自然免疫とは?食作用と炎症、免疫細胞の役割

好中球、マクロファージ、樹状細胞という食作用を行う細胞と、感染細胞などを攻撃するNK細胞の役割を比較した図 生物基礎
図1 自然免疫を担う細胞の役割。食作用を行う細胞と、感染細胞などを攻撃するNK細胞を区別する

病原体が皮膚や粘膜を越えて侵入すると、体はまず自然免疫で応答します。食作用を行う細胞、感染細胞を攻撃する細胞、炎症の関係を、役割と時間の流れで丁寧に整理しましょう。

ビオップ

なんでなんで?! 自然免疫で働く細胞は、みんな病原体を食べる細胞なの? NK細胞も食作用をするのかな。

わや先生

好中球・マクロファージ・樹状細胞は食作用を行いますが、NK細胞の役割は別です。異物への対応を「取り込む」「感染細胞を攻撃する」「次の免疫へつなぐ」に分けて見ましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 自然免疫が働くタイミングを説明できる
  • 食作用の流れを順序立てて説明できる
  • 好中球・マクロファージ・樹状細胞の役割を区別できる
  • NK細胞を食細胞と混同せずに説明できる
  • 炎症や細胞数の時間変化を示す資料を読み取れる
この記事の位置づけ|生物基礎

自然免疫の基本として、食作用、炎症、主な細胞の役割、獲得免疫への橋渡しを扱います。異物を見分ける受容体、サイトカイン、補体の反応経路など、分子レベルの詳しいしくみには進みません。

まず結論|自然免疫は侵入後すみやかに働く

三つの役割で整理しよう

自然免疫は、同じ異物との過去の接触がなくてもすみやかに働きます。好中球・マクロファージ・樹状細胞は異物を取り込む食作用を行い、NK細胞は感染した細胞などを攻撃します。また、樹状細胞は異物に由来する抗原をT細胞へ示し、獲得免疫へつなぎます。

好中球、マクロファージ、樹状細胞という食作用を行う細胞と、感染細胞などを攻撃するNK細胞の役割を比較した図
図1 自然免疫を担う細胞の役割。食作用を行う細胞と、感染細胞などを攻撃するNK細胞を区別する

皮膚や粘膜を越えた異物に対応する

皮膚や粘膜は、異物の侵入を防ぐ最初の防御です。しかし、傷口などから病原体が組織へ侵入すると、自然免疫を担う細胞がすみやかに対応します。

自然免疫は「どの異物にもまったく同じ反応をする」という意味ではありません。生物基礎では、過去の接触がなくても働き、さまざまな異物に対してすみやかに対応するしくみと捉えましょう。

食作用|異物を取り込んで処理する

食作用では、細胞が異物に近づいて包み込み、細胞内へ取り込んで処理します。食作用を行う細胞をまとめて食細胞と呼びます。

  1. 近づく:食細胞が侵入部位へ集まる。
  2. 取り込む:細胞膜で異物を包み、細胞内へ取り込む。
  3. 処理する:取り込んだ異物を細胞内で分解する。
  4. 情報をつなぐ場合もある:マクロファージや樹状細胞は、異物由来の抗原をT細胞へ示す抗原提示にも関わる。
食細胞が細菌へ近づき、細胞膜で囲み、細胞内へ取り込んで処理する食作用の手順図
図2 食作用の流れ。異物への接近、取り囲み、取り込み、細胞内での処理を順に追う
「取り込む」と「攻撃する」を区別

食作用は、異物を細胞内へ取り込む働きです。NK細胞は自然免疫を担いますが、食細胞ではありません。ウイルスに感染した細胞などを攻撃する役割として区別します。

自然免疫を担う細胞の役割

好中球は血液中に多い白血球の一つで、侵入部位へ集まって食作用を行います。マクロファージは組織に分布して異物を取り込み、抗原提示にも関わります。

樹状細胞も食作用を行い、異物由来の抗原をT細胞へ示します。一方、NK細胞は食細胞ではなく、ウイルス感染細胞などを攻撃します。

樹状細胞は、異物を取り込んだあと、リンパ節などへ移動してT細胞に抗原を提示します。この橋渡しによって、自然免疫に続いて獲得免疫が始まります。

炎症|侵入部位に防御を集める反応

異物が侵入した場所では、赤くなる、熱をもつ、腫れる、痛むといった炎症が起こることがあります。侵入部位では血流が増え、血管から組織への液体・細胞の移動が変化して、好中球などが集まりやすくなります。

炎症は、単なる「悪い症状」ではなく、異物の排除や傷ついた組織への対応に関わる防御反応です。ただし、生物基礎では、炎症を起こす物質や反応経路の詳しい暗記までは必要ありません。

組織に病原体が侵入すると血管の反応が起こり、白血球や液体が侵入部位へ移動する炎症の模式図
図3 炎症と防御細胞の集合。血流や血管の状態が変化し、好中球などが侵入部位へ集まりやすくなる

資料問題は、条件と時間変化を分けて読む

自然免疫の資料では、病原体数、白血球数、腫れの大きさなどが時間とともに変化します。まず「何を変えた実験か」を確認し、そのあと「何を測ったか」を読みます。

二つの値が同じ時期に変化しても、それだけで一方がもう一方の唯一の原因だとはいえません。「資料から直接いえること」と「追加の実験が必要なこと」を分けるのがポイントです。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。各問題の直前にある資料だけで判断できます。

