遺伝的な違いはどう生まれる?突然変異・減数分裂・組換え

DNAの塩基配列が変わる突然変異と、既存の遺伝情報の組合せが変わる場合の比較。右のA・a・B・bは対立遺伝子の記号。 生物
図1 DNAの塩基配列が変わる突然変異と、既存の遺伝情報の組合せが変わる場合の比較。右のA・a・B・bは対立遺伝子の記号。

同じ両親から生まれたきょうだいにも、さまざまな違いがあります。親の遺伝情報を受け継ぐのに、なぜ同じ組合せにはならないのでしょうか。DNAそのものの変化と、有性生殖による組合せの変化を分けて見ていきます。

ビオップ

親からDNAをもらうなら、きょうだいはみんな同じになりそうなのに、どうして違うの?

わや先生

配偶子をつくるときと、配偶子どうしが出会うときに注目しましょう。その前に、DNAの変化と組合せの変化を区別しておきます。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 突然変異と遺伝子の組合せの変化を区別する
  • 減数分裂の第1分裂・第2分裂で分かれるものを説明する
  • 独立な分配・乗換え・受精と多様性を結びつける
この記事の位置づけ:高校「生物」

生物基礎のDNA・染色体・体細胞分裂を復習し、ここから高校「生物」の減数分裂と遺伝的多様性へ進みます。連鎖と組換え価の詳しい計算は、別の記事で扱います。前半で染色体の見方を確かめ、中盤で第1・第2分裂と核相・DNA量を追い、後半で遺伝情報の組合せが変わる仕組みを整理します。

まず結論

ここを押さえよう

突然変異はDNAの塩基配列などを変化させ、新しい対立遺伝子が生じるもとになります。一方、減数分裂と受精は、すでにある遺伝情報の組合せを変えます。この2つが遺伝的な多様性を考える土台です。

突然変異は、遺伝情報そのものの変化

DNAの塩基配列などに生じた変化を突然変異といいます。例えば、塩基が別の塩基に置き換わる、塩基が挿入される・失われる、といった変化があります。染色体の構造や数の変化を含めて扱うこともあります。

突然変異によってタンパク質の構造や量などが変わり、形質に影響が現れる場合があります。ただし、すべての突然変異が目立つ表現型の変化を起こすわけではありません。アミノ酸配列が変わらない場合や、生存・繁殖への影響がほとんどない場合もあります。

突然変異は、生物が必要な形質を手に入れるために、狙って起こす変化ではありません。起きた変化が有利か不利かは、その遺伝子の働きや環境によって異なります。また、進化に関わるには、その変化が子孫へ伝わることが必要です。

DNAの塩基配列が変わる突然変異と、既存の遺伝情報の組合せが変わる場合の比較。右のA・a・B・bは対立遺伝子の記号。
図1 DNAの塩基配列が変わる突然変異と、既存の遺伝情報の組合せが変わる場合の比較。右のA・a・B・bは対立遺伝子の記号。(タップで拡大)

図1左のA・C・G・TはDNAの塩基の略号です。右のA・a・B・bは、2つの遺伝子座の対立遺伝子を区別するための記号であり、塩基そのものを表していません。ABとabからAbやaBという組合せが生じても、新しい対立遺伝子ができたとは限りません。

生物基礎で学んだ流れにつなげると、DNAの変化がmRNAの配列や、つくられるタンパク質へ影響し、その結果として形質が変わることがあります。ただし遺伝暗号には、異なるコドンが同じアミノ酸を指定する場合があります。だからこそ「塩基が1つ変わった=必ず違うアミノ酸になる」とは限りません。

ヒトなどの動物で、体細胞だけに起きた変化は、通常、その個体の子へ直接は伝わりません。配偶子になる細胞の系統に生じ、実際に子へ伝わった変化が、世代をつなぐ遺伝的な違いになります。DNAに変化が起きた場所と、その後どの細胞へ受け継がれるかを区別します。

相同染色体と姉妹染色分体は、同じものではない

二倍体の細胞には、形や大きさ、遺伝子座の並びが対応する染色体が対になって存在します。この対が相同染色体です。通常、一方を母親から、もう一方を父親から受け継ぎます。同じ遺伝子座でも、Aとaのように対立遺伝子が異なることがあります。

