進化とは?個体の成長との違いと遺伝子頻度の考え方

集団の遺伝的な構成が、世代を重ねて変化する進化の模式図。記号は遺伝する特徴の違いを表す。 生物
図1 集団の遺伝的な構成が、世代を重ねて変化する進化の模式図。記号は遺伝する特徴の違いを表す。

「進化」という言葉は、日常生活でもよく使われます。しかし、生物学でいう進化は、体が大きくなったり、能力が上がったりすることと同じではありません。個体と集団、1世代と世代を重ねた変化を区別して考えましょう。

ビオップ

なんでなんで?! 小さかった生き物が大きくなるのも、進化っていうの?

わや先生

何が、どの時間の幅で変わったのかに注目しましょう。1個体の変化と、親から子へ世代を重ねた集団の変化を比べます。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 成長と進化を、変化する対象の違いから説明する
  • 遺伝子型と表現型を区別する
  • 個体数から対立遺伝子の頻度を求める
この記事の位置づけ:高校「生物」

生物基礎で学んだ「遺伝情報が子へ伝わる」ことを土台に、集団の遺伝的な構成へ視点を広げます。対立遺伝子や遺伝子頻度は、高校「生物」で進化の仕組みを理解するための内容です。

まず結論

ここを押さえよう

進化は、集団の遺伝的な性質が世代を重ねる中で変化することです。身長が伸びるような個体の成長とは区別します。集団の変化を数量で捉える入口が、遺伝子頻度です。

進化で変わるのは、世代を重ねた集団

生物がもつ形や性質を形質といいます。同じ種でも、体色や大きさなどには個体差があります。このような個体間の形質の違いが変異です。変異には遺伝的な違いによるものも、栄養や温度など環境の影響によるものもあります。

進化を考える際には、子へ受け継がれる遺伝的な違いに注目します。例えば、遺伝する体色の異なる昆虫が同じ集団におり、世代を重ねると、ある体色に関わる遺伝子が多くなったとします。このような集団の遺伝的な構成の変化が、進化を捉える手がかりです。

1匹が別の色に変身するのではなく、世代を重ねる中で、集団に含まれる遺伝的な違いの割合が変わります。見た目が大きく変わらなくても、DNAの違いの割合が変わることがあります。

集団の遺伝的な構成が、世代を重ねて変化する進化の模式図。記号は遺伝する特徴の違いを表す。
図1 集団の遺伝的な構成が、世代を重ねて変化する進化の模式図。記号は遺伝する特徴の違いを表す。(タップで拡大)

ここでいう集団は、同じ場所で暮らし、互いに交配して次世代をつくる同種の個体のまとまりを想定しています。昆虫と植物を一緒に数えた生態系全体の割合ではありません。集団の範囲をそろえないと、別の場所から来た個体が混じっただけの違いと、世代を通じた変化を比べにくくなります。

また、変異があること自体と進化が起きたことも区別します。ある世代に複数の体色が見られるのは変異の存在です。それがどのように受け継がれ、集団の遺伝的な構成が変わったかを調べることで、進化の問題になります。図の左右を読むときも、記号の種類だけでなく、世代と割合を合わせて見ましょう。

遺伝子型と表現型を整理する

ここからは、二倍体の生物の常染色体上にある、1か所の遺伝子に絞って考えます。二倍体とは、基本となる染色体の組を2組もつことです。片方の組は母親から、もう片方は父親から受け継ぎます。常染色体は、性染色体以外の染色体です。

遺伝子が染色体上で占める位置を遺伝子座といい、同じ遺伝子座にある遺伝子の異なる型を対立遺伝子(アレル)といいます。2種類の対立遺伝子をA、aと表すと、個体がもつ組合せはAA、Aa、aaの3通りです。この組合せが遺伝子型です。

AAやaaのように同じ対立遺伝子をもつものをホモ接合体、Aaのように異なる対立遺伝子をもつものをヘテロ接合体といいます。一方、実際に現れる体色などの特徴は表現型です。

ここではAがaに対して完全に顕性で、AAとAaが同じ表現型を示す場合を考えます。したがって、見た目が同じだからといって、遺伝子型まで同じとは限りません。なお、顕性・潜性は、ヘテロ接合体でどちらの形質が現れるかに関する用語です。優れている・劣っているという意味ではありません。

相同染色体の同じ遺伝子座にあるAとa、遺伝子型AA・Aa・aa、種子の色の対応。Aがaに対して顕性である単純な例では、AAとAaが同じ黄色になる。
図2 相同染色体の同じ遺伝子座にあるAとa、遺伝子型AA・Aa・aa、種子の色の対応。Aがaに対して顕性である単純な例では、AAとAaが同じ黄色になる。(タップで拡大)

