Aの頻度と、AAの個体の割合は、何が違うのでしょうか。ハーディ・ワインベルグの法則を、遺伝子の数え方、受精の組合せ、世代を経ても頻度が保たれる理由の順にたどります。式の意味を確かめてから、資料を使う計算問題へ進みましょう。
AAが20%なら、Aの頻度も20%じゃないの?
Aaの個体もAをもっていますね。まず個体を数える場合と、その個体がもつ対立遺伝子を数える場合を分けましょう。その違いが分かると、式の意味も追えるようになります。
この記事でわかること
- 遺伝子頻度と遺伝子型頻度を、分母の違いから説明する
- p²・2pq・q²を受精の組合せから導き、頻度が保たれる理由を理解する
- 観察した個体数・表現型・問題の条件に応じて解法を選ぶ
高校「生物」の集団遺伝を扱います。二倍体生物の常染色体上の1遺伝子座に、Aとaの2種類の対立遺伝子がある場合に絞ります。性染色体上の遺伝子や、3種類以上の対立遺伝子へそのまま式を当てはめないようにしましょう。
まず結論
遺伝子頻度p・qはA・aの割合です。雌雄でその頻度が等しく、無作為に受精すると、子の遺伝子型の割合はAA:Aa:aa=p²:2pq:q²になります。頻度を変える要因がなく、同じ条件が続くと、遺伝子頻度とこの遺伝子型の割合が世代を通じて保たれます。
まず、個体ではなくAとaを数える
同じ種の個体が集まり、互いに交配しうる集団では、親から子へ遺伝子が受け継がれます。その集団がもつ遺伝子の集まりを遺伝子プールといいます。ここでは、そのうち常染色体上の1か所の遺伝子座に注目します。二倍体の個体は、その遺伝子座に対立遺伝子を2つもつので、N個体なら数える対立遺伝子は合計2N個です。これはDNA複製後の分子数を数える話ではありません。
AA・Aa・aaという組合せの個体がそれぞれどれだけいるかが遺伝子型頻度です。一方、対立遺伝子全体に占めるAやaの割合が遺伝子頻度です。Aの頻度をp、aの頻度をqとします。2種類だけを考えるので、p+q=1です。

図1は100個体の架空の集団です。AAが20個体、Aaが60個体、aaが20個体なら、AAの個体の割合は20÷100=0.2です。しかしAはAAに2個ずつ、Aaにも1個ずつあります。したがってAは20×2+60=100個で、p=100÷200=0.5です。aも同様に100個なのでq=0.5になります。
遺伝子型の割合=その遺伝子型の個体数÷N
Aの頻度p=(2×AAの個体数+Aaの個体数)÷2N
aの頻度q=(2×aaの個体数+Aaの個体数)÷2N
この数え方には、ハーディ・ワインベルグの法則が成立するという仮定は必要ありません。実際の遺伝子型別個体数が分かれば、その集団・標本のpとqは直接求められます。逆にpとqだけでは、現在のAA・Aa・aaの割合は一般には決まりません。p=q=0.5でも、AAとaaが半数ずつの集団と、全個体がAaの集団の両方がありえます。
ハーディ・ワインベルグの法則は、何を仮定するのか
では、遺伝子頻度から次世代の遺伝子型の割合を予測できるのは、どのような場合でしょうか。ハーディ・ワインベルグの法則は、一定の条件のもとで、遺伝子頻度と遺伝子型頻度が世代を通じて保たれることを示します。進化が起こる要因をいったん取り除き、「変化しない場合」を比較の基準にする考え方です。