分裂前にDNAが複製されると、1本の染色体は2本の姉妹染色分体からなる状態になります。模式図のX字は、2本の相同染色体ではなく、複製された1本の染色体です。X字が2つ並んで、初めて複製済みの相同染色体1対を表せます。

相同染色体は「母由来と父由来の対」、姉妹染色分体は「複製によってできた組」です。どちらも対になって見えるため、図では数と由来を確認しましょう。

母由来と父由来の相同染色体の対と、1本の染色体を複製してできた姉妹染色分体。複製直後を考え、乗換えや突然変異は省略する。
図2 母由来と父由来の相同染色体の対と、1本の染色体を複製してできた姉妹染色分体。複製直後を考え、乗換えや突然変異は省略する。(タップで拡大)

図の色は、母由来と父由来を区別するためのものです。紫と青緑のX字が1つずつあれば、染色体は2本で、姉妹染色分体は合計4本あります。複製によってDNA量は倍になりますが、この段階で染色体の本数まで2倍と数えるわけではありません。

相同染色体は同じ遺伝子座の並びをもっていても、塩基配列まで完全に同じとは限りません。一方、複製直後の姉妹染色分体は、基本的に同じ情報をもつコピーです。ただし、その後の乗換えなどを考える場合には、いつの段階の図かを確認する必要があります。

対合と二価染色体:第1分裂の準備

減数分裂は、染色体の組の数を半分にする分裂です。ヒトなどの動物では配偶子の形成に関わります。まずDNAを1回複製し、その後に第1分裂と第2分裂を行います。2つの分裂の間には、DNAをもう一度複製する過程はありません。

第1分裂の前期には、複製された相同染色体どうしが対応する位置をそろえて接近し、対になります。これを対合といい、対合した1対の相同染色体を二価染色体といいます。二価染色体は、新しい染色体が2本増えたという意味ではありません。

二価染色体の対合面と縦裂面。相同染色体2本・染色分体4本を重ねて示し、補助図で同じ色の姉妹染色分体と、異なる色の相同染色体の境界を区別する。ねじれ等を省略した配置モデル。
図3 二価染色体の対合面と縦裂面。相同染色体2本・染色分体4本を重ねて示し、補助図で同じ色の姉妹染色分体と、異なる色の相同染色体の境界を区別する。ねじれ等を省略した配置モデル。(タップで拡大)

図では紫と青緑が、それぞれ一方の相同染色体です。2本を重ねて描いていますが、1本に融合したわけではありません。それぞれは姉妹染色分体2本からなります。したがって、二価染色体1個は染色体2本、染色分体4本からなります。「二価」の2と染色分体の4を混同しないように、染色体の数と、その中のコピーの数を別々に数えます。

相同染色体どうしが向かい合う面を対合面、1本の染色体をつくる姉妹染色分体の間の面を縦裂面と呼びます。図の補助図では、紫2個と青緑2個の境界が対合面です。同じ色の2個を分ける境界が縦裂面です。前者に沿って相同染色体が分かれるのが第1分裂、後者に沿って姉妹染色分体が分かれるのが第2分裂です。実際のねじれや立体配置は単純化しています。

例えば2n=4、つまり相同染色体が2対ある細胞なら、複製後の染色体は4本、対合すると二価染色体は2個です。対合は、同じ種類の相同染色体どうしで起こります。隣にある染色体が無差別に組になるわけではありません。

対合した相同染色体では、姉妹ではない染色分体の間で乗換えが起こることがあります。乗換えが起きた部分では、相同染色体の間に交差したつながりが見られ、これをキアズマといいます。具体的にどの部分が交換されるかは、後の乗換えの図で確認します。

減数分裂の全体像:1回複製し、2回分裂する

第1分裂では相同染色体、第2分裂では姉妹染色分体が分かれます。「2回分裂する」とだけ覚えるのではなく、各段階で何のつながりが解かれるのかを見ます。次の図は、相同染色体が1対だけある2n=2の例です。分配に集中するため、乗換えは省略しています。

相同染色体が1対だけある場合の減数分裂の模式図。第1分裂で相同染色体、第2分裂で姉妹染色分体が分かれる。乗換えは省略。
図4 相同染色体が1対だけある場合の減数分裂の模式図。第1分裂で相同染色体、第2分裂で姉妹染色分体が分かれる。乗換えは省略。(タップで拡大)

