血糖調節とは?インスリンとグルカゴンの働き

生物基礎

食後には血液中のグルコースが増え、空腹時や運動時には使われます。それでも血糖濃度が大きく外れない理由を、インスリンと血糖濃度を上げる三つのホルモン、肝臓でのグリコーゲン分解・糖新生のつながりから整理します。

ビオップ

なんでなんで?! ごはんを食べたら血糖は増えて、食べなかったら減るんでしょ? だったら一日の中で上がりっぱなし、下がりっぱなしにならないの?

わや先生

食後と空腹時では、逆向きの調節が働きます。二つを別々に暗記せず、一日の流れとしてつなげて見てみましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 血糖・血糖濃度・グリコーゲンの意味を説明できる
  • 食後のインスリンによる血糖濃度低下の流れを説明できる
  • 血糖濃度が低いときに働く、グルカゴン・アドレナリン・糖質コルチコイドの代表的な三つの経路を区別できる
  • グリコーゲン分解と糖新生の違いを説明できる
  • 自律神経系と内分泌系が協調することを説明できる
  • 血糖濃度とホルモン濃度の経時グラフを読み取れる
この記事の位置づけ|生物基礎

自律神経、ホルモン、負のフィードバックを、血糖調節という一つの現象で統合します。糖新生という反応の意味までは生物基礎として扱いますが、インスリン受容体以後の細胞内反応や、糖新生に関わる酵素・詳しい代謝経路は扱いません。

まず結論|食後は下げる調節、空腹時は上げる調節が働く

血糖調節の全体像

食後に血糖濃度が高くなると、すい臓からインスリンが分泌され、血糖濃度を下げる方向に働きます。血糖濃度が低くなると、グルカゴンとアドレナリンは主に肝臓のグリコーゲン分解を促し、糖質コルチコイドは主に肝臓で糖新生を促して、血糖濃度を上げる方向に働きます。逆向きの調節により、血糖濃度は一定範囲に保たれます。

食事前後の血糖濃度、血中インスリン濃度、血中グルカゴン濃度を三段に示す模式図。糖質を含む食事後、血糖濃度とインスリン濃度は上昇してから食事前の値へ近づき、グルカゴン濃度は低下してから回復する
図1 糖質を含む食事後にみられる代表的な変化を示した模式図。健康な人の食事前の血糖濃度は通常は正常範囲内である。曲線どうしの高さではなく、各項目が食事前と比べて増えたか、減ったかを見る
食事前は、必ずしも「低血糖」ではない

健康な人の通常の食事前は、食後より血糖濃度が低くても、一般には正常範囲内です。インスリンは少量の基礎分泌が続き、グルカゴン濃度は食後より相対的に高い状態にあります。

血糖は、血液中のグルコース

血液中のグルコースを血糖といい、その濃度を血糖濃度(血糖値)といいます。健康なヒトの血糖濃度は、食事や運動によって変化しながらも、およそ0.1%前後の一定範囲に保たれています。

「一定」とは、いつ測っても同じ値という意味ではありません。食後には上昇し、その後は調節によってもとの範囲へ近づきます。空腹時や運動時には低下する方向へ変化しますが、血液へグルコースを補う調節が働きます。

グリコーゲンは、グルコースが多数つながった物質です。食後に余ったグルコースの一部は、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられます。血糖濃度が低いときには、肝臓のグリコーゲンが分解され、できたグルコースが血液中へ放出されます。

資料の「相対値」は、変化を比べるための値

教科書や入試問題では、血糖濃度やホルモン濃度を相対値で示すことがあります。相対値とは、ある時点や基準の値を1や100などに置き換え、そこから何倍・何%に変化したかを表した値です。実際の濃度の単位そのものではありません。

別の項目の相対値を、そのまま濃度比較しない

血糖濃度の相対値100とインスリン濃度の相対値100は、異なる物質について別々に定めた基準です。異なる物質の絶対量を比べるのではなく、それぞれの項目が基準からいつ増え、いつ減ったかを読みます。

