系統樹の読み方は?共通祖先・配列の比較・分子時計を図で理解する

AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。 生物
図1 AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。

系統樹では、紙面で隣に並んだ生物どうしが、最も近縁とは限りません。枝のつながりをたどると、見かけの並び順とは違う関係が見えてきます。共通祖先の探し方から、DNAの比較と分子時計の計算まで整理します。

ビオップ

枝を回したら隣の生き物が変わったよ。近い仲間も変わっちゃうの?

わや先生

先端の並びではなく、どこで枝が合流するかを見てみましょう。つながりが変わっていなければ、表している関係も同じです。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 共通祖先をたどって系統関係を判断する
  • 相同と相似を区別し、配列比較の条件を説明する
  • 分子時計の速度の意味を確かめて分岐年代を求める
この記事の位置づけ:高校「生物」

生物基礎の「共通祖先からの多様化」を出発点に、高校「生物」の系統樹・分子進化を扱います。3ドメインや分類群の各論、生命の歴史は、別の記事で扱います。

まず結論

ここを押さえよう

系統樹は、生物の進化の道筋を枝分かれで示した図です。近縁かどうかは、より新しい共通祖先を共有するかで判断します。配列の違いや分岐年代を読むときには、比較する領域や枝の長さ、変化速度の条件も必要です。

系統樹は、進化の「順位表」ではない

生物が進化してきた道筋を系統といい、枝分かれする図で示したものを系統樹といいます。枝が分かれる点は節で、共通祖先に対応します。共通祖先とは、複数の系統がさかのぼると共有する祖先です。

ここでは、根元が過去、枝の先端が現在の生物を表す系統樹を考えます。根元から先端へ、古い生物が優れた生物へ順に並ぶわけではありません。現在生きている生物は、それぞれの系統で進化を続けてきた存在です。

AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。
図1 AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。(タップで拡大)

図1では、AとBの枝は、Cを含む共通祖先よりも新しい共通祖先で合流します。したがって、この3つを比べれば、AとBがより近縁です。右の図ではCとBが隣に並んで見えますが、AとBがより新しい共通祖先を共有する関係は変わりません。

系統関係は、先端どうしの紙面上の距離ではなく、枝をさかのぼって共有する共通祖先で判断します。節を中心に枝を回転させても、枝のつながりが変わらなければ同じ系統関係です。

読み取りは、①比べる2つの先端を見つける、②それぞれの枝を過去へ戻る、③最初に合流する節を探す、の順で行います。AとBの最初の合流点は橙色の節です。AとCなら、さらに根元側の節まで戻る必要があります。この違いが、AとBがより新しい共通祖先を共有するという意味です。

節を回す操作は、接続された枝を切って別の場所へ付け替える操作ではありません。左右の図で各節につながる先端の組を確かめれば、同じ樹形か判断できます。逆に、AとCが先に合流するように接続を変えたなら、系統関係も変わります。

また、AからCと、BからCをたどると、同じ古い節で合流します。この図だけなら、Cに対してAとBの一方だけが特に近いとはいえません。紙面ではCがBの隣でも、共通祖先の関係を優先します。

枝の長さに、何の意味があるかを確認する

図1の枝の長さには、時間や変化量の意味をもたせていません。長い枝の生物が、より長く生きてきたという意味ではないのです。一方、系統樹によっては、枝の長さで時間やDNA配列の変化量を表す場合があります。

問題では、図の説明や目盛りを先に確認します。年代の目盛りがあれば時間を、塩基配列の変化を表すと説明されていれば変化量を読み取ります。尺度のない図で、定規で枝を測って年代を計算してはいけません。

また、AとBが近縁でも「現在のAから現在のBが生じた」とは読みません。AとBは、過去の共通祖先からそれぞれ分かれた系統として描かれています。

枝の長さに意味をもたせない樹形、時間を表す樹形、配列の変化量を表す樹形を比較する模式図。尺度を確認してから読む。
図2 枝の長さに意味をもたせない樹形、時間を表す樹形、配列の変化量を表す樹形を比較する模式図。尺度を確認してから読む。(タップで拡大)

左の図は、どの枝がどの節につながるかだけを表します。中央は時間の尺度をもち、分岐点がどの年代に対応するかを読みます。右は、枝の長さで配列の変化量の大小を表す模式例です。同じ時点に生きる生物でも、系統ごとに変化の速さが違えば、変化量を表す枝の長さは異なりえます。

右の図では、枝が長いほど塩基配列の変化が多いことを表しています。塩基置換とは、ある塩基が別の塩基へ変わることです。Aの枝がBより長くても、Aが分岐してからの時間のほうが長いとは限りません。変化量と時間を結びつけるには、変化の速さの情報が必要です。このつながりを、後の分子時計の具体例で確かめます。

単系統群は、共通祖先とその子孫をひとまとまりにする

ある共通祖先と、その祖先に由来する子孫をすべて含めたまとまりを単系統群といいます。図1なら、AとBを合わせたまとまりは、橙色の点に対応する共通祖先からの子孫を両方含みます。

AとCだけをまとめると、両者の共通祖先に由来するBが抜けます。そのため、この系統樹でAとCだけのまとまりは単系統群になりません。「似ているものを好きに囲む」のではなく、共通祖先から出る枝を漏れなく含むかを確かめます。

AとBの共通祖先からの子孫をすべて含むまとまりと、AとCの共通祖先の子孫Bを除いてしまうまとまりの比較。
図3 AとBの共通祖先からの子孫をすべて含むまとまりと、AとCの共通祖先の子孫Bを除いてしまうまとまりの比較。(タップで拡大)

左は、AとBの共通祖先の節から先を、枝ごとまとめて囲んでいます。右の橙色の線は、AとCから共通祖先へたどる経路です。その共通祖先まで戻ると、そこからBへ向かう枝も出ているため、AとCだけを選ぶと子孫を1つ落としてしまいます。先端の名前を選んでから、共通祖先より先の枝をすべて確認する手順が有効です。

この図でA・B・Cをすべて含むまとまりも単系統群です。単系統群の中に、さらに小さな単系統群が入ることがあります。「単系統群は図に1つだけ」「2種の組だけ」と考えず、どの共通祖先を出発点にするかで範囲が変わると捉えましょう。

相同と相似:同じ働きだから同じ由来とは限らない

共通祖先の同じ構造に由来する関係を相同といいます。例えば、ヒトの腕とクジラの胸びれは、働きや形は異なっていても、前肢としての共通の基本構造を受け継いでいます。

一方、由来が異なるのに似た働きをする構造の関係を相似といいます。鳥の翼と昆虫の翅は、どちらも飛ぶために使われますが、同じ祖先の前肢から生じた構造ではありません。似た環境や生活に適応する中で、異なる系統に似た形質が生じることを収斂進化といいます。

形や働きが似ているという理由だけで、近縁だと決めることはできません。構造の由来に加え、ほかの形質や遺伝情報も合わせて考えます。

ヒトの腕とクジラの胸びれは前肢として相同。鳥の翼と昆虫の翅は飛行器官として相似。形や働きの一致だけで由来を決めない。
図4 ヒトの腕とクジラの胸びれは前肢として相同。鳥の翼と昆虫の翅は飛行器官として相似。形や働きの一致だけで由来を決めない。(タップで拡大)

左では、ヒトの腕とクジラの胸びれの外形よりも、内部の基本配置に注目します。胴体に近い側の骨、その先の2本の骨、さらに手や指に相当する部分という対応が、共通の由来を考える手がかりです。泳ぐための形へ変わっていても、前肢としてのつながりを読み取れます。

右の鳥の翼と昆虫の翅では、空気を受けて飛ぶという機能が似ていても、同じ前肢の骨格からできた構造ではありません。ただし「相同か相似か」は、何の構造を比べているかによります。生物全体に一括して貼るラベルではなく、比較対象を明確にして使います。

分子系統樹は、対応する配列を比較する

DNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列を比べて推定した系統樹を分子系統樹といいます。比較では、同じ遺伝子の対応する領域など、共通の由来をもつ配列をそろえます。異なる遺伝子の無関係な場所を比べても、そのまま近縁さの物差しにはできません。

3種の対応するDNA領域を比較した架空の短い配列。種の名前A・B・Cと、塩基の略号A・C・G・Tを区別して読む。
図5 3種の対応するDNA領域を比較した架空の短い配列。種の名前A・B・Cと、塩基の略号A・C・G・Tを区別して読む。(タップで拡大)

図5では、AとBの違いは6番目の1か所、AとCは2・4・6番目の3か所、BとCは2・4番目の2か所です。この短い資料では、AとBの配列が最も似ています。

ただし、「違いが最少だから、これだけで系統が確定した」とは言いません。偶然同じ塩基になる変化、同じ位置で繰り返し起きた変化、系統ごとの速度の違いなどがありえます。実際には、より長い領域や複数の遺伝子などを使い、証拠を増やして推定します。

とくに、配列が同じだったとしても、比較した領域が短ければ別種を区別できないことがあります。配列の一致と、生物全体が同じ種であることは同じではありません。

配列を数える際には、同じ列どうしを比べます。AとBなら1番目から5番目は一致し、6番目だけCとTで異なります。文字Aという種名と、塩基アデニンの略号Aを混同しないように、最初に行見出しと列の意味を確認します。

挿入や欠失によって配列の長さが変わる場合には、単に左端をそろえるだけで対応する位置が一致するとは限りません。高校の問題では、対応関係が分かるよう配列が並べられているか、位置の情報が与えられます。与えられた対応を確かめてから、異なる位置を数えましょう。

「比較した6塩基中で1か所違う」という観察と、「進化の途中で変化が合計1回だけ起きた」という推定も同じではありません。同じ位置が複数回変わると、現在の差だけでは途中の変化をすべて数えられないためです。

分子時計:2つの系統で変化が積み重なる

ある分子の配列の変化が、長い時間で見ればほぼ一定の速度で蓄積すると仮定し、その違いから分岐後の時間を推定する考え方を分子時計といいます。すべての遺伝子・すべての系統で、同じ速度が成り立つわけではありません。

両方の系統で同じ一定速度rで変化が蓄積すると仮定した分子時計。2系統間の違いdは、それぞれの系統の変化rtを足したもの。
図6 両方の系統で同じ一定速度rで変化が蓄積すると仮定した分子時計。2系統間の違いdは、それぞれの系統の変化rtを足したもの。(タップで拡大)

1系統当たりの変化速度をr、分岐後の時間をtとします。両系統が同じ速度で変化したなら、片方の変化量がrt、もう片方もrtです。2系統間の違いdは、単純なモデルではd=2rtとなり、t=d÷(2r)で求めます。

例えば、2種の対応する1000塩基のDNA領域を比べたとします。この領域全体で、各系統に平均50万年に1回の塩基置換が蓄積する、つまり各系統が100万年につき平均2か所ずつ変化するモデルを考えます。2種間には合計20か所の違いがあったとします。同じ位置での繰り返しの変化などを無視すれば、分岐後の時間は20÷(2×2)=5、つまり500万年です。

「50万年に1回」という表し方でも、両系統で変化が積み重なることは同じです。20か所の違いを、同じ速さで変化した2系統に平均して分けると各10回分なので、10×50万年=500万年と求められます。ここでの速度は比較した1000塩基の領域全体・1系統当たりの値です。1つの決まった塩基が50万年ごとに必ず変わる、という意味ではありません。

速度が「1系統当たり」なら両系統分を足し、「2系統間の違いの増加速度」なら、さらに2倍しません。公式を先に当てはめず、速度の単位と意味を言葉で確認することが大切です。

この計算では、両系統の速度が一定で等しいことや、違いの数が蓄積した変化を近似できることを仮定しています。実際の推定には、化石などから分かる年代を基準にするなど、ほかの証拠も使われます。

計算前に、速度を「何の違いが、どれだけの時間で、どれだけ増える値か」と読み替えます。例の2か所/100万年は、1つの系統についての速度です。両系統がそれぞれ2か所ずつ変わるモデルなので、2系統間では100万年当たり4か所の違いが増えると考えます。