左の1細胞にあった紫のX字と青緑のX字が、第1分裂で別々の細胞へ移ります。第2分裂では各X字の姉妹染色分体が分かれ、棒状の染色体として別々の細胞へ入ります。基本的には、1つの出発細胞から4つの半数体の細胞ができます。

ヒトの卵形成では細胞質が不均等に分配され、4つすべてが卵になるわけではありません。また、実際の染色体の形や核膜の状態は段階によって変わります。この図は、染色体の分配関係を追うための模式図です。

第1分裂:前期・中期・後期・終期

第1分裂の前に、間期のS期でDNAが複製されています。以下は染色体が1対だけの例です。核膜や染色体の細かな形は省略し、染色体の対と、その移動に注目します。図は①から④へ順に読みます。

第1分裂の前期・中期・後期・終期と細胞質分裂。相同染色体1対、2n=2の例。相同染色体が分かれ、各染色体の姉妹染色分体はつながったまま。核膜・乗換え・凝縮の変化は省略。
図5 第1分裂の前期・中期・後期・終期と細胞質分裂。相同染色体1対、2n=2の例。相同染色体が分かれ、各染色体の姉妹染色分体はつながったまま。核膜・乗換え・凝縮の変化は省略。(タップで拡大)

① 前期:染色体が凝縮し、相同染色体どうしが対合して二価染色体をつくります。この時期に乗換えが起こりえます。後半には核膜が崩壊し、染色体を分配する紡錘体が働ける状態へ進みます。図では相同染色体が対になったことを示し、乗換えは省略しています。

② 中期:二価染色体が赤道面に並びます。赤道面とは、細胞の2つの極のほぼ中間にある仮想的な面です。紡錘体の微小管である紡錘糸が染色体の動原体に結合します。一方の相同染色体は一方の極へ、もう一方は反対の極へ向く配置になります。

③ 後期:相同染色体どうしのつながりが解かれ、対合面を境に分かれて両極へ移動します。ここでは姉妹染色分体は離れません。紫のX字と青緑のX字が、それぞれX字のまま移動することが、第2分裂との決定的な違いです。

④ 終期・細胞質分裂:染色体が両極へ届き、細胞質が分かれます。各細胞は相同染色体の一方ずつを受け取り、核相はnになります。ただし各染色体は、まだ姉妹染色分体2本からなる複製済みの状態です。第1分裂後の核膜の再形成や染色体の緩み方には、生物による違いがあります。

赤道面は「細胞の中の位置」、対合面は「相同染色体どうしの境界」を指す言葉です。中期の図で近い位置に描かれていても、同じものを定義した語ではありません。

第2分裂:前期・中期・後期・終期

第1分裂でできた2細胞は、DNAを再複製せずに第2分裂へ進みます。次の図でも2細胞を両方描き、最後に計4細胞になるまで追います。紫と青緑の本数を、細胞の内外で取り違えないように見てください。

第2分裂の前期・中期・後期・終期と細胞質分裂。第1分裂後の2細胞で姉妹染色分体が分かれ、合計4細胞となる。核相はnのまま。核膜や分裂後の染色体の緩みは省略。
図6 第2分裂の前期・中期・後期・終期と細胞質分裂。第1分裂後の2細胞で姉妹染色分体が分かれ、合計4細胞となる。核相はnのまま。核膜や分裂後の染色体の緩みは省略。(タップで拡大)

① 前期:それぞれの細胞で第2分裂の紡錘体が形成され、染色体を分配する準備が進みます。核膜が再形成されていた場合は崩壊します。ここで相同染色体がもう一度対合するわけではありません。相同な相手は、第1分裂で別の細胞に分かれています。

② 中期:各染色体が赤道面に並びます。今度は、1本の染色体を構成する2本の姉妹染色分体が、それぞれ反対側の極へ分かれる配置になります。第1分裂のように二価染色体を並べる段階ではありません。

③ 後期:姉妹染色分体のつながりが解かれ、縦裂面に沿って分かれて両極へ移動します。離れた染色分体は、それぞれ独立した染色体として数えます。図で、各細胞内のX字1つが棒状の染色体2本へ変わったことを確認してください。

④ 終期・細胞質分裂:染色体が両極へ届き、核膜の形成や染色体の凝縮の緩みが進みます。細胞質も分かれ、基本的には合計4つの細胞になります。図では追跡しやすいよう、分裂後も染色体を棒状に描いています。

