翻訳とは?遺伝暗号表からアミノ酸配列を求める

アミノ酸をもつtRNAが右からリボソームへ入り、アミノ酸を渡したtRNAが左へ出る翻訳の図 生物基礎
tRNAは右からリボソームへ入り、アミノ酸を渡した後は左へ出ていく

mRNAに並ぶA・U・G・Cは、4種類の塩基です。タンパク質の材料になるアミノ酸は、基本的に20種類です。塩基の並びとアミノ酸の並びは、どのような規則で結び付いているのでしょうか。

ビオップ

なんでなんで?! mRNAのAUGを見たら、リボソームがアルファベットをアミノ酸へ翻訳してくれるの?

わや先生

mRNAは3塩基ずつ読まれます。その三つ組に対応するアミノ酸をtRNAが運び、リボソームが順番につなぎます。この情報の読み替えが翻訳です。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 翻訳・コドン・遺伝暗号を説明できる
  • mRNA・tRNA・リボソームの役割を区別できる
  • 遺伝暗号表からアミノ酸配列を求められる
  • 開始コドン・終止コドンを含む塩基数の問題を解ける
この記事の位置づけ

前の記事で、DNAの情報からmRNAがつくられる転写を学びました。この記事では、核外へ移動したmRNAの塩基配列が、細胞質のリボソームでアミノ酸配列へ読み替えられる過程を扱います。

翻訳はmRNAをアミノ酸配列へ読み替える過程

翻訳とは、mRNAの塩基配列をもとに、アミノ酸を決められた順番につなぐ過程です。真核細胞では、翻訳は核外の細胞質にあるリボソームで行われます。リボソームはrRNA(リボソームRNA)とタンパク質から構成され、mRNAとtRNAを適切な位置に並べます。

リボソームはmRNAの塩基を、決められた位置から3個ずつ読みます。3個の塩基からなる一組をコドンといいます。

翻訳で変換される情報

mRNAの塩基配列 → タンパク質のアミノ酸配列

DNAやmRNAそのものがアミノ酸へ変化するのではありません。塩基の並びがもつ情報を使って、別の材料であるアミノ酸を並べます。

アミノ酸をもつtRNAが右からリボソームへ入り、アミノ酸を渡したtRNAが左へ出る翻訳の図
図1 tRNAは右からリボソームへ入り、アミノ酸を渡した後は左へ出ていく

コドンと遺伝暗号

一つのコドンは、特定のアミノ酸を指定するか、翻訳の開始・終了に関わります。コドンとアミノ酸などとの対応関係を遺伝暗号といいます。

mRNAにはA・U・G・Cの4種類の塩基があります。3塩基の並び方は、4×4×4=64通りです。標準的な遺伝暗号では、このうち61種類が20種類のアミノ酸を指定し、残る3種類は終止コドンです。そのため、同じアミノ酸を複数のコドンが指定する場合があります。

遺伝暗号表

遺伝暗号表は、mRNAのコドンと、それぞれが指定するアミノ酸との対応をまとめた表です。次の表では、第1塩基を左端で選び、第2塩基の列へ進み、各欄に並ぶコドンの第3塩基まで確認します。

第1塩基 第2塩基 U 第2塩基 C 第2塩基 A 第2塩基 G
U UUU フェニルアラニン
UUC フェニルアラニン
UUA ロイシン
UUG ロイシン
UCU セリン
UCC セリン
UCA セリン
UCG セリン
UAU チロシン
UAC チロシン
UAA 終止
UAG 終止
UGU システイン
UGC システイン
UGA 終止
UGG トリプトファン
C CUU ロイシン
CUC ロイシン
CUA ロイシン
CUG ロイシン
CCU プロリン
CCC プロリン
CCA プロリン
CCG プロリン
CAU ヒスチジン
CAC ヒスチジン
CAA グルタミン
CAG グルタミン
CGU アルギニン
CGC アルギニン
CGA アルギニン
CGG アルギニン
A AUU イソロイシン
AUC イソロイシン
AUA イソロイシン
AUG メチオニン(開始)
ACU スレオニン
ACC スレオニン
ACA スレオニン
ACG スレオニン
AAU アスパラギン
AAC アスパラギン
AAA リシン
AAG リシン
AGU セリン
AGC セリン
AGA アルギニン
AGG アルギニン
G GUU バリン
GUC バリン
GUA バリン
GUG バリン
GCU アラニン
GCC アラニン
GCA アラニン
GCG アラニン
GAU アスパラギン酸
GAC アスパラギン酸
GAA グルタミン酸
GAG グルタミン酸
GGU グリシン
GGC グリシン
GGA グリシン
GGG グリシン
mRNAの64種類のコドンと、指定されるアミノ酸・終止の対応
遺伝暗号表を丸暗記する必要はない