もし問題文に最初から「2種間の違いが100万年当たり4か所増える」と書かれていれば、20÷4で求めます。そこへさらに2を掛けて8で割ってはいけません。式の形ではなく、図の片方の枝の値か、両方を合わせた値かを確認しましょう。

変化速度が同じという仮定が崩れると、単純な計算の結果もずれます。そのため、推定年代は、使った分子や速度の見積もり、化石による年代の手がかりなどと合わせて評価します。計算結果と、計算を可能にした前提をセットで説明することが大切です。

確認問題

以下は、この記事の内容をもとに作成したオリジナル問題です。まず自分で考え、解答で根拠を確かめましょう。

問1

次の2つの系統樹で、より新しい共通祖先を共有する組合せを答えよ。また、左右の図が示す系統関係は同じか。

AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。
図1(再掲) AとBがより新しい共通祖先を共有する、同じ系統関係を表した2つの樹形。橙色の点はAとBの共通祖先。この図では枝の長さに時間の意味をもたせていない。(タップで拡大)
問1の解答・考え方

AとB。左右は同じ系統関係です。先端の並び順は異なりますが、AとBが合流する節と、Cを含む節のつながりは変わりません。

問2

AとBがより新しい共通祖先を共有し、その系統とCが分かれた系統樹を考える。AとCだけを含むまとまりは単系統群か。理由を述べよ。

問2の解答・考え方

単系統群ではない。AとCの共通祖先から生じた子孫にはBも含まれ、Bを除いているためです。

問3

鳥の翼と昆虫の翅が同じ飛行機能をもつことだけから、両者が特に近縁だと結論できない理由を説明せよ。

問3の解答・考え方

同じ働きでも、共通祖先の同じ構造に由来するとは限らず、相似や収斂進化によって似た構造が生じうるためです。

問4

対応するDNA領域が、種XではACGTAC、種YではACGTAT、種ZではATGCATであった。XとY、XとZの異なる位置の数をそれぞれ答えよ。また、この6塩基だけで系統関係を確定できるか。

問4の解答・考え方

XとYは1か所、XとZは3か所。この短い領域だけでは確定できません。別の領域や長い配列などを追加して、偶然の一致なども考慮して推定します。

問5

対応するDNA領域で、2系統のそれぞれが100万年当たり平均3か所ずつ、一定の速度で変化すると仮定する。両系統間には24か所の違いがあり、同じ位置での繰り返しの変化は無視できる。分岐後の時間を求めよ。

両方の系統で同じ一定速度rで変化が蓄積すると仮定した分子時計。2系統間の違いdは、それぞれの系統の変化rtを足したもの。
図6(再掲) 両方の系統で同じ一定速度rで変化が蓄積すると仮定した分子時計。2系統間の違いdは、それぞれの系統の変化rtを足したもの。(タップで拡大)
問5の解答・考え方

400万年。2系統間の違いは100万年当たり3+3=6か所ずつ増えるため、24÷6=4です。片方の速度3だけで割ると、時間を2倍に見積もってしまいます。

まとめ

学習のチェック

  • 近縁さは、より新しい共通祖先を共有するかで判断する。
  • 枝の回転は関係を変えない。枝の長さの意味は図の説明で確認する。
  • 配列は対応する領域で比較し、分子時計は速度の意味と仮定を確かめる。
わや先生

並び順に迷ったら、枝を根元へたどって合流点を探しましょう。

ビオップ

隣に描かれているかじゃなくて、どの共通祖先を共有するかなんだね。枝を回しても同じと分かった!

Plus:系統樹は、証拠をもとに更新される

もう少し先へ

系統樹は、過去を直接撮影した図ではなく、現在得られる証拠から推定した歴史の仮説です。新しい化石や遺伝情報が得られ、枝のつながりの推定が変わることもあります。「変わるから信用できない」のではなく、何を根拠にその関係を考えたのかを確認すると、科学が理解を更新していく過程が見えてきます。

参考資料

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