第2分裂は、姉妹染色分体を分ける点で体細胞分裂に似ています。ただし、相同染色体はすでに分かれているため、各細胞の核相はnのままです。「2回目も半分になる」からといって、核相をn/2と表してはいけません。

核相の変化:DNAが増えても2nが4nになるわけではない

核に含まれる染色体の組の状態を核相といいます。基本となる染色体の組を1組もつ状態が単相(n)、2組もつ状態が複相(2n)です。「n」は常に染色体1本という意味ではありません。例えば2n=4の生物では、nは染色体2本からなる1組です。

DNA複製では、それぞれの染色体にコピーができますが、相同染色体の組が新たに増えるわけではありません。そのため複製前も複製後も核相は2nです。一方、第1分裂では相同染色体が別々になるので、分裂後の各細胞の核相はnになります。第2分裂ではコピーを分けるだけで、核相はnのままです。

2n=2の例における、複製前・複製後・第1分裂後・第2分裂後の1細胞当たりの比較。核相は2n・2n・n・n、DNA量の相対値は2・4・2・1。第2分裂後の量を1とする。
図7 2n=2の例における、複製前・複製後・第1分裂後・第2分裂後の1細胞当たりの比較。核相は2n・2n・n・n、DNA量の相対値は2・4・2・1。第2分裂後の量を1とする。(タップで拡大)

図は、各段階の1細胞当たりを比較しています。下段のDNA量は、第2分裂後の1細胞に含まれる量を1とした相対値です。「2」ならその2倍、「4」なら4倍であり、DNAの重さをgで表した値ではありません。

左から、DNA量は2→4→2→1と変化します。それに対し、核相は2n→2n→n→nです。複製前と第1分裂後はDNA量がどちらも2ですが、前者は相同染色体を1本ずつもつ2組、後者は1組の染色体が複製された状態です。DNA量が同じだから核相も同じ、とは判断できません。

表の「染色体数」は、複製前・複製後と、各分裂が終わった細胞で比較しています。第2分裂の途中、姉妹染色分体が離れた後で細胞質がまだ分かれていない細胞全体を数えると、異なる数になります。問題では、どの時期の、1細胞・1核・片側の極のどれを数えるかを確かめましょう。

最後に受精までつなげると、nの配偶子どうしが合わさり、受精卵は2nに戻ります。減数分裂で組を半分にし、受精で2組に戻すことによって、世代を重ねても染色体の組の数が保たれます。

DNA量のグラフ:減る時点と、数える単位を確認する

今度は、DNA量を時間に沿って見ます。縦軸は1細胞当たりのDNA量、横軸は時間です。基準は先ほどと同じく、第2分裂後の1細胞のDNA量を1としています。各分裂後は、できた娘細胞のうち1個に注目して追うグラフです。

各分裂に続いて細胞質が分かれる場合の、1細胞当たりのDNA量の模式グラフ。第2分裂後を1とし、2→4→2→1と推移する。分裂後は娘細胞1個に注目する。時間幅は実際の所要時間に比例しない。
図8 各分裂に続いて細胞質が分かれる場合の、1細胞当たりのDNA量の模式グラフ。第2分裂後を1とし、2→4→2→1と推移する。分裂後は娘細胞1個に注目する。時間幅は実際の所要時間に比例しない。(タップで拡大)

複製前の2から、S期のDNA複製によって4へ増えます。その後、第1分裂中は、細胞質が分かれるまで1細胞全体のDNA量は4です。相同染色体が両極へ移動しただけで、細胞全体のDNAが半分になるわけではありません。

第1分裂に伴う細胞質分裂が完了すると、娘細胞1個当たりは2になります。第2分裂までにDNA複製はないので、4へ戻る上昇はありません。さらに第2分裂の細胞質分裂後は、1細胞当たり1になります。図ではこの切替えを、垂直に下がる線で示しています。

グラフの低下は、DNAの分解ではなく、別々の娘細胞へ分配された結果です。複製後の出発細胞のDNA量は4、第1分裂後の2細胞を合計すると2×2=4、第2分裂後の4細胞を合計すると1×4=4です。DNAの新たな合成や損失を考えないこのモデルでは、合計は保たれています。

