ホルモンとは?内分泌腺から標的器官へ

内分泌腺から血液中へ分泌されたホルモンが運ばれ、受容体をもつ標的細胞だけが応答する流れを示す図 生物基礎
図1 ホルモンが標的細胞に届くまで。受容体をもたない細胞にも血液は届くが、そのホルモンには応答しない

ホルモンは血液に入って全身をめぐるのに、体中の細胞が同じ反応をするわけではありません。内分泌腺から標的細胞までの道筋を追い、少量のホルモンで調節できる理由を整理します。

ビオップ

なんでなんで?! ホルモンが血液に混ざるなら、全身の細胞がいっせいに同じ反応をしちゃわないの?

わや先生

血液が届くことと、ホルモンを受け取って応答できることは別です。受容体をもつ標的細胞に注目しましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 内分泌腺・ホルモン・分泌の関係を説明できる
  • 標的器官・標的細胞・受容体の関係を説明できる
  • 血液で全身へ運ばれても、作用する細胞が限られる理由を判断できる
  • 下垂体の前葉・後葉、副腎の皮質・髄質、ランゲルハンス島のA細胞・B細胞を区別し、ホルモンと対応させられる
この記事の位置づけ|生物基礎

自律神経の記事に続き、体内で情報を伝えるもう一つのしくみを扱います。ホルモンの化学構造、細胞内の詳しい情報伝達経路、受容体の種類は「生物」の内容なので、ここでは扱いません。

まず結論|ホルモンは血液で運ばれ、標的細胞に作用する

内分泌系の基本

内分泌腺でつくられたホルモンは、血液中へ分泌されます。血液によって広く運ばれますが、そのホルモンに合う受容体をもつ標的細胞だけが応答します。

内分泌腺から血液中へ分泌されたホルモンが運ばれ、受容体をもつ標的細胞だけが応答する流れを示す図
図1 ホルモンが標的細胞に届くまで。受容体をもたない細胞にも血液は届くが、そのホルモンには応答しない

内分泌腺は、ホルモンを血液中へ分泌する

内分泌とは、体内でつくられた物質を血液中へ出すことです。ホルモンをつくり、血液中へ分泌する器官をまとめて内分泌腺といいます。そして、内分泌腺とホルモンによって体の状態を調節するしくみが内分泌系です。

ホルモンは、微量で特定の細胞の働きを調節する情報伝達物質です。ホルモン自身が栄養分やエネルギー源になるのではありません。また、血液中へ出されたホルモンが、目的の器官まで自力で進むわけでもありません。心臓の拍動による血液循環に乗って運ばれます。

「分泌」は、つくることと同じではない

ホルモンを合成することは「つくること」、分泌することは「細胞や内分泌腺から外へ出すこと」です。資料問題では、合成量と血液中への分泌量を区別して読みます。

代表的な内分泌腺とホルモン

同じ器官でも、内部の区画や細胞の種類によって分泌するホルモンが異なります。そのため、「副腎―アドレナリン」のように器官名だけで覚えず、どの部位・細胞から分泌されるかまで組にして整理することが大切です。

人体内の視床下部、下垂体前葉と後葉、甲状腺と副甲状腺、副腎皮質と副腎髄質、すい臓ランゲルハンス島A細胞とB細胞の位置および代表的なホルモンを示す図
図2 代表的な内分泌器官とホルモン。下垂体の前葉・後葉、副腎の皮質・髄質、ランゲルハンス島のA細胞・B細胞を区別して見る
分泌部位・細胞 ホルモン 主な標的 主な働き
視床下部の神経分泌細胞 放出ホルモン・放出抑制ホルモン 下垂体前葉 前葉からのホルモン分泌を促進・抑制する
下垂体前葉 成長ホルモン 骨や全身の組織 タンパク質合成や骨の発育を促進し、血糖濃度を上げる
下垂体前葉 甲状腺刺激ホルモン 甲状腺 チロキシンの合成・分泌を促進する
下垂体前葉 副腎皮質刺激ホルモン 副腎皮質 糖質コルチコイドの合成・分泌を促進する
下垂体後葉 バソプレシン 腎臓 水の再吸収を促進し、尿量を減少させる
甲状腺 チロキシン 全身の組織 代謝、成長、分化を促進する
副甲状腺 パラトルモン 骨・腎臓など 血液中のカルシウムイオン濃度を上げる
副腎皮質 糖質コルチコイド 肝臓など タンパク質からの糖の合成を促進し、血糖濃度を上げる
副腎皮質 鉱質コルチコイド 腎臓 ナトリウムイオンの再吸収を促進する
副腎髄質 アドレナリン 肝臓など グリコーゲンの分解を促進し、血糖濃度を上げる
すい臓・ランゲルハンス島A細胞 グルカゴン 肝臓 グリコーゲンの分解を促進し、血糖濃度を上げる
すい臓・ランゲルハンス島B細胞 インスリン 肝臓・筋肉など グリコーゲン合成や細胞でのグルコース利用を促進し、血糖濃度を下げる
黄緑の2行は副腎皮質、オレンジの1行は副腎髄質。各ホルモンの分泌部位を行ごとに明記しています。表が見切れる場合は、横にスクロールできます。
器官名だけで止めない

副腎皮質と副腎髄質、下垂体前葉と下垂体後葉、ランゲルハンス島A細胞とランゲルハンス島B細胞は、それぞれ分泌するホルモンが異なります。資料や選択肢では、器官名の次に部位・細胞まで確かめましょう。

間脳の視床下部は、自律神経系と内分泌系をまとめる中枢として働きます。視床下部の放出ホルモン・放出抑制ホルモンは、下垂体前葉からのホルモン分泌を調節します。一方、下垂体後葉から血液中へ出るバソプレシンは、視床下部の神経分泌細胞でつくられ、後葉へ運ばれたものです。

副腎では、外側の副腎皮質から糖質コルチコイドなどが、内側の副腎髄質からアドレナリンが分泌されます。また、すい臓のランゲルハンス島では、A細胞がグルカゴン、B細胞がインスリンを分泌します。これらが協調する血糖調節は、後の記事で詳しく扱います。

標的器官と標的細胞は、ホルモンに応答する

あるホルモンが作用する器官を標的器官、その中で実際に応答する細胞を標的細胞といいます。標的細胞には、そのホルモンを受け取る受容体があります。

ホルモンと受容体が対応するため、同じ血液が届く細胞でも応答は異なります。受容体をもつ細胞では、そのホルモンの情報を受け取って働きが変化します。受容体をもたない細胞では、そのホルモンが近くを流れていても同じ応答は起こりません。

同じホルモンを含む血液が届いた細胞A、B、Cのうち、対応する受容体をもつ細胞AとCだけが応答することを示す図
図3 ホルモンの作用先は受容体の有無で限られる。血液が届く範囲と、応答する細胞の範囲は同じではない
ビオップ

じゃあ、ホルモンが標的細胞の場所を覚えていて、そこだけで止まるの?

わや先生

ホルモンが行き先を選んでいるわけではありません。広く運ばれたあと、受容体をもつ細胞だけが情報を受け取ります。

資料では「どこまで言えるか」を確かめる

受容体に関する資料では、次の順に読みます。

  1. 何をそろえたか:各細胞へ同じ濃度のホルモンを与えたか。
  2. 何が異なるか:受容体の有無や数、細胞の種類など。
  3. どの細胞が応答したか:応答の有無や大きさを比較する。
  4. 直接いえる範囲にとどめる:応答した細胞に受容体があることが示されても、細胞内の詳しい反応経路まで分かったとは限らない。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。過去問の転載ではありません。資料に書かれた事実と、そこから考えられることを区別しましょう。

問1 情報の流れを並べる

内分泌系でホルモンが作用するまでの順として最も適切なものを選んでください。

  1. 標的細胞→血液→内分泌腺→ホルモン
  2. 内分泌腺→ホルモンの分泌→血液による運搬→標的細胞
  3. 血液→受容体の分泌→内分泌腺→標的細胞
  4. 内分泌腺→神経線維→すべての細胞→ホルモン
問1の解答・考え方