問1 細胞の役割を区別する

次の細胞A~Dと働きの組合せとして最も適切なものを選んでください。

  1. 好中球
  2. 樹状細胞
  3. NK細胞
  4. マクロファージ
  1. A―抗体を分泌する、B―感染細胞を攻撃する、C―食作用を行う、D―皮膚をつくる
  2. A―食作用を行う、B―食作用と抗原提示に関わる、C―感染細胞を攻撃する、D―食作用と抗原提示に関わる
  3. A―感染細胞を攻撃する、B―抗体を分泌する、C―食作用を行う、D―T細胞へ分化する
  4. A―抗原をつくる、B―皮膚をつくる、C―抗体を分泌する、D―食作用を行わない
問1の解答・考え方

正解:2。好中球・樹状細胞・マクロファージは食作用を行います。樹状細胞とマクロファージは抗原提示にも関わります。NK細胞は食細胞ではなく、感染した細胞などを攻撃します。

問2 侵入後の時間変化を読む

ある組織に同数の細菌を入れ、組織内の細菌数と好中球数を調べました。値は実験開始時を基準にした相対値です。

侵入後の時間 細菌数(相対値) 好中球数(相対値)
0時間 100 5
4時間 140 62
8時間 48 91
16時間 12 37
確認問題用のモデル資料。相対値は比較しやすいように表した値で、細胞や細菌の実数ではありません。

この資料から直接いえることとして最も適切なものを選んでください。

  1. 好中球数の増加が見られた時期のあとに、細菌数が減少した。
  2. 好中球だけが細菌数を減少させたことが証明された。
  3. 細菌数が最大のとき、好中球数は0であった。
  4. 16時間後には自然免疫が完全に終了した。
問2の解答・考え方

正解:1。4時間で好中球数が増え、その後に細菌数が大きく減っています。ただし、マクロファージなど他の要因を調べていないため、好中球だけが原因とは断定できません。

問3 対照実験から食作用の働きを考える

同じ数の細菌を同じ組織へ入れ、Pでは食作用を保ち、Qでは薬剤によって食作用だけを低下させました。ほかの条件は同じにし、8時間後の細菌数を測定しました。

条件 食作用 8時間後の細菌数(相対値)
P 保たれている 32
Q 低下している 156
確認問題用のモデル実験。PとQでは食作用の程度以外の条件をそろえた。

この結果の解釈として最も適切なものを選んでください。

  1. この条件では、食作用が細菌数を減らすことに関わったと考えられる。
  2. 食作用が低下すると、抗体が必ず0になる。
  3. 自然免疫を担う細胞は好中球だけである。
  4. 細菌数の違いは、最初に入れた細菌数の違いで説明できる。
問3の解答・考え方

正解:1。食作用の程度だけを変えたところ、低下させたQで細菌数が多く残りました。この結果は食作用の寄与を支持しますが、自然免疫のすべてが食作用だけで説明できるわけではありません。

問4 炎症の資料を読む

皮膚の一部に異物が侵入したあと、侵入部位で血流の指標と好中球数を測定しました。侵入前を1.0とした相対値を示します。

侵入後の時間 血流の指標 好中球数
0時間 1.0 1.0
1時間 2.4 1.6
4時間 2.0 7.8
確認問題用のモデル資料。いずれも侵入前の値を1.0として表した。

資料の読み取りとして最も適切なものを選んでください。

  1. 血流の指標は好中球数より先に増加し、その後、好中球数が大きく増加した。
  2. 好中球数が増えたため、異物は必ず完全に排除された。
  3. 血流の増加は獲得免疫だけで起こる。
  4. 1時間後から4時間後まで、血流の指標も好中球数も減少した。
問4の解答・考え方

正解:1。1時間後には血流の指標が大きく上がり、好中球数の大きな増加は4時間後に見られます。異物の量を測っていないため、完全な排除は判断できません。

問5 樹状細胞の橋渡しを考える

樹状細胞について、Pでは異物の取り込みと抗原提示の両方ができ、Qでは異物を取り込めるもののT細胞への抗原提示だけができないものとします。異物を入れたあとの結果は次のとおりでした。

条件 樹状細胞内に取り込まれた異物 活性化したT細胞数(相対値)
P 確認された 100
Q 確認された 8
確認問題用のモデル実験。PとQでは抗原提示ができるかどうかだけが異なる。

結果から考えられることとして最も適切なものを選んでください。

  1. 異物を取り込むことと、T細胞へ抗原を提示することは同じ働きである。
  2. 樹状細胞は異物を取り込めないときだけT細胞を活性化する。
  3. 樹状細胞による抗原提示は、T細胞を介した獲得免疫の開始に関わる。
  4. 抗原提示ができないと、皮膚による侵入防止も失われる。
問5の解答・考え方

正解:3。Qでも異物の取り込みは確認されていますが、活性化したT細胞数は少なくなりました。食作用と抗原提示を区別し、樹状細胞が自然免疫から獲得免疫へ情報をつなぐと考えます。

まとめ

  • 自然免疫は、同じ異物との過去の接触がなくてもすみやかに働く。
  • 好中球・マクロファージ・樹状細胞は、異物を取り込む食作用を行う。
  • NK細胞は自然免疫を担うが食細胞ではなく、感染した細胞などを攻撃する。
  • 炎症では血管の状態が変化し、好中球などが侵入部位へ集まりやすくなる。
  • 樹状細胞は食作用と抗原提示を行い、獲得免疫へつなぐ。
  • 資料では、変えた条件、測定した値、時間の順に確認する。
わや先生

自然免疫の細胞は、すべて同じ働きをしていましたか。

ビオップ

違うね! 好中球・マクロファージ・樹状細胞は食作用を行うけれど、NK細胞は感染細胞などを攻撃する。樹状細胞は獲得免疫への橋渡しもするんだ。

参考資料

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