生物に共通する特徴とは?「生きている」を3つの視点で考える

細胞、DNA、エネルギー利用という生物に共通する三つの特徴を示す図 生物基礎
図1 生物に広く見られる三つの共通性

生物を「動くもの」と定義すると、自分では移動しない植物を説明できません。反対に、自動車は動きますが生物ではありません。見た目や動きではなく、細胞の中で共通して働く仕組みから、生物らしさを整理しましょう。

ビオップ

なんでなんで?! 植物は歩かないし、種はじっとしているよ。それでも生物だとわかるのはどうして?

わや先生

一つの行動で決めるのではなく、すべての生物に受け継がれている細胞・遺伝情報・代謝の仕組みを見ます。共通テストでは「本当にすべての細胞に当てはまるか」を区別できることが重要です。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 生物の共通性を、細胞・DNA・代謝から説明できる
  • すべての細胞に共通する構造と、真核細胞だけがもつ構造を区別できる
  • 光合成と呼吸が同じ細胞で行われる場合を説明できる
  • グラフに表れた気体の出入りを、複数の反応の差として読める
この記事の位置づけ

この記事は、生物の共通性を見渡す入口です。塩基配列・遺伝子・ゲノム、光合成・呼吸は、この段階では『細胞が情報とエネルギーを扱う仕組み』として概要をつかめば十分です。詳しい仕組みは、それぞれを主題にした後の記事で学びます。

まず結論

生物を支える三つの共通性

  1. 細胞を基本単位とする
  2. 遺伝物質としてDNAをもち、情報を受け継ぐ
  3. 代謝によって物質とエネルギーを変換し、ATPを生命活動に利用する

この三つは、生物を学ぶための基本的な見方です。ただし、短い条件だけで未知の物体を例外なく生物・非生物に分けられる、という意味ではありません。

細胞、DNA、代謝とATPという生物の三つの共通性を示す図
図1 生物の多様な姿の奥にある共通の仕組み

共通性1 細胞を基本単位とする

細胞は、生物の体をつくり、生命活動を行う基本単位です。大腸菌のように一つの細胞で生活する単細胞生物も、ヒトのように多数の細胞が役割分担する多細胞生物も、細胞を基本とする点では共通します。

さらに、原核細胞と真核細胞のどちらにも、次のものがあります。

すべての細胞に共通するもの 主な役割
細胞膜 細胞の内側と外側を隔て、物質の出入りに関わる
細胞質 さまざまな化学反応が行われる場を含む
DNA 遺伝情報を担う
RNA 遺伝情報の発現などに働く
リボソーム タンパク質を合成する
酵素 細胞内の化学反応を進める
「細胞に共通するもの」を選ぶときの基準
共通テストで狙われる境界

核・ミトコンドリア・葉緑体は、すべての細胞にあるわけではありません。これらは膜に包まれた構造で、原核細胞にはありません。一方、リボソームは膜に包まれていないため、原核細胞にもあります。

共通性2 DNAの情報を使い、受け継ぐ

生物は遺伝物質としてDNAをもちます。DNAをつくる四種類の塩基の並びを塩基配列といい、その一部にはRNAやタンパク質をつくるための情報があります。このように、形質に関わる遺伝情報をもつDNA上の領域が遺伝子です。

一つの生物がもつ遺伝情報の一組全体をゲノムといいます。真核細胞では、DNAはタンパク質とともに染色体をつくります。細胞分裂の前にはDNAが複製され、基本的に同じ情報が二つの細胞へ分配されます。

ヒトでは、神経細胞と筋細胞は形も働きも違いますが、同じ個体に由来する体細胞は原則として同じゲノムをもちます。違いが生じる主な理由は、細胞ごとに働く遺伝子の組合せが異なるためです。

情報が働く基本の流れ

DNA → RNA → タンパク質

DNAを「体を直接つくる材料」と考えるのではなく、必要な分子をつくるための情報を保存する物質と捉えます。

ここは少し先取り

ここでは、DNAの塩基配列が遺伝情報を担うことを押さえましょう。DNA・遺伝子・染色体・ゲノムの関係は「DNA・遺伝子・染色体・ゲノムの違い」で、転写と翻訳の全体像は「遺伝情報はどうタンパク質になる?」で整理します。

共通性3 代謝を行い、ATPを利用する

生体内で起こる化学反応全体を代謝といいます。代謝は、単純な物質から複雑な物質を合成する同化と、複雑な物質を分解する異化に分けられます。これらの反応は、多くの場合、特定の反応を促進する酵素によって進められます。

生命活動で直接使いやすい形のエネルギーを受け渡す物質がATPです。筋肉の収縮、物質の能動輸送、物質合成などでは、ATPがADPとリン酸に分解されるときに放出されるエネルギーが利用されます。

  • 光合成:光エネルギーを利用して、二酸化炭素などから有機物を合成する同化
  • 呼吸:有機物を分解し、そのエネルギーの一部をATPに蓄える異化
ビオップ

なんでなんで?! 植物は光合成でエネルギーを手に入れるんでしょ? それなら呼吸はいらないんじゃないの?

わや先生

光合成でつくった有機物のエネルギーを、生命活動に直接使いやすいATPへ受け渡すのが呼吸です。光合成を行う葉の細胞でも呼吸は昼夜を通して行われます。

「気体の出入り」は反応の差として読む

明るい場所に置いた葉が二酸化炭素を吸収していても、「呼吸をしていない」とは限りません。光合成による二酸化炭素の吸収量が、呼吸による放出量より多いと、外からは差し引きで吸収しているように見えます。

条件 光合成 呼吸 外から観察される二酸化炭素
明所 行われる 行われる 二つの反応の差
暗所 基本的に停止する 行われる 主に呼吸による放出
見かけの気体交換から、細胞内の反応を考える

また、植物のすべての細胞が光合成するわけではありません。光合成は、葉肉細胞など葉緑体が発達した細胞で行われます。根の多くの細胞など、葉緑体をもたない植物細胞もあります。

確認問題

問1 原核細胞と真核細胞の両方にあるものを、核・細胞膜・ミトコンドリア・リボソームからすべて選んでください。
解答:細胞膜とリボソーム。核とミトコンドリアは原核細胞にはありません。
問2 遺伝子とゲノムの違いを説明してください。
解答例:遺伝子は形質に関わる情報をもつDNA上の領域、ゲノムは一つの生物がもつ遺伝情報の一組全体です。
問3 同じ人の神経細胞と筋細胞が異なる働きをするのは、まったく別のゲノムをもつからですか。
解答:いいえ。原則として同じゲノムをもちますが、働く遺伝子の組合せが異なるため、つくられるタンパク質や細胞の働きが違います。
問4 光合成と呼吸を、同化・異化の語を使って分類してください。
解答:光合成は無機物から有機物を合成する同化、呼吸は有機物を分解する異化です。
問5 明所で葉が二酸化炭素を吸収していました。「呼吸は行われていない」と結論できますか。
解答:結論できません。光合成と呼吸が同時に進み、光合成による吸収量が呼吸による放出量を上回っている可能性があります。
問6 すべての植物細胞が光合成を行う、という説明が正しくない理由を答えてください。
解答例:根の多くの細胞など、葉緑体をもたない植物細胞もあるためです。

まとめ

この記事のまとめ

  • 生物は細胞を基本単位とし、DNAの情報を受け継ぎ、代謝を行う。
  • すべての細胞には、細胞膜・細胞質・DNA・RNA・リボソーム・酵素などがある。
  • 核・ミトコンドリア・葉緑体は、すべての細胞に共通する構造ではない。
  • ATPは生命活動におけるエネルギーの受け渡しに使われる。
  • 光合成を行う細胞も呼吸を行い、見かけの気体交換は両反応の差として表れる。
わや先生

最初の疑問に戻ると、生物らしさは「動く」という一つの見た目ではなく、細胞の中で情報とエネルギーを扱う共通の仕組みに表れます。

ビオップ

なるほど! じっとしていても、細胞の中ではDNAの情報を使って、酵素が働いて、ATPを使う反応が進んでいるんだ。動きだけで決めちゃダメなんだね!

Plus|ウイルスは生物なのか

教科書から一歩先へ

ウイルスはDNAまたはRNAを遺伝物質としてもちますが、細胞構造をもたず、単独ではタンパク質合成や増殖を行えません。宿主細胞の仕組みを利用して増殖するため、生物と非生物の境界にある存在として扱われます。

「生物か非生物か」という結論だけでなく、細胞・遺伝情報・代謝のうち、何を自ら備え、何を宿主に依存するのかを比べることが大切です。

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