自律神経は体をどう調節する?交感神経と副交感神経の違い

活動時には交感神経の働きが強まり、瞳孔の拡大、心拍の促進、胃腸のぜん動の抑制が起こり、休息時には副交感神経の働きが強まって反対方向に調節される例を示す図 生物基礎
図1 活動時と休息時に見られる代表的な調節。状況によって働きの強さが変わり、片方だけが完全に停止するという意味ではない

緊張したとき、心臓の拍動は速くなる一方で、胃腸の動きは弱まります。この記事では、自律神経の二つの系を器官ごとに比較し、体の状態に応じた調節の読み方を整理します。

ビオップ

なんでなんで?! 緊張すると心臓は速くなるのに、おなかの動きは弱くなるの? 同じ体なのに、反応がバラバラじゃない?

わや先生

同じ神経系が、すべての器官を同じ方向へ動かすわけではありません。交感神経と副交感神経の作用を、器官ごとに比べてみましょう。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 自律神経系が何を調節する神経系か説明できる
  • 交感神経と副交感神経の作用を器官ごとに比較できる
  • 「拮抗的」の意味と、両方が分布しない器官もあることを説明できる
  • 複数の器官の変化から、どちらの働きが強まったか判断できる
この記事の位置づけ|生物基礎

神経系の全体像の記事で学んだ自律神経系を、交感神経と副交感神経に分けて詳しく扱います。活動電位、神経伝達物質、神経節などの詳しい仕組みは「生物」の内容なので、ここでは扱いません。

まず結論|作用は器官ごとに確かめる

自律神経による調節の基本

自律神経系は、交感神経と副交感神経からなります。交感神経は活動時や興奮時に、副交感神経は休息時に働きが強まりやすく、多くの器官を互いに反対方向へ調節します。ただし、すべての器官に両方が分布するわけではありません。

活動時には交感神経の働きが強まり、瞳孔の拡大、心拍の促進、胃腸のぜん動の抑制が起こり、休息時には副交感神経の働きが強まって反対方向に調節される例を示す図
図1 活動時と休息時に見られる代表的な調節。状況によって働きの強さが変わり、片方だけが完全に停止するという意味ではない

自律神経系は、意識とは無関係に器官を調節する

自律神経系は末梢神経系の一部です。心臓をつくる心筋、内臓をつくる平滑筋、血管、分泌腺などにつながり、心臓の拍動、血液循環、消化などを意識とは無関係に調節します。

「意識とは無関係」とは、中枢神経系と無関係という意味ではありません。自律神経系の調節には脳幹が関わり、間脳の視床下部は自律神経系と内分泌系をまとめる重要な部位です。脳幹の構成や脳死は前の記事で扱ったので、ここでは繰り返しません。

交感神経は活動時、副交感神経は休息時に強まりやすい

交感神経は、運動中、緊張時、驚いたときなど、体が活動へ備える場面で働きが強まりやすい神経です。心臓の拍動を促進し、気管支を拡張して、活動中の組織へ酸素などを届けやすくします。

一方、副交感神経は、休息時や食後などに働きが強まりやすい神経です。心臓の拍動を抑制し、胃腸のぜん動を促進します。

「活動」と「休息」は覚える入口

交感神経を「すべてを促進する神経」、副交感神経を「すべてを抑制する神経」と覚えるのは誤りです。胃腸のぜん動では、交感神経が抑制し、副交感神経が促進します。

代表的な作用を、器官ごとに比較する

自律神経の問題では、「交感だから促進」と先に決めず、どの器官の、どの働きかを確かめます。

瞳孔、心臓の拍動、気管支、胃腸のぜん動、排尿、立毛筋について、交感神経と副交感神経の代表的作用を比較した表
図2 交感神経と副交感神経の代表的な作用。作用の表現は器官ごとに読み、促進・抑制だけを一括して覚えない

瞳孔と気管支は「大きさ」が変わる

交感神経の働きが強まると、瞳孔は拡大し、気管支は拡張します。これは「器官が活発になった」という一語でまとめるより、広がるのか、縮むのかをそのまま押さえる方が正確です。