正解:2。内分泌腺から血液中へ分泌されたホルモンが、血液によって運ばれ、対応する受容体をもつ標的細胞に作用します。

問2 標的細胞を資料から判断する

同じ濃度のホルモンXを細胞P・Q・Rに加えた結果を示します。

細胞 Xに合う受容体 応答
P あり あり
Q なし なし
R あり あり
確認問題用の独自資料。表が見切れる場合は、横にスクロールできます。

この資料から、ホルモンXの標的細胞と考えられる組合せを選んでください。

  1. Pのみ
  2. Qのみ
  3. PとR
  4. P・Q・Rのすべて
問2の解答・考え方

正解:3。対応する受容体をもち、ホルモンXに応答したPとRが標的細胞と考えられます。全細胞へ同じホルモンを与えたことと、全細胞が応答することは別です。

問3 分泌部位・ホルモン・働きを対応させる

分泌部位、ホルモン、主な働きの組合せとして正しいものを選んでください。

  1. 副腎皮質―糖質コルチコイド―血糖濃度を上げる
  2. 副腎髄質―インスリン―血糖濃度を下げる
  3. ランゲルハンス島A細胞―インスリン―血糖濃度を下げる
  4. 下垂体後葉―成長ホルモン―骨の発育を促進する
問3の解答・考え方

正解:1。糖質コルチコイドは副腎皮質から分泌され、血糖濃度を上げる方向に働きます。副腎髄質からはアドレナリン、ランゲルハンス島A細胞からはグルカゴン、下垂体前葉からは成長ホルモンが分泌されます。

問4 実験結果の範囲を読む

細胞SにホルモンYを加えると応答が見られましたが、Yに合う受容体の働きを妨げる物質を加えると応答は見られませんでした。最も適切な考察を選んでください。

  1. 細胞Sの応答には、Yに合う受容体が関わると考えられる。
  2. ホルモンYは血液を使わず、神経だけで細胞Sへ運ばれた。
  3. ホルモンYは体内のすべての細胞に同じ応答を起こす。
  4. この結果だけで、受容体より後の反応経路をすべて特定できる。
問4の解答・考え方

正解:1。受容体の働きを妨げたときに応答が消えたため、その受容体が応答に必要だと考えられます。ただし、細胞内の経路をすべて特定したとはいえません。

問5 血液中のホルモンを読む

あるホルモンの血中濃度が上昇したとき、器官Aでは応答が起こり、器官Bでは起こりませんでした。最も適切な説明を選んでください。

  1. 血液は器官Aにだけ流れ、器官Bには流れなかった。
  2. 器官Aの細胞はそのホルモンに合う受容体をもち、器官Bの細胞はもたない可能性がある。
  3. 器官Bは必ず内分泌腺である。
  4. ホルモンは器官Aの場所を記憶して移動した。
問5の解答・考え方

正解:2。ホルモンは血液で広く運ばれますが、応答できるかどうかは受容体の有無などで決まります。

まとめ

  • 内分泌腺はホルモンをつくり、血液中へ分泌する。
  • ホルモンは血液で運ばれ、微量で体の働きを調節する。
  • 下垂体は前葉・後葉、副腎は皮質・髄質、ランゲルハンス島はA細胞・B細胞で、分泌するホルモンが異なる。
  • ホルモンが作用する器官を標的器官、応答する細胞を標的細胞という。
  • 標的細胞は対応する受容体をもち、受容体をもたない細胞は同じホルモンに応答しない。
  • 血液が届く範囲と、ホルモンに応答する細胞の範囲は同じではない。
わや先生

ホルモンが全身をめぐっても、反応する細胞が限られる理由は説明できますか。

ビオップ

わかった! ホルモンが行き先を選ぶんじゃなくて、受容体をもつ標的細胞だけが受け取って応答するんだね。血液は広く、作用先は限定なんだ!

Plus|内分泌と外分泌は何が違う?

教科書から一歩先へ

内分泌では、ホルモンが血液中へ分泌されます。一方、消化液や汗のように、導管を通して体表や消化管内へ分泌するしくみを外分泌といいます。すい臓は、ホルモンを血液中へ出す内分泌と、消化液をすい管へ出す外分泌の両方を行う器官です。

参考資料

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