神経系の全体像|中枢神経系・末梢神経系と体の調節

脳と脊髄を中枢神経系、そこから全身へ広がる神経を末梢神経系として色分けした模式図 生物基礎
図1 脳・脊髄と、全身へ広がる神経を分けて見る。線の位置や本数は模式的

神経系には、中枢神経系・末梢神経系・自律神経系など、似た名前が登場します。この記事では区分と役割を図で整理し、心臓の調節や脳幹の働きを手掛かりに、体の調節とのつながりを学びます。

ビオップ

なんでなんで?! 走ると心臓がドキドキするけど、ぼくは心臓に「速く動いて」って命令していないよ?

わや先生

体の調節は、自分で意識して出す指示だけではありません。まず神経系の全体像を見て、意識せずに働く情報の道筋を整理しましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 中枢神経系と末梢神経系を区別できる
  • 自律神経系が、意識とは無関係に体を調節することを説明できる
  • 脳幹の働きと脳死の意味を大づかみに理解する
  • 体性神経系と自律神経系の役割の違いを説明できる
この記事の位置づけ|生物基礎

神経系の区分と、体の調節へのつながりを扱います。感覚神経・運動神経は中学校の復習として短く確認します。神経の電気的な信号が生まれる仕組みや、詳しい反射の回路は「生物」で学ぶ発展内容なので、ここでは扱いません。

神経系は「中枢」と「末梢」に分けられる

神経系は、体の内外の情報を受け取り、それに応じた反応や調節につなげるしくみです。まず、中枢神経系と末梢神経系の二つに分けます。

中枢神経系は脳と脊髄からなり、情報を受け取って処理し、反応の調節を行います。脊髄は背骨の内側を通る神経組織であり、背骨そのものではありません。

末梢神経系は、中枢神経系と全身の器官をつなぎます。体の各部から中枢へ情報を伝える道筋と、中枢から器官へ情報を伝える道筋があります。「末梢」は手足の先だけという意味ではなく、脳や脊髄の外に広がる神経系を指します。

脳と脊髄を中枢神経系、そこから全身へ広がる神経を末梢神経系として色分けした模式図
図1 脳・脊髄と、全身へ広がる神経を分けて見る。線の位置や本数は模式的
区分の基本

中枢神経系=脳・脊髄。末梢神経系=中枢と全身をつなぐ神経系。まずこの二つを混同しないようにします。

感覚神経と運動神経は、中学校の復習

中学校では、感覚器官で受け取った情報が神経を通って伝わり、筋肉の動きにつながることを学びました。ここでは情報の向きだけ確認しましょう。

名称 情報を伝える主な向き
感覚神経 感覚器官などから、中枢神経系へ
運動神経 中枢神経系から、骨格筋へ
中学校で学んだ刺激と反応の復習。骨格筋は、腕や脚などを動かす筋肉。表が見切れる場合は、横にスクロールできます。

生物基礎では、この復習から先の細かな神経回路に進むのではなく、内臓などの働きを調節する自律神経系に注目します。

神経系の分類図。中枢神経系は脳・脊髄、末梢神経系は体性神経系と自律神経系に分けて示している
図2 末梢神経系を、体性神経系と自律神経系に分けて整理する

自律神経系は、意識とは無関係に体を調節する

自律神経系は末梢神経系の一部で、内臓や血管などの働きを意識とは無関係に調節する神経系です。心臓の拍動や消化管の働きなどに関わります。

自律神経系には、交感神経と副交感神経があります。たとえば心臓では、交感神経の働きにより拍動が速くなり、副交感神経の働きにより遅くなります。両者の働きの変化によって、体の状態に応じた調節が行われます。

ここでは、「交感神経はすべての器官を活発にする」「副交感神経は体全体を止める」と覚えないでください。器官によって作用が異なるため、具体的な比較は次の自律神経の記事で行います。

また、自律神経が意識とは無関係に働くからといって、中枢と無関係という意味ではありません。中枢での情報の処理と、末梢を通る情報伝達がつながって、体が調節されます。

心臓に、一拍ずつ命令しているわけではない

運動中の筋肉では、酸素などを使う量が増えます。心臓の拍動が速くなると、血液を送る働きが高まり、活動中の組織への物質の運搬を支えます。

ただし、心臓は自分自身で拍動のリズムを生み出すしくみをもっています。自律神経は、その拍動の速さなどを調節するのであり、一拍ごとに「今、動け」と命令しているわけではありません。

体の状態の情報が中枢神経系へ伝わり、自律神経を介して器官の働きが調節される流れを示す図
図3 神経による情報伝達を取り出した模式図。実際の体の調節にはホルモンなども関わる
ビオップ

じゃあ、神経が心臓を一回ずつ動かすスイッチ、というわけじゃないんだ?