集団が十分に大きいという条件は、遺伝的浮動による偶然の偏りを無視するためです。無作為な交配とは、ここで考えている遺伝子型に応じて相手が選ばれる偏りがないことです。親がつくる配偶子が無作為に受精することで、次の節の掛け算が使えます。
さらに、遺伝子型による生存・繁殖の差、すなわち自然選択がないこと、Aとaの変化を生む突然変異がないこと、移住などによる遺伝子の流出入がないことを仮定します。現実にはこれらの影響が完全にゼロとは限らないため、問題文では「影響を無視できる」と表現されることもあります。
以下の導出では、雌雄の配偶子でAとaの頻度が等しく、それぞれpとqであるとします。通常のメンデル分離ではAaからAとaをもつ配偶子が半分ずつ生じますが、集団全体の配偶子がA:a=1:1になるとは限りません。親集団のAA・Aa・aaの構成が反映されるからです。
なお、無作為な交配が崩れると遺伝子型の割合は変わりえますが、それだけでAとaの頻度まで必ず変わるとは限りません。「前提が崩れたら何が変わるのか」も、遺伝子頻度と遺伝子型頻度を分けて考えます。
受精の組合せからp²・2pq・q²を導く
雌側の配偶子も雄側の配偶子も、Aをもつ割合がp、aをもつ割合がqであるとします。無作為に受精するとき、子がAAになるのは、両方からAを受け取る場合です。それぞれの確率を掛けて、p×p=p²となります。同様に、aaはq×q=q²です。

図3では上側を父側の配偶子、左側を母側の配偶子として読んでください。Aaには「母からA・父からa」と「母からa・父からA」の2通りがあります。各確率はpqなので、合わせてpq+pq=2pqです。aAと書かれる組合せも同じヘテロ接合体Aaとして数えます。
AA:Aa:aa=p²:2pq:q²。Aaの2は、Aを受け取る親が異なる2通りを足したものです。3つの割合の合計はp²+2pq+q²=(p+q)²=1で、すべての子を数えきっています。
例えばp=0.6、q=0.4なら、AA・Aa・aaは0.36・0.48・0.16、比では9:12:4です。子が1000個体なら期待個体数は360・480・160個体になります。これは条件から予測される値であり、実際の少数の子が必ずこの人数になるという意味ではありません。無作為な受精でも、有限の標本には偶然の偏りが生じます。
この導出に、Aが顕性であるという条件は使っていません。顕性・潜性は表現型の現れ方の区別で、Aとaが受精で組み合わさる確率を決めるものではないためです。「顕性だからAが増える」「潜性だからaが消える」という結論にはなりません。
子の世代で数え直しても、遺伝子頻度は変わらない
組合せが求められたら、子がもつAをもう一度数えましょう。AAがもつ対立遺伝子はすべてA、Aaがもつ対立遺伝子の半分はA、aaにはAがありません。個体の割合に、このAの割合を掛けて足します。

Aの頻度はp²×1+2pq×(1/2)+q²×0=p²+pqです。p+q=1なので、p²+pq=p(p+q)=pとなります。同様にaの頻度もq²+pq=qです。受精によって組合せを作り直しても、Aとaの全体の割合は変わっていません。
数値でも確かめましょう。先ほどの子1000個体の期待値では、Aは360×2+480=1200個、全体は2000個なのでp=0.6です。親の配偶子での頻度と一致します。子が成長し、同じ条件で繁殖すれば、さらに次の世代でも同じ組合せの割合が得られます。
図1の親集団はAA・Aa・aa=20%・60%・20%で、p=q=0.5です。条件を満たす無作為な受精後は25%・50%・25%になります。遺伝子型頻度は変わりますが、pとqは0.5のままです。その後も条件が続けば25%・50%・25%が保たれます。
つまり、最初から任意の遺伝子型の割合がそのまま保たれる法則ではありません。無作為な受精によってp²・2pq・q²の関係が成立し、頻度を変える要因がなければ、その関係が次の世代以降も保たれるのです。ここを押さえると、親世代の個体数をそのまま子へ写してしまう誤りを避けられます。
応用:潜性の表現型から、遺伝子頻度を逆算する
ここまではp・qから子の遺伝子型の割合を求めました。次は逆に、観察できた表現型からp・qを推定する応用です。Aがaに対して完全顕性で、aaだけが潜性の表現型を示し、平衡の条件が成り立つ集団を考えます。潜性の個体が4%なら、それはaの割合ではなくaaの個体の割合なので、q²=0.04と置きます。

