陽生植物・陰生植物の違い|光補償点・光飽和点のグラフを読む

光の強さと二酸化炭素吸収速度の比較グラフ。陽生植物は青緑の実線、陰生植物は紫の破線。正は吸収、負は放出 生物基礎
図1 縦軸は二酸化炭素の正味の吸収速度で、見かけの光合成速度に当たる。青緑の実線が陽生植物、紫の破線が陰生植物。右上の線の対応が凡例。典型的な関係の模式図。

植物は光があれば、どれも同じように育つのでしょうか。明るい場所と林床での育ちやすさを、光合成と呼吸の収支から考えます。陽生植物・陰生植物の違い、光補償点と光飽和点、陽葉・陰葉の関係を図と資料で整理します。

ビオップ

なんでなんで?! 日なたの方が光は多いのに、暗い森の中で育つ植物もいるの?

わや先生

光からつくる量だけでなく、呼吸で使う量とのつり合いも見てみましょう。

この記事でわかること

  • 見かけの光合成速度と呼吸速度の関係
  • 陽生植物・陰生植物のグラフの比較
  • 光補償点・光飽和点と、陽葉・陰葉の意味
この記事の位置づけ|生物基礎

森林の光環境を、植物の光合成とつなげます。グラフの形を覚えるだけでなく、軸・ゼロ・二つの曲線の位置から意味を読み取っていきましょう。

まず結論|弱い光で収支を保てるかが違う

陽生植物は強い光のある場所でよく育つ植物、陰生植物は弱い光の場所でも育つことができる植物です。典型的には陰生植物の方が、弱い光で光合成量と呼吸量のつり合いに達します。反対に、十分強い光のもとでの光合成速度は陽生植物の方が大きくなります。

光の強さと二酸化炭素吸収速度の比較グラフ。陽生植物は青緑の実線、陰生植物は紫の破線。正は吸収、負は放出
図1 縦軸は二酸化炭素の正味の吸収速度で、見かけの光合成速度に当たる。青緑の実線が陽生植物、紫の破線が陰生植物。右上の線の対応が凡例。典型的な関係の模式図。

光合成のグラフなのに、なぜマイナスになる?

植物は、光のもとでも光合成と呼吸の両方を行います。光合成では二酸化炭素を取り込み、呼吸では二酸化炭素を放出します。外から測った二酸化炭素の出入りは、その差です。

図の縦軸は二酸化炭素吸収速度です。ここでは、外から測った正味の吸収速度を表し、これが見かけの光合成速度に当たります。0より上は吸収が放出を上回る状態、0より下は放出が吸収を上回る状態です。吸収速度が0でも、光合成と呼吸の両方が止まったとは限りません。

見かけの光合成速度

見かけの光合成速度=実際の光合成速度-呼吸速度
二酸化炭素の吸収をプラス、放出をマイナスとして考えます。「速度」は、ここでは一定時間あたりの量という意味です。

暗い所では光合成が行われず、呼吸による二酸化炭素の放出が測られます。そのため、見かけの光合成速度はマイナスになります。これは、光合成が逆向きに進んでいるという意味ではありません。

例えば、一定時間に光合成で8の二酸化炭素を取り込み、呼吸で2を放出すると、外から測る吸収は8-2=6です。逆に、見かけの値が6、呼吸速度が2なら、実際の光合成速度は6+2=8と求めます。単位と測定対象をそろえて計算します。

光補償点と光飽和点は、どちらも「光の強さ」

二酸化炭素の正味の吸収速度が0になる光補償点と、曲線がほぼ水平になり始める光の強さである光飽和点を示す図
図2 縦軸の正は吸収、負は放出。光補償点は曲線が横軸と交わる位置。光飽和点は曲線がほぼ頭打ちになるときの横軸の値を読む。

光補償点は、光合成による二酸化炭素の吸収と、呼吸による放出がつり合う光の強さです。見かけの光合成速度は0ですが、光合成も呼吸も止まっていません。光補償点より弱い光では呼吸による放出が上回り、強い光では光合成による吸収が上回ります。

光飽和点は、光を強めても光合成速度がそれ以上ほとんど増えなくなるときの光の強さです。光以外の条件が同じなら、光を増やすだけでは速度が大きくならない状態です。「光飽和点」は曲線の高さそのものではなく、横軸の値だと確認しましょう。

陰生植物は、光がなくても育つわけではない

典型的な陰生植物は光補償点が低いため、陽生植物では収支がマイナスとなる弱い光でも、収支をプラスにできる場合があります。この違いが、林床などでの育ちやすさにつながります。

一方で、陰生植物にも光は必要です。光がまったくない状態が続けば、光合成で有機物を補えません。また、ある瞬間の葉の収支がプラスでも、植物全体が長期的に成長できるとまでは決まりません。夜間や葉以外の部分の呼吸も含めた収支が関わります。

グラフを比べる順番

①縦軸が何の速度かを確認する。②凡例で線の対応を確認する。③同じ光の強さで曲線の高さを比べる。④ゼロとの交点と、頭打ちになる位置を読む。この順なら「いつでも陽生植物の方が大きい」といった取り違えを防げます。

陽葉・陰葉は「植物の種類」ではなく「葉の違い」

同じ木の外側上部にある比較的厚い陽葉と、内側下部にある比較的薄い陰葉を示す模式図
図3 陽生植物・陰生植物と、陽葉・陰葉は別の分け方。同じ木にも光環境の異なる葉がある。

強い光を受ける環境でできる葉を陽葉、弱い光の環境でできる葉を陰葉といいます。一般に陽葉は比較的厚く、陰葉は比較的薄いという違いがあります。同じ木でも、外側と内側で光環境が違うため、両方の特徴をもつ葉が見られます。

また、樹木を育つ光環境から分けると、明るい場所を必要とする陽樹、若木の時期に弱い光にも耐えて育てる陰樹という言葉を使います。陰樹も大きくなって林冠に達すれば強い光を受けます。「陰樹の葉はすべて陰葉」と結び付けないことが大切です。

確認問題

数値は当サイト独自の学習用データです。光以外の条件をそろえ、同じ葉面積・同じ時間あたりの二酸化炭素の出入りを任意単位で表します。プラスは吸収、マイナスは放出です。

問1 二つの植物を比較する

光の強さと二酸化炭素吸収速度(正味)
光の強さ 植物A 植物B
0 −2 −1
1 0 1
3 6 4
6 12 4
9 12 4

典型的な陽生植物に当たるのはA・Bのどちらですか。強い光での値を根拠に説明してください。

問1の解答・考え方

正解:A。強い光でAは12、Bは4で頭打ちになっており、Aの方が飽和時の見かけの光合成速度が大きいからです。光が1のときはBの方が大きく、大小関係は常に同じではありません。

問2 ゼロになる意味

ある葉では、光の強さ1のとき、二酸化炭素の正味の出入りが0でした。このときの説明として適切なものを選んでください。

  1. 光合成も呼吸も止まっている。
  2. 呼吸だけが止まっている。
  3. 光合成による吸収量と呼吸による放出量が等しい。
  4. 光を強めても、その後ずっと光合成速度は0である。
問2の解答・考え方

正解:3。光補償点では光合成と呼吸がつり合っています。「見かけが0」と「両方停止」は異なります。

問3 実際の光合成速度を求める

葉を暗くしたときの二酸化炭素の放出速度は2、ある明るさでの正味の吸収速度は6でした。呼吸速度は明るいときも2と仮定します。実際の光合成速度はいくつですか。

問3の解答・考え方

正解:8。実際の光合成速度=見かけの光合成速度+呼吸速度なので、6+2=8です。仮定が与えられていることも確かめます。

問4 陽葉と陰葉を見分ける

同じ木の外側上部の葉は厚く、内側下部の葉は薄いという結果でした。適切な説明を選んでください。

  1. 同じ木なので、光環境による葉の違いは生じない。
  2. 外側上部の葉は陽葉、内側下部の葉は陰葉の特徴と対応する。
  3. 外側の枝だけ別の植物種へ変わった。
  4. 薄い葉は光合成を行わない。
問4の解答・考え方

正解:2。同じ個体の中でも、光環境に対応して陽葉・陰葉の特徴が現れます。植物個体の分類と葉の特徴を区別します。

問5 資料から言える範囲

ある植物の葉は、弱い光のもとで一度測ると、二酸化炭素を正味で吸収していました。「この植物は、その環境で必ず長期的に成長できる」と断定できない理由を説明してください。

問5の解答・考え方

解答例:一度測った葉の収支だけでは、夜間や葉以外の部分の呼吸も含めた、植物全体の長期的な収支が分からないから。測定した時間・部分と、結論の範囲をそろえて考えます。

まとめ

  • 見かけの光合成速度は、実際の光合成速度から呼吸速度を引いた値。
  • 光補償点では光合成と呼吸がつり合う。光飽和点は、光を強めても速度がほぼ増えなくなる光の強さ。
  • 典型的な陰生植物は光補償点が低い。陽葉・陰葉は葉の違いで、植物の分類とは別。
わや先生

弱い光で育つ理由を、光補償点という言葉で説明できるようになりましたか。

ビオップ

光の多さだけでなく、つくる量と使う量の差を見るんだね。暗い場所でも育つことと、光がいらないことは違うんだ!

Plus|葉が受ける光は、一日の中でも揺れ動く

林床には、葉の隙間から一時的に強い光が差すことがあります。こうした短い光の変化も、植物が一日に得る光に関わります。教科書の曲線は光を一定にしたときの比較に役立ちますが、実際の森を考えるときは、光の強さに加えて「どのくらいの時間当たるか」も大切です。

参考資料

本文の用語・説明を確認するために参照した資料です。図解と確認問題は当サイトで作成しています。

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