わや先生

そうです。心臓が拍動するしくみと、その速さなどを神経が調節するしくみは分けて考えます。今回は後者が学習の中心です。

体の調節に関わる脳の部位

脳は、全体が同じ働きをしているわけではありません。詳しい感覚や運動のしくみに踏み込む前に、主な部位を見渡しておきましょう。

部位 主な構成・働き
大脳 感覚の認識、思考、意識的な運動などに関わる
小脳 運動の調整や体の平衡に関わる
脳幹 間脳(かんのう)・中脳(ちゅうのう)・橋(きょう)・延髄(えんずい)からなる。呼吸や心臓の働きなど、生命の維持に重要な調節に関わる
間脳の視床下部
(脳幹の一部)
体温・水分などの調節に関わり、自律神経系と内分泌系の働きをまとめる
脳幹の区分は数研出版『改訂版 高等学校 生物基礎』に合わせている。小脳は脳幹に含めない。表が見切れる場合は、横にスクロールできる

とくに、体の調節の中枢が脳にあり、自律神経やホルモンを介して器官の働きへつながることを押さえます。内分泌系は、ホルモンという情報を伝える物質を血液中へ出して調節するしくみです。視床下部との具体的な関係は、内分泌系の記事で扱います。

脳死は、単に意識がないこととは違う

脳死は、脳幹を含む脳全体の機能が失われ、回復しない状態です。脳幹には呼吸などの生命維持に関わる働きがあるため、「考えられない」「目を覚まさない」という状態だけで脳死を説明することはできません。

意識がない状態でも脳幹の働きなどが保たれている場合があり、脳死とは区別されます。生物基礎では、この違いを中枢神経系の働きと結び付けます。医学的な判定は専門家によって厳密に行われるもので、この説明は個人の状態を判断するためのものではありません。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。過去問の転載ではありません。本文・図・問題文の資料を手掛かりに、各問で最も適切なものを一つ選んでください。選んだ理由を考えてから、解答を開きましょう。

問1 図2の分類を場面に当てはめる

走っているとき、腕や脚の骨格筋へ指令を伝える神経系をX、心臓の拍動の速さを調節する神経系をYとします。図2と本文を踏まえたX・Yの分類として、最も適切なものを選んでください。

神経系の分類図。中枢神経系は脳・脊髄、末梢神経系は体性神経系と自律神経系に分けて示している
図2(再掲) 末梢神経系を、体性神経系と自律神経系に分けて整理する
  1. Xは体性神経系、Yは自律神経系であり、どちらも末梢神経系の一部である。
  2. Xは自律神経系、Yは体性神経系であり、どちらも末梢神経系の一部である。
  3. Xは体性神経系、Yは自律神経系であり、どちらも中枢神経系の一部である。
  4. Xは末梢神経系、Yは中枢神経系であり、どちらも自律神経系の一部である。
問1の解答・考え方

正解:1。骨格筋の運動に関わるXは体性神経系、内臓である心臓の働きを意識とは無関係に調節するYは自律神経系です。図2では、どちらも末梢神経系に含まれます。

ほかの選択肢:2はXとYが逆です。3は体性神経系と自律神経系を中枢神経系に分類した点、4は分類の階層関係を取り違えています。器官の違いだけでなく、図2の包含関係も確認しましょう。

問2 「意識していない」だけで分類できる?

資料:立っているときには、姿勢を保つために骨格筋が働いています。その調節には、一つ一つの筋肉を動かすように意識的に命令しなくても起こるものがあります。

ビオップは「意識していないなら、骨格筋への指令も自律神経が伝えるんだね」と考えました。資料と本文を踏まえた説明として、最も適切なものを選んでください。

  1. 意識しないで起こる反応なので、骨格筋への指令も自律神経系が伝える。
  2. 体性神経系は中枢神経系の一部なので、骨格筋への指令は末梢神経系を通らない。
  3. 骨格筋への指令は体性神経系が伝える。意識の有無だけで、体性神経系と自律神経系を分けることはできない。
  4. 骨格筋が意識しなくても働くことから、体性神経系は中枢神経系と情報をやり取りしないと分かる。
問2の解答・考え方

正解:3。資料の「意識的に命令しなくても」という部分だけでなく、どの器官への指令かに注目します。図2で、骨格筋への指令を伝える運動神経は体性神経系に分類されています。