心臓と胃腸では、同じ系が逆方向に作用する

交感神経は心臓の拍動を促進しますが、胃腸のぜん動は抑制します。副交感神経では、その反対です。ここが、ビオップの最初の疑問への答えです。体全体を一括して速くしたり遅くしたりするのではなく、その状況に合うよう器官ごとに作用が異なります。

排尿では「ぼうこうの収縮」だけで判断しない

高校の表では、交感神経は排尿を抑制し、副交感神経は排尿を促進すると整理します。「排尿」という一連の働きについての表現なので、単純に「筋肉を収縮させる方が促進」と決めないようにします。

拮抗的とは、反対方向に調節すること

多くの器官には交感神経と副交感神経の両方が分布し、互いに反対方向へ作用します。このような関係を拮抗的(きっこうてき)といいます。

たとえば心臓の拍動に対して、交感神経は促進方向、副交感神経は抑制方向に働きます。体の状態に合わせて両者の働きの強さが変わることで、拍動の速さが調節されます。

心臓には交感神経と副交感神経が分布して拍動を反対方向に調節する一方、立毛筋には交感神経だけが分布する例を示す図
図3 多くの器官では両者が拮抗的に働くが、立毛筋のように副交感神経が分布しない例もある

ただし、「多くの器官」は「すべての器官」と同じではありません。立毛筋には交感神経が分布して収縮させますが、副交感神経は分布しません。表の「―」や「分布なし」は、作用が弱い、または抑制するという意味ではなく、神経が分布していないことを表します。

ビオップ

じゃあ、緊張しているときは交感神経だけがONで、副交感神経は完全にOFFなの?

わや先生

完全なON・OFFと考えない方がよいです。状況に応じて、どちらの働きが相対的に強いかが変わると捉えましょう。

資料では、複数の変化をまとめて判断する

一つの器官だけでなく、複数の変化を組み合わせると判断しやすくなります。

  1. 器官を確認する:瞳孔、心臓、胃腸など、何を観察しているか。
  2. 変化の向きを読む:拡大・縮小、促進・抑制のどちらか。
  3. 同じ系で説明できるか照合する:心拍の促進と胃腸ぜん動の抑制が同時なら、どちらも交感神経の作用と合う。
  4. 言いすぎを避ける:一時点の結果だけから、もう一方の神経が完全に停止したとは結論しない。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。過去問の転載ではありません。各問で最も適切なものを一つ選び、根拠を考えてから解答を開きましょう。

問1 複数の器官の変化をまとめる

ある人が突然大きな音を聞いた直後、瞳孔が拡大し、心臓の拍動が促進され、胃腸のぜん動が抑制されました。このときの説明として最も適切なものを選んでください。

  1. 交感神経の働きが相対的に強まったと考えられる。
  2. 副交感神経の働きが相対的に強まったと考えられる。
  3. 三つの器官の働きがすべて促進されたと考えられる。
  4. 自律神経系ではなく、骨格筋だけを調節する体性神経系の作用で説明できる。
問1の解答・考え方

正解:1。瞳孔の拡大、心臓の拍動の促進、胃腸のぜん動の抑制は、いずれも交感神経の代表的な作用と一致します。

ほかの選択肢:2は三つの変化と逆です。3は胃腸のぜん動が抑制されている点を見落としています。4は内臓の調節を体性神経系に分類した点が誤りです。

問2 神経P・Qを作用から見分ける

神経P・Qを刺激したときの代表的な作用を、次のように整理しました。

観察した働き 神経P 神経Q
心臓の拍動 促進 抑制
胃腸のぜん動 抑制 促進
確認問題用の独自資料。表が見切れる場合は、横にスクロールできます。

P・Qの組合せとして最も適切なものを選んでください。

  1. Pは交感神経、Qは副交感神経
  2. Pは副交感神経、Qは交感神経
  3. P・Qとも交感神経
  4. P・Qとも副交感神経
問2の解答・考え方

正解:1。心臓と胃腸の両方の作用を照合すると、Pは交感神経、Qは副交感神経です。一つの語だけでなく、二つの器官で同じ組合せになることを確かめます。

ほかの選択肢:2はPとQが逆です。3・4では、同じ種類の神経が正反対の作用を示すことになり、資料と本文の整理に合いません。

問3 「分布なし」を正しく読む

立毛筋について、交感神経は「収縮」、副交感神経は「分布なし」と示されていました。この資料から言えることとして最も適切なものを選んでください。

  1. 副交感神経が立毛筋を強く弛緩させる。
  2. 副交感神経が立毛筋を弱く収縮させる。
  3. すべての器官に交感神経と副交感神経の両方が分布するとは限らない。
  4. 立毛筋は自律神経系による調節を受けない。
問3の解答・考え方

