光合成と呼吸は、二酸化炭素・水・酸素・有機物を介して深くつながっています。ただし、同じ反応を逆向きに進めているわけではありません。植物が昼にも呼吸すること、外から見える気体の出入りは二つの反応の差であることまで整理します。
なんでなんで?! 光合成が呼吸の逆なら、植物は昼に光合成、夜に呼吸するんだよね?
植物は明るいときも呼吸しています。反応全体をまとめた式だけを見ると逆向きに見えますが、反応の場所・仕組み・エネルギーの役割を比べると、単純な逆反応ではないと分かります。
この記事でわかること
- 光合成と呼吸の材料・生成物・場所を比較できる
- 物質の流れとエネルギーの流れを分けて説明できる
- 植物が明るいときも呼吸すると説明できる
- 明暗条件と二酸化炭素交換の資料を読み取れる
これまでに学んだ代謝・ATP・酵素・呼吸を、光合成との関係まで含めて統合します。光合成と呼吸の詳しい反応経路は「生物」で扱い、生物基礎では物質とエネルギーの大きな流れを中心にします。
まず結論
光合成は、光エネルギーを利用して二酸化炭素と水から有機物を合成する同化です。呼吸は、有機物を分解し、その過程で得たエネルギーをATP合成へつなぐ異化です。物質の出入りは対照的ですが、反応経路と役割は単純な逆ではありません。

光合成――光エネルギーを有機物へ結びつける
緑色植物では、光合成は主に葉緑体で行われます。葉緑体に含まれるクロロフィルなどの光合成色素が光を吸収し、そのエネルギーを利用して反応が進みます。
二酸化炭素+水+光エネルギー → 有機物+酸素
二酸化炭素の炭素を有機物へ取り込む同化は、炭酸同化(炭素同化)とも呼ばれます。光合成では、光エネルギーが有機物のもつ化学エネルギーへ結びつけられます。
上の式は、光合成全体の物質とエネルギーの出入りを簡潔に示したものです。ただし、光合成は一段階の反応ではありません。光を利用する反応と二酸化炭素から有機物を合成する反応など、多数の酵素反応が組み合わされています。
呼吸――有機物からATP合成へつなぐ
呼吸では、有機物と酸素から二酸化炭素と水が生じます。その過程で得られるエネルギーの一部がATP合成に使われます。真核細胞では、最初の段階が細胞質基質、その後の主要な過程がミトコンドリアで進みます。
有機物+酸素 → 二酸化炭素+水+エネルギー
光合成でつくられた有機物は、植物自身の呼吸にも使われます。また、動物や菌類などが食物として取り込めば、それらの生物の呼吸にも利用されます。
光合成と呼吸を比較する
| 比較項目 | 光合成 | 呼吸 |
|---|---|---|
| 代謝の分類 | 同化 | 異化 |
| 主な場所 | 葉緑体 | 細胞質基質・ミトコンドリア |
| 主な材料 | 二酸化炭素、水 | 有機物、酸素 |
| 主な生成物 | 有機物、酸素 | 二酸化炭素、水 |
| エネルギー | 光エネルギーを有機物の化学エネルギーへ結びつける | 有機物から取り出し、ATP合成へつなぐ |
| 光 | 必要 | 直接は必要としない |
なぜ「単純な逆反応」ではないのか
二つの反応を物質の出入りだけで比べると、材料と生成物が入れ替わっているように見えます。しかし、光合成と呼吸では、関わる細胞小器官、酵素、反応の段階が異なります。
- 光合成は光エネルギーを受け取り、有機物の合成へ結びつける
- 呼吸は有機物を段階的に分解し、ATP合成へ結びつける
- 同じ一本の反応が、条件によって向きを変えているのではない
また、光合成の途中でもATPはつくられ、反応に利用されます。しかし、そのATPを植物体全体へ長期保存用として配るのではありません。光合成で合成された有機物が、細胞間・器官間の物質とエネルギーのつながりを担います。
植物は昼にも呼吸する
植物の呼吸は、明るさによって昼と夜に切り替わるものではありません。光があるときも、植物細胞は生命活動のためにATPを必要とし、呼吸を続けています。
- 明所:光合成と呼吸が同時に行われる
- 暗所:光合成は行われず、呼吸は続く
- 根など葉緑体をもたない細胞:光合成は行わず、呼吸を行う
『動物細胞と植物細胞のつくりを比べよう』で扱ったように、植物のすべての細胞が葉緑体をもつわけではありません。一方、ミトコンドリアは植物細胞にもあり、呼吸によるATP合成を支えます。
明るい葉が二酸化炭素を吸収していたら、呼吸はゼロってことじゃないの?