qは0以上1以下なのでq=√0.04=0.2です。p=1−q=0.8となり、Aaの割合は2pq=2×0.8×0.2=0.32、つまり32%です。AAはp²=0.64で64%。遺伝子型の比はAA:Aa:aa=64:32:4=16:8:1となります。
検算として64%+32%+4%=100%です。100個体に換算してaを数えると32+4×2=40個、全体200個に対して40÷200=0.2となり、求めたqに戻ります。「平方根を取ったら終わり」ではなく、もとの割合へ戻せることを確認しましょう。
顕性の表現型はAAとAaを合わせたものです。この例では96%ですが、その96%をpやp²と置いてはいけません。顕性の表現型の割合だけが与えられた場合には、同じ条件のもとで1から引き、aaの割合へ直してから逆算します。
さらに「顕性の表現型を示す個体のうち、Aaは何%か」と聞かれたら、分母が全個体ではなくAA+Aaに変わります。この例では32÷96=1/3、約33.3%です。全個体中の32%と混同しないよう、何を100%とするかを読み取ります。
平方根を使う理由は、法則が成り立つ集団ではaaの割合がq²と表せるからです。aaが4%なら、q²=0.04なのでq=0.2と求められます。一方、法則が成り立つと分からなければ、aaの割合だけではaの頻度は決まりません。aはAaの個体にも含まれ、その人数が分からないためです。単に計算方法を覚えるのではなく、「aaの割合をq²と表せるので、qを求めるために平方根を取る」とつなげて考えましょう。
資料問題では、何を数えたデータかを先に読む
共通テストを意識した学習では、式の暗記に加え、表の数値が「個体数」「遺伝子型の割合」「表現型の割合」「対立遺伝子の頻度」のどれかを判断する練習が大切です。まず対象の集団・世代・観察時点を確認し、次に何が問われているかを確かめます。

AA・Aa・aaの個体数が示されているなら、平衡を仮定せず直接Aとaを数えます。その値から次世代を予測する段階で、雌雄の頻度や無作為な交配などの条件を使います。観察した現在の個体数を、理由なくp²・2pq・q²へ置き換えないことが重要です。
例えば、親がAA=40個体、Aa=120個体、aa=40個体ならp=(80+120)÷400=0.5です。法則の条件が成り立つ受精で子200個体を考えると、期待個体数はAA=50、Aa=100、aa=50です。親の40・120・40と子の期待値50・100・50は異なります。現在の観察値と次世代の予測値を区別すれば、同じp・qから違う数が現れても混乱しません。
また、受精直後の割合と、成長後の生存個体の割合が違う資料なら、その間の生存率の差を検討します。どの段階で自然選択が働いたのかを飛ばし、全段階で同じ比になると考えてはいけません。
観察値が理論値からずれていても、それだけで自然選択の証拠とはいえません。交配の偏りや異なる集団の混在、少数標本の偶然の偏りなど、別の可能性もあります。反対に、1つの遺伝子座で比が一致しただけで、すべての前提が証明されたり、生物全体の進化が止まっていると結論できたりするわけでもありません。
確認問題
以下は、この記事の内容をもとに作成したオリジナル問題です。まず自分で考え、解答で根拠を確かめましょう。
問1
ある二倍体生物の100個体を調べたところ、AAが30個体、Aaが40個体、aaが30個体であった。Aの頻度として最も適切なものを選べ。
① 0.3 ② 0.4 ③ 0.5 ④ 0.7
問1の解答・考え方
③。Aは30×2+40=100個、対立遺伝子全体は100×2=200個なので0.5。AAだけを数えず、AaがもつAも加えます。平衡の仮定は不要です。
問2
法則の条件が成り立つ集団で、Aの頻度が0.7、aの頻度が0.3である。AA:Aa:aaの比を最も簡単な整数比で答えよ。Aaの項に2が付く理由も説明せよ。

問2の解答・考え方
49:42:9。0.7²:2×0.7×0.3:0.3²=0.49:0.42:0.09です。Aaは母からA・父からaの場合と、その逆の場合の2通りがあり、各確率pqを加えます。
問3
平衡の条件が成り立つ集団で、aaだけが潜性の表現型を示す。その割合が9%のとき、aの頻度とAaの割合の組合せとして最も適切なものを選べ。
① 0.09と18% ② 0.3と42% ③ 0.3と21% ④ 0.7と49%
問3の解答・考え方
②。q²=0.09よりq=0.3、p=0.7。Aaは2pq=0.42=42%。9%は個体の表現型の割合であり、aの頻度ではありません。
問4
次の表は、架空の集団の遺伝子型別個体数である。雌雄でAとaの頻度は等しく、全個体の繁殖への貢献は等しい。十分に大きい集団として無作為な交配を行い、突然変異・移出入・自然選択の影響はないとする。
| 遺伝子型 | AA | Aa | aa |
|---|---|---|---|
| 親の個体数 | 40 | 120 | 40 |
子200個体について、AA・Aa・aaの期待個体数を求めよ。また、親から子へAの頻度は変化するか。
問4の解答・考え方
期待個体数は50・100・50個体。親のp=(40×2+120)÷400=0.5なので子の割合は0.25・0.5・0.25です。Aの頻度は0.5のままですが、遺伝子型の割合は変わります。期待個体数は理論上の値で、実際に必ずその個体数になるという意味ではありません。
問5
図の考え方に従い、子の遺伝子型の割合がAA:Aa:aa=p²:2pq:q²であるとき、Aの頻度を表す式として最も適切なものを選べ。