図1では、食後にインスリン濃度が上がり、その後に血糖濃度がもとの範囲へ近づいています。一方、グルカゴン濃度は食後に下がり、時間がたつと回復しています。まずグラフからこの関係を読み、そのあとで各ホルモンの働きと結び付けます。

食後|B細胞からインスリンが分泌される

食物中の炭水化物が消化・吸収されると、グルコースが血液中へ入り、血糖濃度が高くなります。すい臓のランゲルハンス島にあるB細胞は、その上昇を感知してインスリンを分泌します。

インスリンは、次の働きを促進して血糖濃度を下げます。

  • 細胞へのグルコースの取り込み
  • 細胞内でのグルコースの消費
  • 肝臓や筋肉で、グルコースからグリコーゲンを合成すること
インスリンはグルコースを分解する酵素ではない

インスリンはホルモンです。インスリン自身がグルコースを切断して減らすのではなく、標的細胞へ情報を伝え、取り込み・消費・グリコーゲン合成を促進します。

空腹時・運動時|A細胞からグルカゴンが分泌される

食事から時間がたったときや運動でグルコースが使われたときには、血糖濃度が低下する方向へ変化します。ランゲルハンス島のA細胞はその低下を感知し、グルカゴンを分泌します。

グルカゴンは肝臓に作用し、グリコーゲンをグルコースへ分解する反応を促進します。できたグルコースが血液中へ放出されるため、血糖濃度は上がり、もとの範囲へ近づきます。

食後はすい臓ランゲルハンス島B細胞のインスリンが細胞へのグルコース取り込みと肝臓および筋肉でのグリコーゲン合成を促し、空腹時や運動時はA細胞のグルカゴンが肝臓でのグリコーゲン分解を促して血糖濃度を一定範囲へ戻す図
図2 血糖濃度を一定範囲に保つしくみ。食後と空腹時を、すい臓の細胞・ホルモン・標的器官の順に対比する

血糖濃度が低いとき|代表的な三つの経路が働く

血糖濃度を上げる調節には複数の経路があります。すい臓のA細胞が血糖濃度の低下を直接感知するほか、間脳の視床下部から始まる神経・ホルモンの経路も働きます。

経路1|グルカゴン

A細胞から分泌されたグルカゴンは、主に肝臓でグリコーゲンの分解を促します。また、視床下部からの交感神経もA細胞に働き、グルカゴンの分泌を促します。

経路2|アドレナリン

視床下部から交感神経を介して副腎髄質が刺激されると、アドレナリンが分泌されます。アドレナリンも主に肝臓でグリコーゲンの分解を促し、血糖濃度を上げる方向に働きます。

経路3|糖質コルチコイド

視床下部から放出ホルモンが分泌されると、脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。それを受けて副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌され、主に肝臓で糖新生を促します。

糖新生とは、主に肝臓で、タンパク質などから生じた物質を材料にグルコースを新たに合成する反応です。すでに蓄えてあるグリコーゲンをグルコースへ分解する反応とは区別します。

グリコーゲン分解と糖新生を分けて考える

グルカゴンとアドレナリンは、主に肝臓に蓄えたグリコーゲンの分解を促します。糖質コルチコイドは、主に肝臓で新たにグルコースを合成する糖新生を促します。どちらも血糖濃度を上げる方向に働きますが、グルコースを補う方法が異なります。

血糖濃度が低くなったとき、すい臓A細胞からのグルカゴン、視床下部・交感神経・副腎髄質を介するアドレナリン、視床下部・放出ホルモン・脳下垂体前葉・副腎皮質刺激ホルモン・副腎皮質を介する糖質コルチコイドが、肝臓のグリコーゲン分解または主に肝臓での糖新生を促して血糖濃度を上げる図
図3 血糖濃度を上げる代表的な三つの経路。グルカゴンとアドレナリンは主にグリコーゲン分解を、糖質コルチコイドは主に肝臓で糖新生を促す
ほかの血糖上昇ホルモン

成長ホルモンにも血糖濃度を上げる作用があります。この記事では、血糖濃度が低くなったときの代表的な三つの経路として、グルカゴン・アドレナリン・糖質コルチコイドを扱います。

一方、血糖濃度が高いときには、B細胞が直接変化を感知する経路に加え、視床下部から副交感神経を介してインスリン分泌を促す経路も関わります。食後も空腹時も、すい臓だけで独立して調節しているのではありません。

ビオップ

グルカゴンとアドレナリンは蓄えを分解して、糖質コルチコイドは糖新生で新しくグルコースをつくるの?

わや先生

その区別が大切です。三つの経路は途中が異なりますが、いずれも肝臓から血液へグルコースを補い、血糖濃度を上げる方向に働きます。

血糖調節も、変化を打ち消すしくみ

食後に血糖濃度が上がると下げる調節が働き、空腹時に下がると上げる調節が働きます。どちらも最初の変化を打ち消し、一定範囲へ近づける調節です。これは恒常性を保つ負のフィードバックの考え方に合います。

ただし、チロキシンの例のように「最終ホルモンが上流の内分泌腺を直接抑える」一つの矢印だけで覚えるのではなく、血糖濃度という調節対象の変化を中心に、すい臓・肝臓・自律神経・視床下部・脳下垂体・副腎と複数のホルモンをつなげて考えます。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。知識だけで曲線を決めず、まず資料に示された増減と時間順序を読みましょう。

問1 食事前後の資料を読む

健康な人について、食事直前を100とした相対値を示します。

食後の時間 血糖濃度 ホルモンX ホルモンY
0分 100 100 100
30分 135 220 70
120分 105 115 95
確認問題用の独自資料。各項目の食事直前を100とした相対値。

小問A:X・Yの組合せとして最も適切なものを選んでください。

  1. Xはインスリン、Yはグルカゴン
  2. Xはグルカゴン、Yはインスリン
  3. X・Yともインスリン
  4. X・Yともグルカゴン

小問B:食後30分の値から直接いえることとして最も適切なものを選んでください。

  1. 血液中には、Xがグルコースの約1.6倍の質量で含まれる。
  2. 食事直前と比べ、血糖濃度は1.35倍、Xの濃度は2.2倍になった。
  3. Xの濃度の実測値は220mg/dLである。
  4. 血糖濃度とXの濃度は同じ単位で測定された。
問1の解答・考え方

小問A:1。小問B:2。食後に大きく増えたXはインスリン、低下したYはグルカゴンの変化と合います。また、それぞれの食事直前を100とした相対値なので、同じ項目の食事直前との比は読めますが、異なる項目どうしの絶対量や単位は比較できません。

問2 インスリンの働きを選ぶ

食後に血糖濃度が高くなったときの流れとして最も適切なものを選んでください。

  1. A細胞→グルカゴン→肝臓でグリコーゲン分解→血糖濃度低下
  2. B細胞→インスリン→細胞への取り込みとグリコーゲン合成→血糖濃度低下
  3. B細胞→インスリン→肝臓からグルコース放出→血糖濃度上昇
  4. 副腎髄質→インスリン→すべての細胞で同じ反応→血糖濃度低下
問2の解答・考え方

正解:2。インスリンはB細胞から分泌され、細胞へのグルコース取り込みや肝臓・筋肉でのグリコーゲン合成を促します。

問3 分泌部位と肝臓の反応を対応させる

血糖濃度が低くなったときに働く三つの経路を、次の資料にまとめました。

経路 ホルモンの分泌部位 ホルモン 肝臓で促される反応
P すい臓ランゲルハンス島A細胞 X グリコーゲン分解
Q 副腎髄質 アドレナリン Y
R 副腎皮質 Z 糖新生
確認問題用の独自資料。X〜Zに入る語句を考える。

X・Y・Zの組合せとして最も適切なものを選んでください。

  1. X=グルカゴン、Y=グリコーゲン分解、Z=糖質コルチコイド
  2. X=グルカゴン、Y=糖新生、Z=アドレナリン
  3. X=インスリン、Y=グリコーゲン分解、Z=糖質コルチコイド
  4. X=インスリン、Y=糖新生、Z=アドレナリン
問3の解答・考え方

正解:1。A細胞はグルカゴン、副腎髄質はアドレナリン、副腎皮質は糖質コルチコイドを分泌します。グルカゴンとアドレナリンは主にグリコーゲン分解を、糖質コルチコイドは主に肝臓で糖新生を促します。

問4 実験結果からインスリンの作用を考える

同じ量の食事をした2群を比べると、P群では食後にインスリン濃度が上昇し、2時間後には血糖濃度が食事前に近づきました。Q群ではインスリン濃度の上昇が小さく、2時間後も血糖濃度が高いままでした。資料から考えられることとして最も適切なものを選んでください。

  1. インスリン濃度の上昇は、血糖濃度を下げる調節に関係すると考えられる。
  2. インスリンは血糖濃度を上げる唯一のホルモンである。
  3. Q群ではグルコースがまったく吸収されなかった。
  4. この一回の資料だけで、Q群の病名や原因を一つに確定できる。
問4の解答・考え方

正解:1。インスリン上昇が大きいP群では血糖濃度が低下し、上昇が小さいQ群では高い状態が続いています。関係は考えられますが、この資料だけで病名や原因までは確定できません。

問5 経路の一部が働かない場合を考える

血糖濃度が低くなっても、脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンを十分に分泌できない個体を考えます。ほかの器官には異常がないとき、起こりやすい変化として最も適切なものを選んでください。

  1. 糖質コルチコイドの分泌と糖新生の促進が弱まるが、グルカゴンとアドレナリンの経路は働きうる。
  2. 副腎髄質からのアドレナリン分泌だけが弱まり、糖質コルチコイド分泌は変わらない。
  3. すい臓B細胞からのインスリン分泌が増え、すべての血糖上昇経路が止まる。
  4. 肝臓のグリコーゲン分解だけが完全に止まり、糖新生は強まる。
問5の解答・考え方

正解:1。副腎皮質刺激ホルモンは副腎皮質に働くため、その分泌が不足すると糖質コルチコイドの分泌と、主に肝臓での糖新生の促進が弱まります。一方、A細胞からのグルカゴンと、副腎髄質からのアドレナリンは別の経路で分泌されます。

まとめ

  • 血糖は血液中のグルコースで、血糖濃度はおよそ0.1%前後の一定範囲に保たれる。
  • 食後はB細胞からインスリンが分泌され、細胞への取り込みやグリコーゲン合成を促し、血糖濃度を下げる。
  • A細胞のグルカゴンと、副腎髄質のアドレナリンは、主に肝臓のグリコーゲン分解を促して血糖濃度を上げる。
  • 副腎皮質の糖質コルチコイドは、主に肝臓で糖新生を促して血糖濃度を上げる。
  • グリコーゲン分解は蓄えを分解する反応、糖新生は別の物質を材料にグルコースを新たに合成する反応である。
  • 血糖調節では、自律神経系と内分泌系、すい臓・肝臓・視床下部・脳下垂体・副腎が協調する。
  • 相対値のグラフでは、各曲線の増減と時間順序を読み、異なる項目の絶対量を比較しない。
わや先生

食後と空腹時を、一つの血糖調節としてつなげて説明できますか。

ビオップ

できる! 食後はインスリンでグルコースを取り込んで蓄える。血糖濃度が低いときは、グルカゴンとアドレナリンが主にグリコーゲン分解を、糖質コルチコイドが糖新生を促して、肝臓からグルコースを補うんだね!

Plus|筋肉のグリコーゲンと肝臓のグリコーゲン

教科書から一歩先へ

食後には肝臓と筋肉の両方でグリコーゲン合成が促進されますが、血糖濃度が低いときに血液へグルコースを供給する中心は肝臓です。筋肉のグリコーゲンは、おもに筋肉自身が活動するときのエネルギー源として利用されます。生物基礎では、「インスリンは肝臓・筋肉でグリコーゲン合成を促進」「グルカゴンとアドレナリンは主に肝臓でグリコーゲン分解を促進」「糖質コルチコイドは主に肝臓で糖新生を促進」と区別しましょう。

参考資料

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