遺伝暗号表は、基本的に問題文と一緒に示されます。64種類の対応をすべて覚えるのではなく、mRNAの第1塩基・第2塩基・第3塩基を順にたどって読み取る方法を身に付けましょう。開始コドンと終止コドンの扱いは、問題でよく確認されます。

開始コドン

翻訳を開始する位置の目印となるコドンを開始コドンといいます。基本的な問題ではAUGを開始コドンとして扱います。AUGはメチオニンというアミノ酸も指定します。

終止コドン

翻訳を終了させるコドンを終止コドンといいます。基本的な遺伝暗号では、UAA・UAG・UGAの3種類です。

終止コドンはアミノ酸を指定しない

終止コドンに対応するアミノ酸やtRNAはありません。アミノ酸数を数えるとき、終止コドンを一つのアミノ酸として数えないようにします。

tRNAはコドンに対応するアミノ酸を運ぶ

tRNAは、特定のアミノ酸をリボソームへ運ぶRNAです。tRNAには、mRNAのコドンと相補的に結合する3塩基の部分があり、これをアンチコドンといいます。

たとえば、mRNAのコドンがGCUなら、対応するtRNAのアンチコドンはCGAです。コドンとアンチコドンの塩基は相補的に結合し、このtRNAはアラニンを運びます。

mRNAのコドンと、tRNA上のアンチコドンの位置およびアミノ酸の対応を示す図
図2 tRNA上の3塩基からなるアンチコドンが、mRNAのコドンと相補的に結合する

リボソームで翻訳が進む三段階

  1. 開始:リボソームがmRNAと結合し、開始コドンから翻訳を始める。
  2. 伸長:次のアミノ酸を運ぶtRNAが順番に入り、アミノ酸同士がつながる。
  3. 終結:リボソームが終止コドンへ到達すると、完成した鎖が放出される。

アミノ酸が長くつながった鎖をポリペプチドといいます。ポリペプチドは折りたたまれ、必要に応じた変化を受けて、機能をもつタンパク質になります。

遺伝暗号表を読む手順

  1. mRNA配列を用意する:DNA配列やtRNAのアンチコドンをそのまま読まない。
  2. 開始位置を確認する:問題文の指定や開始コドンを確認する。
  3. 3塩基ずつ区切る:読み枠を途中でずらさない。
  4. 遺伝暗号表を引く:第1塩基、第2塩基、第3塩基の順にたどる。
  5. 終止で止める:終止コドンはアミノ酸数に含めない。
mRNAのコドンを第1塩基から順にたどって遺伝暗号表を読む方法を示す図
図3 遺伝暗号表ではmRNAの3塩基を順にたどり、GCUがアラニンを指定すると読み取る
配列を読んでみよう

mRNA:AUG-GCU-AAA-UGA

  • AUG:メチオニン・開始
  • GCU:アラニン
  • AAA:リシン
  • UGA:終止

したがって、指定されるアミノ酸配列はメチオニン-アラニン-リシンです。終止コドンUGAはアミノ酸に含めません。

ビオップ

mRNAが30塩基なら、3で割ってアミノ酸10個! これは毎回使える必勝法?

わや先生

問題文の30塩基が、どの範囲を指すかによります。終止コドンや翻訳されない領域を含むなら、単純に10個とは限りません。

塩基数とアミノ酸数の問題

「すべての塩基がアミノ酸を指定する範囲に含まれる」と明示されていれば、塩基数を3で割ります。ただし、開始コドンから終止コドンまでを数え、終止コドンを含む場合は、コドン数から1を引いた値がアミノ酸数になります。

終止コドンを含む計算例

開始コドンの先頭から終止コドンの末尾までが903塩基なら、903÷3=301コドンです。そのうち1コドンは終止コドンなので、指定されるアミノ酸は300個です。

mRNAにも、アミノ酸配列へ読み替えられない領域があります。そのため、mRNA全体の塩基数と、開始コドンの先頭から終止コドンの末尾までの塩基数は区別します。計算するときは、問題文で指定された範囲を確認しましょう。

途中に終止コドンが生じたら

塩基の変化によって、アミノ酸を指定していたコドンが終止コドンへ変わることがあります。すると翻訳が予定より早く終わり、通常より短いポリペプチドができる可能性があります。

変化の影響は順番に考える

mRNAの塩基変化 → コドンの変化 → アミノ酸配列や長さの変化 → タンパク質の構造・働きへの影響という順に追います。塩基が変化しても同じアミノ酸を指定する場合もあるため、必ず遺伝暗号表で確認します。

共通テストでは範囲と単位を確認する

  1. 示された配列はDNA・mRNA・tRNAのどれか
  2. 遺伝暗号表で読むのはmRNAか
  3. 塩基数、コドン数、アミノ酸数のどれを求めるか
  4. 開始コドン・終止コドンを含むか
  5. 途中で読み枠や終止位置が変化していないか