ほかの選択肢:1は「自律神経は意識とは無関係に働く」を、逆向きに当てはめています。2は体性神経系を中枢に分類した点、4は意識しないことを中枢との情報交換がないことに結び付けた点が誤りです。

問3 働きと脳の区分を結び付ける

脳の二つの部位P・Qについて、次のメモを作りました。本文の表と照らし合わせ、部位と脳幹との関係を正しく説明したものを選んでください。脳幹の区分は、本文と同じ数研出版の教科書の区分を用います。

部位 働きのメモ
P 体温や水分の調節に関わり、自律神経系と内分泌系の働きをまとめる。
Q 運動の調整や体の平衡に関わる。
表が見切れる場合は、横にスクロールできます。
  1. Pは小脳、Qは間脳の視床下部であり、Qは脳幹の一部である。
  2. Pは間脳の視床下部、Qは小脳であり、どちらも脳幹の一部である。
  3. Pは間脳の視床下部、Qは小脳であり、どちらも脳幹には含まれない。
  4. Pは間脳の視床下部、Qは小脳であり、Pは脳幹の一部だが、Qは含まれない。
問3の解答・考え方

正解:4。まず働きから、Pは間脳の視床下部、Qは小脳と判断します。次に、脳幹は間脳・中脳・橋・延髄からなることと照合します。

ほかの選択肢:1はP・Qが逆です。2は小脳まで脳幹に含め、3は間脳を脳幹から外しています。「働きの特定」と「区分の確認」を分けて考えましょう。

問4 観察結果から言えることを選ぶ

資料:心臓へ外から届く神経の信号がない条件でも、心臓の筋肉が生きて活動できる条件を保つと、拍動が続いたとします。これは考察用に条件を簡略化した仮想の観察であり、実験の手順を示すものではありません。

この観察結果と本文の知識に合う説明を選んでください。

  1. 心臓は外から一拍ごとの指令を受けなくても拍動できる。ただし、この結果だけでは、自律神経による速さの調節は否定できない。
  2. 心臓の一拍一拍は、中枢から届く神経の指令だけによって生じる。
  3. 神経の信号がなくても拍動したので、体内でも自律神経は拍動の速さに影響しない。
  4. 心臓で拍動が続いたので、すべての内臓が心臓と同じしくみで周期的に動くと分かる。
問4の解答・考え方

正解:1。信号がない条件で拍動したことは、心臓が自身で拍動のリズムを生み出すという説明に合います。しかし、「拍動が続くか」と「拍動の速さが調節されるか」は別の問いです。

ほかの選択肢:2は観察結果と矛盾します。3は調べていない調節作用まで否定し、4は心臓だけの結果をほかの内臓に広げています。観察で分かったことと、まだ判断できないことを区別します。

問5 判断に必要な情報を確かめる

「ある人に意識がない」という情報だけから、「その人は脳死である」と結論付けてよいでしょうか。学習した定義に基づく説明として、最も適切なものを選んでください。この問題は、個人の医学的な状態を判定するためのものではありません。

  1. よい。意識がないことは、脳幹を含む脳全体の機能が回復しないことを意味する。
  2. よくない。意識の有無だけでは、脳幹を含む脳全体の機能が失われ、回復しない状態かは判断できない。
  3. よい。脳幹の働きが保たれていても、意識がなければ脳死に当たる。
  4. よくない。脳死とは脳幹だけの機能が失われることなので、脳のほかの部位の働きは関係しない。
問5の解答・考え方

正解:2。必要なのは、脳幹を含む脳全体の機能が失われ、回復しない状態かという情報です。「意識がない」だけでは、この条件を満たすと判断できません。

ほかの選択肢:1・3は意識の有無だけで結論付け、4は脳死を脳幹だけの機能喪失と取り違えています。実際の医学的な判定は、専門家が厳密に行います。

まとめ

  • 中枢神経系は脳・脊髄、末梢神経系は中枢と全身をつなぐ。
  • 自律神経系は、意識とは無関係に内臓などの働きを調節する。
  • 心臓自身が拍動し、自律神経はその速さなどを調節する。
  • 脳幹は間脳・中脳・橋・延髄からなり、小脳は含めない。
  • 脳死は、脳幹を含む脳全体の機能が失われ、回復しない状態。
  • 体性神経系は感覚器官からの情報や骨格筋の運動に関わり、自律神経系と区別する。
わや先生

心臓の速さが変わるとき、自分で一拍ずつ意識して指示する必要はありませんでしたね。

ビオップ

うん! 心臓は自分で拍動していて、体の状態に合わせて自律神経などが速さを調節するんだね。意識していなくても、情報はちゃんと行き来しているんだ!

参考資料

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