図は、種子の色を決める1つの遺伝子座について、Aがaに対して顕性である単純な例です。母親と父親から1本ずつ受け継いだ、形や遺伝子座の並びが対応する染色体を相同染色体といいます。まず、縦長の棒2本をその対として見ます。印のある高さが同じなのは、対応する遺伝子座だからです。印の位置が同じでも、そこにある対立遺伝子はAとaのように異なる場合があります。

次に、2本の棒から文字を1つずつ読みます。AAはAを2個、AaはAとaを1個ずつ、aaはaを2個もつ組合せです。最後に下の種子を見ると、AAとAaは同じ黄色、aaは緑色になっています。「遺伝子型3種類に対して、表現型は2種類」という対応を確かめてください。

Aaでaが消えたわけではありません。表現型として現れていなくても、aはDNAの一部として存在し、配偶子を通じて子へ伝わりえます。「潜性だから存在しない」「顕性だから集団中で多数」と考えるのは誤りです。顕性・潜性と、数の多い・少ないは別の関係です。

なお、すべての形質がこの図のように1つの遺伝子座だけで決まるわけではありません。複数の遺伝子や環境が関わる形質もあります。この例では、遺伝子型と表現型の違いを見分けるため、条件を単純化しています。

遺伝子頻度は「個体」ではなく「対立遺伝子」を数える

ある遺伝子座について、集団中の対立遺伝子全体に占める特定の対立遺伝子の割合を遺伝子頻度といいます。「頻度」は、ここでは出現する割合のことです。0.6なら全体の60%を意味します。

100個体の集団にAAが36個体、Aaが48個体、aaが16個体いたとします。各個体は、この遺伝子座の対立遺伝子を2個ずつもちます。数える対象の総数は、100ではなく100×2=200個です。

AAが36個体、Aaが48個体、aaが16個体の集団で、Aの頻度を数える例。対象は二倍体の常染色体上の1遺伝子座。
図3 AAが36個体、Aaが48個体、aaが16個体の集団で、Aの頻度を数える例。対象は二倍体の常染色体上の1遺伝子座。(タップで拡大)

AAの1個体からAを2個、Aaの1個体からAを1個数えます。したがって、Aは36×2+48=120個で、Aの頻度は120÷200=0.6です。同様に、aは16×2+48=80個なので、その頻度は0.4です。Aとaしかないため、両者の頻度の和は1になります。

AAの割合36%と、Aの頻度60%は別の値です。分母が個体数なのか、対立遺伝子の総数なのかを確かめます。また、Aをもつ個体はAAとAaを合わせた84個体ですが、84÷100もAの頻度ではありません。

この計算の前提

二倍体の常染色体上の1遺伝子座を扱っています。性染色体上の遺伝子や倍数性が異なる生物では、1個体につき必ず2個とは限りません。問題文の条件を優先しましょう。

式にまとめると、Aの頻度=(AAの個体数×2+Aaの個体数)÷(全個体数×2)です。暗記する前に、分子の「2」がAAの各個体にAが2個あるため、分母の「2」が全個体に対象の対立遺伝子が2個ずつあるためだと説明できるようにします。

計算後には、Aとaをそれぞれ数え、その合計が全個体数の2倍になっているかを確認できます。この例なら120+80=200です。さらに頻度は0以上1以下、Aとaの頻度の合計は1になります。これらに合わなければ、Aaを2回足していないか、分母を100にしていないかを見直しましょう。

成長や環境への反応とは、どこが違う?

個体の成長と、遺伝する特徴の割合が世代を通じて変化する進化との比較。
図4 個体の成長と、遺伝する特徴の割合が世代を通じて変化する進化との比較。(タップで拡大)

苗が大きな植物になるのは、個体の成長です。また、同じ遺伝子型でも、光や栄養条件によって葉の大きさなどが変わる場合があります。こうした1個体の変化だけでは、集団が遺伝的に進化したとはいえません。

進化の資料を読むときは、①世代をまたいでいるか、②変化に遺伝的な違いが関わるか、③集団の構成がどう変化したか、という順に確かめます。見た目の変化の大きさだけで判断しないことが大切です。

進化は「必ず複雑になる」「必ず強くなる」という一方向の変化ではありません。ある環境で有利な特徴が、別の環境でも有利とは限りません。また、偶然によって遺伝子頻度が変化する場合もあります。なぜ割合が変わるのかは、自然選択と遺伝的浮動の記事で詳しく扱います。

例えば、同じ遺伝子型の植物を日当たりのよい場所と日陰で育て、葉の厚さに違いが出たとします。この比較は、環境が表現型へ与える影響を考える材料になります。一方、別の世代の植物を同じ環境で育てても違いが残るなら、遺伝的な違いの関与を調べる手がかりになります。

ただし、「同じ環境で違った」だけですべての原因が確定するわけではありません。親が受けた環境の影響なども考え、世代を重ねて比較することがあります。まずは、育った条件をそろえて比較するという実験の考え方を押さえましょう。