① p² ② p²+2pq ③ p²+pq ④ 2p²+2pq
問5の解答・考え方
③。AAがもつ対立遺伝子はすべてA、Aaがもつ対立遺伝子は半分がAです。p²+(1/2)×2pq=p²+pq=p(p+q)=p。④は分母を個体数Nとした数え方のままで、2Nで割る分の2が足りません。
問6
Aがaに対して完全顕性で、aaだけが潜性の表現型を示す集団を観察したところ、潜性の個体は16%であった。交配や平衡についての情報はない。この情報だけからaの頻度を0.4と決定できるか。理由を述べよ。
問6の解答・考え方
決定できません。aaの割合をq²と置くには平衡の条件が必要です。残る84%にAAとAaがそれぞれどれだけ含まれるか分からず、aを数えきれません。
問7
同じ遺伝子座について、親世代と子世代で遺伝子型の割合が変化したが、Aの頻度は同じだった。次の説明から最も適切なものを選べ。
① 遺伝子型頻度が変われば、遺伝子頻度も必ず変わる。
② 遺伝子型の組合せが変わっても、Aとaの全体の割合は変わらない場合がある。
③ Aが顕性なら、必ずAの頻度が上がる。
④ Aaの割合は常に50%である。
問7の解答・考え方
②。遺伝子型頻度と遺伝子頻度は別の量です。顕性・潜性はヘテロ接合体での表現型に関する用語で、生存・繁殖に有利かどうかや頻度の大小を直接表しません。
問8
ある標本の遺伝子型の割合がp²:2pq:q²と一致しなかった。この結果だけから言えることとして最も適切なものを選べ。
① 必ず自然選択が働いた。
② 必ず突然変異が生じた。
③ 交配の偏り、集団の混在、標本の偶然の偏りなどを含め、追加の検討が必要である。
④ この生物は二倍体ではない。
問8の解答・考え方
③。ずれの原因は1つに限りません。標本の大きさ、雌雄・地域・世代の区分、観察方法、法則の前提を調べます。逆に比が一致したことだけで、すべての前提が証明されたともいえません。
まとめ
- 個体数の分母はN、対立遺伝子を数える分母は2N。直接の数え上げに平衡の仮定は不要。
- 無作為な受精からp²・2pq・q²が得られ、Aの頻度を数え直すとpに戻る。
- 潜性形質の割合をq²に置くのは、aaだけが潜性で平衡の条件が成り立つ場合。
- 観察値と理論上の期待値を区別し、ずれの原因を1つに断定しない。
計算前に「何の割合か」「どの世代か」「条件は何か」を言葉で確認しましょう。
個体の割合と、Aやaの割合は違うんだね。aaの割合がq²と表せるから、平方根でaの頻度qを求められるんだ!
Plus:平衡からのずれは、調査を見直す手がかりにもなる
遺伝子型の観察値が理論値からずれた場合、生物学的な原因だけでなく、標本の選び方や測定上の問題も候補になります。例えば、遺伝子頻度が異なる地域の標本をまとめると、それぞれの地域内では平衡に近くても、全体ではヘテロ接合体が期待より少なく見えることがあります。研究では集団の区切り方や遺伝子型の判定精度も確かめます。ずれは結論ではなく、追加の検討を始める手がかりです。
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編」
- 米国CDC:Human Genome Epidemiology 第10章(Hardy–Weinberg equilibrium・集団構造の項)
- ワシントン大学:Hardy–Weinberg equilibrium 講義資料
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