確認問題

問1 翻訳とは何ですか。
解答例:mRNAの塩基配列をリボソームが読み取り、対応するアミノ酸を順番につなぐ過程です。
問2 コドンとアンチコドンの違いを答えてください。
解答:コドンはmRNA上の3塩基の組、アンチコドンはtRNA上にありコドンと相補的に結合する3塩基の部分です。
問3 次の遺伝暗号表を使って答えよう

次のmRNAの先頭のAUGから翻訳が始まるとします。AUG-UUU-GGA-UAC-UAGが指定するアミノ酸配列を答えてください。第1塩基を左端から選び、第2塩基の列へ進んだあと、第3塩基まで確かめましょう。

第1塩基 第2塩基 U 第2塩基 C 第2塩基 A 第2塩基 G
U UUU フェニルアラニン
UUC フェニルアラニン
UUA ロイシン
UUG ロイシン
UCU セリン
UCC セリン
UCA セリン
UCG セリン
UAU チロシン
UAC チロシン
UAA 終止
UAG 終止
UGU システイン
UGC システイン
UGA 終止
UGG トリプトファン
C CUU ロイシン
CUC ロイシン
CUA ロイシン
CUG ロイシン
CCU プロリン
CCC プロリン
CCA プロリン
CCG プロリン
CAU ヒスチジン
CAC ヒスチジン
CAA グルタミン
CAG グルタミン
CGU アルギニン
CGC アルギニン
CGA アルギニン
CGG アルギニン
A AUU イソロイシン
AUC イソロイシン
AUA イソロイシン
AUG メチオニン(開始)
ACU スレオニン
ACC スレオニン
ACA スレオニン
ACG スレオニン
AAU アスパラギン
AAC アスパラギン
AAA リシン
AAG リシン
AGU セリン
AGC セリン
AGA アルギニン
AGG アルギニン
G GUU バリン
GUC バリン
GUA バリン
GUG バリン
GCU アラニン
GCC アラニン
GCA アラニン
GCG アラニン
GAU アスパラギン酸
GAC アスパラギン酸
GAA グルタミン酸
GAG グルタミン酸
GGU グリシン
GGC グリシン
GGA グリシン
GGG グリシン
問3で使用する完全な遺伝暗号表。mRNAの塩基配列を第1・第2・第3塩基の順にたどる
解答を見る
解答:メチオニン-フェニルアラニン-グリシン-チロシンです。

  • AUG:メチオニン(開始)
  • UUU:フェニルアラニン
  • GGA:グリシン
  • UAC:チロシン
  • UAG:終止

終止コドンUAGはアミノ酸を指定しないので、アミノ酸は4個です。

問4 mRNAのコドンUUCの直下に、対応するアンチコドンの3塩基を並べてください。
解答:AAGです。mRNAのU・U・Cに対して、tRNAのA・A・Gがそれぞれ相補的に並びます。
問5 開始コドンの先頭から終止コドンの末尾まで606塩基あり、終止コドンを1個含むとき、指定されるアミノ酸は何個ですか。
解答:201個です。606÷3=202コドンから、アミノ酸を指定しない終止コドン1個を引きます。
問6 あるコドンが塩基変化によって終止コドンになりました。タンパク質へどのような影響が生じる可能性がありますか。
解答例:翻訳が途中で終了し、通常より短いポリペプチドができ、タンパク質の立体構造や働きが変化する可能性があります。

まとめ

この記事のまとめ

  • 翻訳は、mRNAの塩基配列をアミノ酸配列へ読み替える過程である。
  • mRNAの3塩基の組をコドンという。このうち、アミノ酸を指定するコドンがtRNAのアンチコドンと相補的に結合する。
  • tRNAはアミノ酸を運び、リボソームがアミノ酸をつなぐ。
  • AUGは基本的な開始コドン、UAA・UAG・UGAは終止コドンである。
  • 遺伝暗号表はmRNAの第1・第2・第3塩基を順にたどって読み、終止コドンはアミノ酸数に含めない。
わや先生

リボソームだけで、必要なアミノ酸を集められましたか。

ビオップ

tRNAがコドンに合うアミノ酸を運ぶんだね! リボソームがmRNAを3塩基ずつ読み、終止コドンまでつないでいく。これが翻訳だ!

Plus|遺伝暗号は「ほぼ共通」

教科書から一歩先へ

多くの生物で、同じコドンは同じアミノ酸を指定します。この遺伝暗号の共通性は、生物が共通の祖先をもつことを考える手掛かりの一つです。

ただし、ミトコンドリアなどでは一部のコドンの意味が異なる例があります。また、一つのアミノ酸を複数のコドンが指定することを、遺伝暗号の縮重といいます。通常、一つのコドンが複数の異なるアミノ酸を同時に指定するわけではありません。

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