問題の縦軸が「1核当たり」「片側の極にあるDNA量」であれば、値を切り替える時点の読み方が変わります。また、第1分裂直後に細胞質が分かれるかどうかにも生物による違いがあります。この図では各分裂に続いて細胞質が分かれる場合を示しています。図の形だけを暗記せず、縦軸と分裂の条件を確認しましょう。

独立な分配で、染色体の組合せが変わる

相同染色体が2対ある場合、それぞれの対がどちらの側へ分かれるかによって、配偶子が受け取る染色体の組合せが変わります。異なる対の分かれ方は、基本的に互いに独立です。

Aとaの遺伝子座、Bとbの遺伝子座が別々の染色体上にあり、親の遺伝子型がAaBbなら、配偶子の遺伝子の組合せはAB、Ab、aB、abです。正常な分配を仮定して多数の減数分裂を考えると、各組合せは1/4ずつと期待されます。

AaBbの個体で、2つの遺伝子座が別々の染色体上にある場合の配偶子。紫はA・Bをもつ染色体、青緑はa・bをもつ染色体を表す。多数の正常な減数分裂から生じる配偶子全体では各組合せが1/4ずつと期待される。
図9 AaBbの個体で、2つの遺伝子座が別々の染色体上にある場合の配偶子。紫はA・Bをもつ染色体、青緑はa・bをもつ染色体を表す。多数の正常な減数分裂から生じる配偶子全体では各組合せが1/4ずつと期待される。(タップで拡大)

乗換えを考えず、各対の父由来・母由来の染色体を区別すると、相同染色体がn対の場合、配偶子への組合せは2n通りです。1回の減数分裂から必ずその全種類ができる、という意味ではありません。

2対の場合の4通りは、「Aを受け取るかaを受け取るか」の2通りに、「Bを受け取るかbを受け取るか」の2通りを掛けたものです。AとBが別々の染色体上にあるという条件が、ここで効いています。AaBbという文字列だけを見て独立と決めないようにします。

図に4種類を並べているのは、多数の減数分裂からできる配偶子全体を整理するためです。1つの細胞の第1分裂では、相同染色体の向きがある組合せに決まり、その分裂からできる細胞はその分配を反映します。「可能な全種類」と「1回の分裂の産物」を区別しましょう。

乗換えは、同じ染色体上の組合せも変える

第1分裂の前期には、相同染色体が対になります。このとき、相同染色体の姉妹ではない染色分体の間で対応する部分が交換されることがあります。これを乗換えといいます。

例えば、一方の染色体にAとB、相同なもう一方にaとbがあるとします。2つの遺伝子座の間で乗換えが起これば、AbやaBの組合せをもつ染色分体が生じます。このように、遺伝子の組合せが変わることが組換えです。同じ染色体上の遺伝子が一緒に伝わりやすい関係は連鎖といいます。

別々の染色体の独立な分配と、相同染色体間の乗換えは、組合せを変える異なる仕組みです。同じ染色体上の遺伝子に、条件を確かめず「配偶子は4種類が同じ割合」と当てはめてはいけません。

ABとabをもつ相同染色体の、姉妹ではない染色分体間で乗換えが起こる模式図。2つの遺伝子座の間で対応する部分を交換するとAbとaBが生じる。
図10 ABとabをもつ相同染色体の、姉妹ではない染色分体間で乗換えが起こる模式図。2つの遺伝子座の間で対応する部分を交換するとAbとaBが生じる。(タップで拡大)

図では、複製済みの相同染色体を、合計4本の染色分体に分けて並べています。乗換えに参加した内側の2本は、Aの遺伝子座とBの遺伝子座の間で対応部分を交換しています。その結果、AbとaBができます。参加しなかった2本はABとabのままです。

この交換は、Aがaへ突然変異したことを意味しません。Aもaも、Bもbも、もとの情報が別の組合せになっています。また、ここで描いた1回の交換の結果を、その個体がつくる配偶子全体の割合と同一視しないでください。乗換えが起こる頻度などを考えて、全体の割合を求めます。

受精で、両親の配偶子が組み合わさる

受精では、両親がつくった配偶子の遺伝情報が組み合わさります。減数分裂で生じた多様な配偶子が、さらにさまざまな組合せで受精するため、子の遺伝子型も多様になります。ただし、これも「子が必要とする組合せを選んでつくる」という仕組みではありません。

遺伝的な違いの由来を尋ねる問題では、まず「DNAそのものが変わった」のか、「既存の対立遺伝子が組み合わさった」のかを判断し、後者なら減数分裂と受精のどの過程かをたどりましょう。