観察されるのは、光合成による吸収と呼吸による放出を差し引いた結果です。吸収が見えても、その裏で呼吸は続いています。
明暗条件のグラフを読む
ある植物の緑色組織と、葉緑体をもたない白色組織について、二酸化炭素の正味の交換を測ったとします。ここでは、吸収を正、放出を負で表します。
| 組織 | 明条件 | 暗条件 |
|---|---|---|
| 緑色組織 | +8 | −3 |
| 白色組織 | −2 | −2 |
白色組織は明暗どちらでも二酸化炭素を放出しています。葉緑体がなく光合成を行わなくても、呼吸は行われていると考えられます。
緑色組織は暗条件で3を放出しているため、呼吸による放出量を3と考えます。明暗で呼吸量が同じと仮定すると、明条件では呼吸で3を放出しながら、正味で8を吸収しています。
光合成による二酸化炭素吸収量 = 見かけの吸収量8 + 呼吸による放出量3 = 11
この計算では「温度などの条件が同じで、明所と暗所の呼吸量が同じ」という仮定を置いています。資料問題では、数値だけでなく測定条件も確認します。
共通テストのグラフはこの順番で読む
- 縦軸と横軸:何を測っているか
- 単位と相対値:実数か、基準を1とした値か
- 正負:吸収と放出のどちらを正にしたか
- 条件:明暗、色素の有無、温度、組織量など
- 差し引き:観測値が光合成だけか、光合成と呼吸の差か
見慣れない植物が登場しても、資料内の条件と、光合成・呼吸の基本を組み合わせれば判断できます。
確認問題
問1 光合成と呼吸を、同化・異化にそれぞれ分類してください。
問2 緑色植物の光合成と呼吸が主に行われる細胞小器官を答えてください。
問3 光合成と呼吸が単純な逆反応ではない理由を一つ答えてください。
問4 植物が明るい場所でも呼吸を行う理由を答えてください。
問5 仮想データから、白色組織について読み取れることを答えてください。
問6 仮想データで、明暗の呼吸量が同じと仮定したとき、緑色組織の光合成による二酸化炭素吸収量を求めてください。
まとめ
- 光合成は、光エネルギーを利用して有機物を合成する同化である。
- 呼吸は、有機物を分解してATP合成へつなぐ異化である。
- 光合成は主に葉緑体、呼吸の主要過程はミトコンドリアで進む。
- 光合成と呼吸は物質の出入りが対照的だが、単純な逆反応ではない。
- 植物は明るいときも呼吸し、観測される気体交換は光合成と呼吸の差である。
植物は昼に光合成、夜に呼吸と交代していたでしょうか。
交代じゃない! 植物は明るいときも呼吸していて、外から見える二酸化炭素の出入りは光合成と呼吸の差なんだね。
Plus|二つの反応は炭素循環につながる
光合成は大気や水中の二酸化炭素を有機物へ取り込み、呼吸は有機物の炭素を二酸化炭素として環境へ戻します。生物が食べたり食べられたりする間も、有機物に含まれる炭素は移動します。
このつながりを生態系全体へ広げたものが炭素循環です。生産者・消費者・分解者の関係と合わせて、後の生態系単元で詳しく扱います。


コメント