正解:3。「分布なし」は、副交感神経の作用が弱いという意味ではなく、副交感神経がその器官に分布していないことを示します。

ほかの選択肢:1・2は、分布していない副交感神経に作用を当てはめた点が誤りです。立毛筋には交感神経が分布するため、4も誤りです。

問4 促進・抑制の覚え方を点検する

「交感神経は器官を促進し、副交感神経は器官を抑制する」という説明を修正したものとして、最も適切なものを選んでください。

  1. 交感神経は活動時に強まりやすいため、どの器官のどの働きも必ず促進する。
  2. 副交感神経は休息時に強まりやすいため、どの器官のどの働きも必ず停止させる。
  3. 作用の方向は器官によって異なり、胃腸のぜん動では交感神経が抑制し、副交感神経が促進する。
  4. 作用の方向は器官によって異なるため、交感神経と副交感神経を区別することはできない。
問4の解答・考え方

正解:3。活動時・休息時という整理は全体像をつかむ入口ですが、促進・抑制は器官ごとに確認する必要があります。

ほかの選択肢:1・2は「必ず」と一括した点が誤りです。4は、器官ごとの作用を比較すれば両者を区別できることを見落としています。

問5 「休息時」の意味を考える

食後に静かに休んでいる人では、運動中と比べて心臓の拍動が抑制され、胃腸のぜん動が促進されていました。この観察から言えることとして最も適切なものを選んでください。

  1. 副交感神経の働きが相対的に強い状態と考えられるが、交感神経が完全に停止したとは断定できない。
  2. 交感神経と副交感神経が、ともに完全に停止したと考えられる。
  3. 胃腸のぜん動が促進されたので、交感神経の働きが相対的に強いと考えられる。
  4. 自律神経は意識とは無関係に働くため、中枢神経系は調節に関わらない。
問5の解答・考え方

正解:1。二つの変化は副交感神経の代表的な作用と合います。ただし、この観察だけから交感神経の活動がゼロだと判断することはできません。

ほかの選択肢:2・3は観察と作用の対応が誤りです。4は「意識とは無関係」を「中枢と無関係」と取り違えています。

まとめ

  • 自律神経系は末梢神経系の一部で、意識とは無関係に内臓などを調節する。
  • 交感神経は活動時や興奮時、副交感神経は休息時に働きが強まりやすい。
  • 交感神経は心拍を促進する一方、胃腸のぜん動を抑制する。作用は器官ごとに確認する。
  • 多くの器官で両者は拮抗的に働くが、すべての器官に両方が分布するわけではない。
  • 資料では、器官、変化の向き、複数の変化の一致を順に確かめる。
わや先生

緊張したとき、心臓と胃腸が違う方向へ変化する理由を説明できそうですか。

ビオップ

うん! 交感神経は体全部を同じように速くするんじゃなくて、活動に合うように心拍は促進し、胃腸のぜん動は抑制するんだね。器官ごとに作用を見るのが大事なんだ!

Plus|「自律神経のバランス」という表現をどう読む?

教科書から一歩先へ

日常では「自律神経のバランスが乱れた」という表現を見かけます。ここでいうバランスは、交感神経と副交感神経がいつも同じ強さで働くことではありません。活動中、食後、睡眠中など、状況に合うよう両者の働きの強さが変わることが重要です。

また、動悸、眠気、胃腸の不調などにはさまざまな原因があります。症状だけから自律神経の状態を決めたり、この記事を診断の代わりに使ったりすることはできません。

参考資料

次に読む記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました