細胞分裂の前後では、1細胞当たりのDNA量が規則的に変化します。細胞周期の各時期とDNA量のグラフを対応させながら、その変化の意味を順番に整理します。
なんでなんで?! 細胞が二つに分かれるたびに、DNAは半分になって減っていかないの?
分ける前にDNAを2倍にしておきます。その後、複製されたDNAを二つの娘細胞へ等しく分配するので、分裂後の各細胞はもとの量へ戻ります。
この記事でわかること
- 細胞周期のG1期・S期・G2期・M期を説明できる
- DNAがいつ複製されるか説明できる
- 1細胞当たりDNA量のグラフを読める
- DNA量・染色体数・細胞数を区別できる
前の記事で学んだDNA複製を、細胞が分裂するまでの時間の流れに置きます。染色体の細かな動きや分裂装置の構造よりも、時期・DNA量・分配の関係を中心に扱います。
まず結論
1細胞当たりのDNA量は、G1期では基準量、S期に増加し、G2期から分裂期までは2倍の量を保ちます。細胞質分裂が終わると、二つの娘細胞はそれぞれ基準量のDNAをもちます。

細胞周期とは
細胞周期とは、一つの細胞が分裂を終えてから、次の分裂を終えるまでの周期です。大きく間期と分裂期に分けられます。
間期は「分裂していない休み時間」ではありません。細胞が成長し、物質を合成し、DNAを複製し、次の分裂へ備える活動的な時期です。一般に、細胞周期の大部分を間期が占めます。
間期はG1期・S期・G2期に分かれる
G1期――成長し、通常の働きを行う
分裂を終えた細胞はG1期に入ります。細胞は成長し、RNAやタンパク質などを合成しながら、それぞれの役割を果たします。この時期の1細胞当たりDNA量を、ここでは相対値1とします。
相対値とは、実際のDNA分子数や質量をそのまま示すのではなく、基準と比べて何倍かを表した値です。この記事では、G1期のDNA量を基準の「1」と決めます。
- G1期と同じ量なら相対値1
- G1期の1.5倍なら相対値1.5
- G1期の2倍なら相対値2
したがって、相対値1は「DNAが1分子ある」「染色体が1本ある」という意味ではありません。
S期――DNAを複製する
S期はDNA合成期とも呼ばれます。DNAの複製が進むため、1細胞当たりDNA量は相対値1から2へ連続的に増加します。
S期の途中では、すべてのDNAが一度に複製を終えるわけではありません。そのためグラフは突然1から2へ飛ぶのではなく、時間とともに増加します。
G2期――複製後、分裂へ備える
S期を終えるとG2期です。DNAの複製は完了しているので、1細胞当たりDNA量は相対値2です。細胞は分裂に必要なタンパク質などを用意します。
分裂期にDNAを二つの細胞へ分配する
分裂期(M期)では、複製された染色体が凝縮して観察しやすくなり、二つの集団へ分けられます。その後、細胞質が分かれて二つの娘細胞ができます。
体細胞分裂では、複製された遺伝情報が二つの娘細胞へ原則として等しく分配されます。分裂直前の一つの細胞は相対値2のDNAをもち、分裂後の各娘細胞は相対値1になります。

グラフでは「1細胞当たり」を確認する
図2は、1細胞当たりのDNA量を表しています。分裂後に値が2から1へ下がって見えるのは、DNAが分解されたからではありません。一つの細胞が二つになり、それぞれへ等しく分配されたからです。
- 1細胞当たり:分裂後は各細胞で半分の値になる
- 培養容器全体:細胞数が増えるため、DNA総量は単純には半分にならない
- 1核当たり:核分裂の前後を区別して考える必要がある
G2期はDNA量が2倍なら、染色体の数もG1期の2倍になっているの?
分離が始まるまでは、染色体数は通常同じ数え方をします。各染色体が複製され、2本の姉妹染色分体をもつため、DNA量が2倍になっています。
DNA量が2倍でも染色体数はすぐ2倍とは数えない
S期を終えた染色体は、同じDNA情報をもつ2本の姉妹染色分体からなります。2本はセントロメア付近でつながっているため、分離する前は一つの複製された染色体として数えます。
したがって、G1期からG2期へ進むとDNA量は2倍になりますが、染色体数をただちに2倍とはしません。分裂期に姉妹染色分体が分離すると、それぞれが娘細胞の染色体になります。

細胞周期を止める条件をグラフから考える
ある物質を加えた後、1細胞当たりDNA量がどの値で止まったかを調べると、細胞周期のどこが阻害されたかを推論できます。
| 観察された変化 | 考えられる停止・阻害 | 判断の根拠 |
|---|---|---|
| 相対値1のまま | G1期からS期への進行前 | DNA複製が始まっていない |
| 1と2の間にとどまる | S期 | DNA複製の途中 |
| 相対値2の細胞が増える | G2期または分裂期 | 複製後に分裂を完了できない |
DNA量が2だからといって、G2期か分裂期かをDNA量だけで一つに決めることはできません。染色体が凝縮しているか、二つに分かれているかなど、別の資料が必要です。
共通テストのグラフはこの順番で読む
- 縦軸:1細胞当たりか、全体の総量か
- 相対値:何を1としているか
- 増加区間:S期に対応するか
- 一定区間:G1、G2、Mのどこか
- 減少の意味:分解ではなく細胞分裂による分配か
- 追加資料:顕微鏡像や処理条件と矛盾しないか
確認問題
問1 細胞周期を大きく二つの時期に分けて答えてください。
問2 DNA複製が行われるのは、G1期・S期・G2期・M期のどれですか。
問3 G1期のDNA量を1とすると、G2期の1細胞当たりDNA量はいくつですか。
問4 分裂後の娘細胞でDNA量が1へ戻るのは、DNAが分解されるからですか。
問5 処理後、DNA量が1と2の間で増えなくなりました。停止した可能性が高い時期を答えてください。
問6 DNA量が2の細胞について、G2期かM期かをDNA量だけで決定できますか。
まとめ
- 細胞周期は、間期と分裂期からなる。
- 間期はG1期・S期・G2期に分かれ、S期にDNA複製が行われる。
- 1細胞当たりDNA量は、G1期で1、S期に1から2へ増え、G2期・分裂期で2となる。
- 分裂後はDNAが二つの娘細胞へ等しく分配され、各細胞で1へ戻る。
- DNA量、染色体数、細胞数は別の量として読む。
細胞が分裂しても遺伝情報が減らない理由を説明できますか。
S期にDNAを先に2倍へ複製して、分裂期に二つの娘細胞へ等しく分ける! だから各細胞は、もとの量の遺伝情報を受け取れるんだね。
Plus|細胞周期には停止点がある
細胞は機械的に周期を回り続けるのではなく、DNAに大きな損傷がないか、複製が完了したかなどを確認してから次へ進みます。この調節の節目はチェックポイントと呼ばれます。
細胞周期を調節する遺伝子に異常が重なると、増殖を適切に止められなくなり、がん化につながることがあります。ただし、がんは一つの原因だけで説明できる病気ではなく、多数の遺伝的変化や環境要因が関係します。


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