同じ遺伝子頻度でも、個体の組合せは違う

AAが50個体、aaが50個体の集団では、Aもaも100個ずつです。Aaが100個体の集団でも、Aとaは100個ずつあります。どちらもAの頻度は0.5ですが、ヘテロ接合体の割合は0%と100%で異なります。

つまり、遺伝子頻度だけから遺伝子型の割合を自由に決めることはできません。後の記事では、一定の条件を満たすときに両者を結びつけるハーディ・ワインベルグの法則を学びます。

Aとaの頻度がそれぞれ0.5でも、AA・aaからなる集団Xと、Aaだけの集団Yでは遺伝子型の構成が異なる。個体の記号は一部を省略している。
図5 Aとaの頻度がそれぞれ0.5でも、AA・aaからなる集団Xと、Aaだけの集団Yでは遺伝子型の構成が異なる。個体の記号は一部を省略している。(タップで拡大)

図の集団Xでは、AはAAの個体に2個ずつまとまっています。集団Yでは、Aが各個体に1個ずつ分かれています。Aをばらばらに取り出して数えると同じ100個でも、個体という袋への入れ方が異なるわけです。

もしAが顕性なら、Xでは顕性の表現型が50%、Yでは100%になります。このことからも、遺伝子頻度・遺伝子型の割合・表現型の割合の3つを分けて読む必要が分かります。問題文で求められているのがどの値なのか、計算を始める前に言葉で確認しましょう。

資料が体色の写真だけなら、AaとAAを見分けられない場合があります。そのときは、子に現れる形質やDNAの解析など、遺伝子型を区別できる別の情報が必要です。写真で黄色い種子を数えた割合を、そのままAの遺伝子頻度と置き換えてはいけません。何を観察して得たデータかを確認することが、進化を資料から考える出発点です。

確認問題

以下は、この記事の内容をもとに作成したオリジナル問題です。まず自分で考え、解答で根拠を確かめましょう。

問1

進化を示す例として最も適当なものを選べ。

  1. 1本の木の幹が、1年間で太くなった。
  2. 運動を続けた個体の筋肉が発達した。
  3. 集団中のある対立遺伝子の頻度が、世代を重ねて変化した。
  4. 栄養の少ない場所で育った個体の体が小さかった。
問1の解答・考え方

3。1は成長、2と4は個体が受けた環境などの影響であり、それだけでは集団の遺伝的な世代変化を示しません。

問2

二倍体100個体の集団で、常染色体上の1遺伝子座の遺伝子型を調べたところ、AAが20個体、Aaが60個体、aaが20個体であった。Aの頻度を求めよ。

問2の解答・考え方

0.5。Aの数は20×2+60=100個、対立遺伝子の総数は100×2=200個です。100÷200=0.5となります。

問3

Aがaに対して顕性であり、AAとAaは同じ表現型を示すとする。表現型だけを観察して、AAとAaを区別できるか。理由とともに答えよ。

問3の解答・考え方

区別できない。同じ表現型に2種類の遺伝子型が含まれるためです。見た目の個体数を、そのままAAの個体数とみなすことはできません。

問4

集団XはAAが50個体、aaが50個体、集団YはAaが100個体からなる。この遺伝子座について、Aの頻度とAaの個体の割合をそれぞれ求めよ。

問4の解答・考え方

Aの頻度はXもYも0.5。Aaの割合はXが0、Yが1です。対立遺伝子の割合が同じでも、それらが個体内でどう組み合わさっているかは異なります。

問5

ある植物の集団で平均草丈が前年より高くなった。この結果だけで進化したと結論してよいか。追加で確認すべきことを1つ挙げて説明せよ。

問5の解答・考え方

結論できない。例えば、栄養や日照の違いによる変化ではないか、同じ条件で育てた子孫にも遺伝的な違いが認められるかを調べます。平均値の変化だけでは原因を特定できません。

まとめ

学習のチェック

  • 進化は、集団の遺伝的な性質が世代を重ねて変化すること。
  • 遺伝子型は対立遺伝子の組合せ、表現型は実際に現れる特徴。
  • 遺伝子頻度の分母は、対象とする対立遺伝子の総数。
わや先生

変化の大きさではなく、何が変わったかを説明できることが大切です。

ビオップ

1匹が大きくなることと、子孫の集団で遺伝子の割合が変わることは違うんだね!

Plus:「進化した商品」と、生物の進化

もう少し先へ

広告では「進化したカメラ」などの表現を見かけます。これは多くの場合、設計者が目的に合わせて性能を改良したという意味です。生物の進化には、あらかじめ完成形を思い描く設計者はいません。日常語の「進歩」のイメージをそのまま持ち込まないだけで、進化の説明が読みやすくなります。

参考資料

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