやすさにも目を向けましょう。
日本では、南北と山の高さを比べる

緯度などの違いに応じた分布を水平分布といいます。日本では、おおむね南から北へ、亜熱帯多雨林→照葉樹林→夏緑樹林→針葉樹林という対応が見られます。南西諸島、暖かい地域の低地、冷温帯、北海道の寒冷な地域などを思い浮かべましょう。
標高に応じた分布を垂直分布といいます。標高が高くなるにつれて気温が下がることが、植生の変化に関わります。生物基礎では、本州中部を代表例として、図4の標高と植生帯を対応させます。
低い方から、約500mまでの低地帯・丘陵帯は照葉樹林、約500〜1,500mの山地帯は夏緑樹林、約1,500〜2,500mの亜高山帯は針葉樹林、約2,500m以上は高山帯という目安です。山地帯ではブナ・ミズナラ、亜高山帯ではシラビソ・コメツガ、高山帯ではハイマツなどの低木や高山草原の植物が見られます。
森林限界は、高木からなる森林が成立する限界です。本州中部では標高約2,500mを目安として紹介します。それより高い所にも、ハイマツなどの低木や草本が生えます。「すべての植物がなくなる線」ではありません。各帯の境界や森林限界の標高は地域・地形などで変わり、寒い地域では一般に低くなります。
この図は、気候に対応する大まかな分布を示します。実際には、植林・伐採などの土地利用や地形の影響もあります。スギの人工林があるという観察だけから、そこを亜寒帯の針葉樹林の気候だと判断してはいけません。
雨温図で、硬葉樹林と照葉樹林を見分ける

雨温図は、月ごとの気温と降水量を一緒に示した図です。図5では、青緑の棒が降水量、橙色の折れ線が気温です。対応を示した表示が凡例で、左右の縦軸には別々の単位が使われています。線と棒の高さをそのまま大小比較しないようにしましょう。
地点Aには、気温の高い夏にも雨があります。地点Bでは、気温が高くなる時期に雨が少なく、冬に多く降っています。この夏に乾燥するという特徴が、地中海性気候に成立する硬葉樹林を考える重要な手掛かりです。
図5の二地点は年平均気温も年降水量も同じなので、図2上では同じ位置になります。それでも、植物が利用できる水の季節変化は違います。年平均気温と年降水量だけで、すべてを一意に決められるわけではないことが分かります。
知識と資料を往復しましょう。「夏に乾燥する」という資料を、硬葉樹林の知識につなぐ。「落葉広葉樹」という知識を、気温や乾季の資料で絞り込む。このように、複数の根拠を合わせると判断が確かになります。
確認問題
以下は当サイト独自の問題です。選択式は最も適切なものを一つ選んでください。図と資料は問題の近くに再掲しています。
問1 分布図に条件を当てはめる

図の目安で、年平均気温25℃・年降水量3,500mmに対応する領域と、25℃・100mmに対応する領域をそれぞれ答えてください。また、二地点の比較で固定した条件を答えてください。
問1の解答・考え方
正解:熱帯・亜熱帯多雨林の領域、砂漠の領域。固定した条件は年平均気温。横軸25℃の位置で、縦軸の3,500mmと100mmを比べます。図の上下の違いを、南北方向の違いと取り違えないようにします。
問2 雨温図から季節性を読む

硬葉樹林の成立する地中海性気候の特徴に合うのはA・Bのどちらですか。図から読み取れる根拠も述べてください。
問2の解答・考え方
正解:B。気温の高い夏の降水量が少なく、冬に多く降るからです。年降水量の合計だけではAとBを区別できません。
問3 落葉する時期から判断する
| 森林 | 観察した特徴 |
|---|---|
| X | 冬は寒く、その時期に広葉樹が落葉する |
| Y | 年間を通じて高温で、雨の少ない季節に広葉樹が落葉する |
X・Yに対応するバイオームの組合せを選んでください。
- X:照葉樹林/Y:針葉樹林
- X:夏緑樹林/Y:雨緑樹林
- X:雨緑樹林/Y:夏緑樹林
- X:硬葉樹林/Y:照葉樹林
問3の解答・考え方
正解:2。Xは寒い冬に落葉する夏緑樹林、Yは乾季に落葉する雨緑樹林です。「落葉する」だけでなく、落葉する時期の条件を使います。
問4 森林限界を誤解しない
ある山で、高木の森林がなくなった上にハイマツの低木群落と草本が見られました。適切な説明はどれですか。
- 植物があるので森林限界を越えていない。
- 森林限界より上ではすべての生物がいなくなる。
- 森林限界より上にも低木や草本が生育することがある。
- 高木がない場所は必ず高温の砂漠である。
問4の解答・考え方
正解:3。森林限界は高木からなる森林の限界であり、低木や草本が育つことと矛盾しません。1・2は森林と植物全体を混同し、4は植生の情報を気候の乾燥だけへ飛躍させています。
問5 代表植物と気候を合わせて判断する
| 森林 | 気候と見られた植物 |
|---|---|
| A | 亜熱帯の暖かく雨の多い地域。ガジュマル・アコウが見られ、木生シダのヘゴも生育する。 |
| B | 暖温帯の湿潤な地域。スダジイ・アラカシ・タブノキなど、厚く光沢のある葉をもつ常緑広葉樹が多い。 |
AとBに対応するバイオームをそれぞれ答えてください。
問5の解答・考え方
正解:Aは亜熱帯多雨林、Bは照葉樹林。代表植物に加え、亜熱帯か暖温帯かという気候の違いも判断の手掛かりになります。ヘゴは樹木のような姿でもシダ植物です。
問6 温度変化から言える範囲
ある地域で年平均気温の上昇が続き、降水量はほぼ変わらないとします。適切な考え方を選んでください。
- その年のうちに、森林のすべての樹種が必ず入れ替わる。
- より暖かい条件に対応する植生へ変わる可能性があるが、直ちに入れ替わるとは限らない。
- 降水量が同じなら、気温が変わっても植生は絶対に変わらない。
- 温度が上がれば、必ず砂漠になる。
問6の解答・考え方
正解:2。分布図の横方向の変化から、成立しやすい植生の条件の変化を考えられます。ただし、移動・定着や成長には時間がかかり、土壌・土地利用なども関わります。
まとめ
- バイオームは植物だけでなく動物なども含む。主に植生の相観を手掛かりに区分する。
- 気温・降水量の分布図は、横と縦の二つの条件を合わせて読む。雨温図では季節性も確認する。
- 夏緑樹林と雨緑樹林、照葉樹林と硬葉樹林は、落葉や降水の時期も使って区別する。
- 代表植物は地域差があり、特徴的に見られることと優占することを分けて考える。
- 日本の水平分布と垂直分布は、主に気温の違いと結び付く。森林限界の上にも植物はある。
最初の疑問に、分布図と雨温図の両方を使って答えてみましょう。
暖かさだけじゃ決まらなくて、雨の量と降る季節も大切なんだね。植物の名前も、気候や葉の特徴とつなげると図が読めるようになる!
Plus|森の変化には時間がかかる
気候条件が変わっても、現在の木がすぐ別の種類へ変わるわけではありません。新しい植物の種子が届き、芽生え、育つ必要があります。一方、すでに育った木がしばらく残ることもあります。植生の将来を考える研究では、気候だけでなく植物の移動や世代交代、土地利用も重要になります。
参考資料
本文の用語・説明を確認するために参照した資料です。図解と確認問題は当サイトで作成しています。
- 文部科学省「高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編」:生物基礎「植生と遷移」の学習範囲。
- 北海道大学 露崎研究室「森林」:森林型と気候・植物の特徴。
- 林野庁 中部森林管理局「国有林の概要」:本州中部の垂直分布と約2,500m以上の高山帯。
- 文部科学省「平成30年度第2回 高等学校卒業程度認定試験 生物基礎」:気温・降水量とバイオームの分布図の読み方(図や設問は転載していません)。
- 文部科学省「平成27年度第1回 高等学校卒業程度認定試験 生物基礎」:大問4問5:亜熱帯多雨林の代表植物と日本の水平分布。


コメント