DNAの二重らせんとは?ヌクレオチドと塩基の相補性

糖・リン酸の骨格の内側でCとGを囲み、塩基対を示すDNA二本鎖の図 生物基礎
DNAは外側に糖・リン酸の骨格をもち、囲まれたCとGのように内側で塩基対をつくる

DNAの二重らせんは、ただ「ねじれたはしご」の形を覚える単元ではありません。何が外側の骨格をつくり、どの塩基どうしが結びつき、なぜ片方の塩基配列からもう片方が決まるのかまでつなげると、DNA複製も理解しやすくなります。

ビオップ

なんでなんで?! 二重らせんって、ねじれたはしごの絵を覚えれば終わりじゃないの?

わや先生

形だけでは足りません。はしごの縁と段が何からできているか、段をつくる塩基の組合せまで分かると、DNAが情報を保ち、複製できる理由が見えてきます。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • ヌクレオチドの三つの構成要素を説明できる
  • DNAの2本鎖と二重らせんを説明できる
  • AとT、GとCの相補性を使って相手側の塩基配列を求められる
  • シャルガフの規則を使って二本鎖DNAの塩基割合を計算できる
この記事の位置づけ

前の記事で整理したDNAという物質の中身を詳しく見ます。ここでは構造と相補性までを扱い、相補性を利用したDNAの複製は次の記事で扱います。

まず結論

DNAの構造をつくる規則

DNAは、ヌクレオチドが多数つながった2本の鎖からできています。2本の鎖はアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)の組合せで結びつき、全体として二重らせんをつくります。

DNAの二重らせんと糖・リン酸の骨格、塩基対を示す図
図1 DNAは糖・リン酸の骨格を外側に、相補的な塩基対を内側にもつ2本鎖である

DNAの構成単位はヌクレオチド

ヌクレオチドは、DNAを組み立てる基本単位です。一つのヌクレオチドは、次の三つからできています。

  • リン酸
  • デオキシリボース:5個の炭素をもつ糖
  • 塩基:アデニン、チミン、グアニン、シトシンのいずれか

DNAでは、ヌクレオチドの糖とリン酸が交互につながり、長い鎖の骨格をつくります。それぞれの糖から塩基が内側へ突き出しています。

DNAのヌクレオチドがリン酸、デオキシリボース、塩基からなることを示す図
図2 一つのヌクレオチドは、リン酸・デオキシリボース・塩基からなる
塩基だけをヌクレオチドと呼ばない

A、T、G、Cは塩基の種類を表しています。ヌクレオチドは、塩基だけでなくリン酸と糖を含む一まとまりです。

4種類の塩基が情報をつくる

DNAに含まれる塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類です。

この4種類がどの順番で並ぶかを塩基配列といいます。塩基の種類だけでなく、並ぶ順序に情報があります。たとえばA–C–G–TとA–G–C–Tは、含まれる塩基の種類が同じでも異なる配列です。

結びつく相手は決まっている

DNAの2本の鎖では、塩基どうしが決まった組合せで向かい合います。

塩基対の規則

  • A(アデニン)―T(チミン)
  • G(グアニン)―C(シトシン)

このように、結びつく相手が決まっている性質を相補性といいます。

一方の鎖がA–C–G–Tなら、向かい合う塩基はT–G–C–Aと決まります。片方の情報を手がかりに、もう片方を決められることが重要です。

2本鎖がねじれて二重らせんになる

相補的な塩基どうしで結びついた2本の鎖は、全体としてねじれた二重らせんをつくります。

「ねじれたはしご」にたとえるなら、外側の2本の縁が糖とリン酸の骨格、内側の段が塩基対です。ただし実際のDNAは平面のはしごではなく、立体的ならせん構造をとります。

ビオップ

AとTが同じ数で、GとCも同じ数なら、AとGの数も同じになるの?

わや先生

AとGが同じとは限りません。二本鎖全体ではA=T、G=Cですが、AとGの割合はDNAごとに異なります。

シャルガフの規則と塩基割合

DNAの塩基組成を調べたエルヴィン・シャルガフは、二本鎖DNA全体ではA(アデニン)とT(チミン)、G(グアニン)とC(シトシン)の割合がそれぞれ等しいことを示しました。この関係をシャルガフの規則といいます。現在では、Aの向かいに必ずT、Gの向かいに必ずCが結びつく相補性によって説明できます。

シャルガフの規則(二本鎖DNA全体)

A=T、G=C、A+T+G+C=100%

ただし、A=Gとは限らず、4種類の塩基がすべて25%になるとは限りません。

たとえばAが30%なら、Tも30%です。残りのGとCは合計40%で、G=Cなので、それぞれ20%になります。

シャルガフの規則により二本鎖DNAではアデニンとチミン、グアニンとシトシンの割合がそれぞれ等しいことを示す図
図3 シャルガフの規則。二本鎖DNA全体ではAとT、GとCの割合がそれぞれ等しいが、AとGが同じとは限らない

片方の鎖とDNA全体を混同しない

A=T、G=Cという関係は、二本鎖DNAの全体を数えたときに成り立ちます。片方の鎖だけを取り出した場合、その一本の中でAとTが同数とは限りません。

資料問題では、問題文が「DNA全体」「一方の鎖」「相補鎖」のどれを数えているかを先に確認します。同じ塩基配列の問題でも、数える範囲が変われば答えが変わります。

共通テストではこの順番で読む

  1. 対象:二本鎖全体か、片方の鎖か
  2. 単位:個数、割合、塩基対のどれか
  3. 相補性:A–T、G–Cを対応させる
  4. 全体:割合なら合計100%になるか確認する

「AとGが等しい」「DNAの種類によらず4塩基が25%ずつ」といった記述は、相補性からは導けません。

確認問題

問1 DNAのヌクレオチドを構成する三つの要素を答えてください。
解答:リン酸、デオキシリボース、塩基です。
問2 DNAに含まれる4種類の塩基を答えてください。
解答:アデニン、チミン、グアニン、シトシンです。
問3 一方の鎖の塩基配列がA–G–T–Cのとき、向かい合う鎖の塩基配列を答えてください。
解答:T–C–A–Gです。AにはT、GにはCが対応します。
問4 二本鎖DNA全体でAが24%でした。T、G、Cはそれぞれ何%ですか。
解答:Tは24%、GとCはそれぞれ26%です。A+T=48%なので残り52%をGとCで等しく分けます。
問5 片方の鎖だけを調べても、その鎖の中でAとTは必ず同数ですか。
解答:必ずしも同数ではありません。A=Tは二本鎖DNA全体を数えたときの関係です。
問6 塩基配列が遺伝情報となるとは、どのような意味ですか。
解答例:4種類の塩基の並ぶ順序が、RNAやタンパク質をつくるための情報になるという意味です。

まとめ

この記事のまとめ

  • ヌクレオチドは、リン酸・デオキシリボース・塩基からなる。
  • DNAはヌクレオチドが多数つながった2本鎖で、全体として二重らせんをつくる。
  • DNAの塩基はA、T、G、Cの4種類で、塩基配列が遺伝情報となる。
  • 相補性によりA–T、G–Cが結びつく。
  • シャルガフの規則により、二本鎖DNA全体ではA=T、G=Cだが、A=Gとは限らない。
わや先生

二重らせんの形だけでなく、何が分かりましたか。

ビオップ

外側は糖とリン酸、内側はA–TとG–Cの塩基対! 相補性があるから、片方の配列からもう片方を決められるんだね。

Plus|二重らせんは複数の証拠から導かれた

教科書から一歩先へ

DNAの二重らせんモデルは、一人のひらめきだけで生まれたものではありません。本文で学んだシャルガフの規則、ロザリンド・フランクリンとレイモンド・ゴスリングらによるX線回折像と測定、モーリス・ウィルキンスらの研究など、複数の証拠が積み重なりました。

ワトソンとクリックは、それらのデータを統合して1953年に二重らせんモデルを提案しました。科学では、観察・測定・既知の規則を矛盾なく説明できるモデルを組み立てることが重要です。

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