Aaどうしの交配で、両親のA・aの配偶子が等確率で無作為に受精する場合の組合せ。AA・Aa・aaの期待される比は1:2:1。
図11 Aaどうしの交配で、両親のA・aの配偶子が等確率で無作為に受精する場合の組合せ。AA・Aa・aaの期待される比は1:2:1。(タップで拡大)

Aaの親がAとaの配偶子を1/2ずつつくる場合を考えます。両親の配偶子が無作為に受精すれば、組合せはAA、Aa、aA、aaの4通りで、それぞれ1/4です。AaとaAは、ここでは同じ遺伝子型としてまとめるので、AA:Aa:aa=1:2:1になります。

この比は、多数の子を考えたときに期待される比です。4個の子をつくれば必ずAAが1個、Aaが2個、aaが1個になるという約束ではありません。偶然の偏りもあります。配偶子の組合せ、子の遺伝子型、子の表現型を順に整理すると、交配の問題を途中から当て推量で解かずに済みます。

確認問題

以下は、この記事の内容をもとに作成したオリジナル問題です。まず自分で考え、解答で根拠を確かめましょう。

問1

突然変異と遺伝子の組換えの違いを、対立遺伝子という語を用いて説明せよ。

問1の解答・考え方

突然変異はDNAの変化によって新しい対立遺伝子が生じるもとになる。組換えは既存の対立遺伝子の組合せを変える。組合せが変わったことだけから、新しい対立遺伝子ができたとはいえません。

問2

次の図で、第1分裂と第2分裂で分かれるものを、それぞれ答えよ。また、分裂後の核相が2nからnになるのは、どちらの分裂か。

相同染色体が1対だけある場合の減数分裂の模式図。第1分裂で相同染色体、第2分裂で姉妹染色分体が分かれる。乗換えは省略。
図4(再掲) 相同染色体が1対だけある場合の減数分裂の模式図。第1分裂で相同染色体、第2分裂で姉妹染色分体が分かれる。乗換えは省略。(タップで拡大)
問2の解答・考え方

第1分裂では相同染色体、第2分裂では姉妹染色分体が分かれます。核相が2nからnになるのは第1分裂です。第2分裂ではDNA量は半分になりますが、核相はnのままです。

問3

3対の相同染色体が独立に分配されるとする。乗換えを考えず、各対の父由来・母由来を区別したとき、多数の減数分裂全体で配偶子に生じうる染色体の組合せは何通りか。

問3の解答・考え方

2³=8通り。各対について2通りの選択があり、それが3対分組み合わさります。1回の減数分裂で8細胞ができるという意味ではありません。

問4

A・aとB・bが別々の染色体上にあるAaBb個体が、正常な減数分裂により多数の配偶子をつくった。Abの配偶子が期待される割合を答えよ。

問4の解答・考え方

1/4。Aを受け取る確率1/2とbを受け取る確率1/2を掛け、1/2×1/2=1/4と求めます。

問5

同じ染色体にAとB、相同な染色体にaとbがある個体から、Abの組合せをもつ配偶子が生じた。突然変異は起こらなかったものとして、どのような過程で生じうるか説明せよ。

問5の解答・考え方

減数分裂の第1分裂前期に、相同染色体の姉妹ではない染色分体の間で、Aの遺伝子座とBの遺伝子座の間に乗換えが起こると、Abという組合せが生じえます。

問6

2n=4の生物の正常な減数分裂を考える。次の図を参考に、DNA複製前と第1分裂後の1細胞について、①染色体数、②核相、③DNA量の相対値をそれぞれ答えよ。相対値は第2分裂後の1細胞のDNA量を1とする。また、DNA量だけで両者を区別できるか説明せよ。

2n=2の例における、複製前・複製後・第1分裂後・第2分裂後の1細胞当たりの比較。核相は2n・2n・n・n、DNA量の相対値は2・4・2・1。第2分裂後の量を1とする。
図7(再掲) 2n=2の例における、複製前・複製後・第1分裂後・第2分裂後の1細胞当たりの比較。核相は2n・2n・n・n、DNA量の相対値は2・4・2・1。第2分裂後の量を1とする。(タップで拡大)
問6の解答・考え方

DNA複製前は①4本、②2n、③2。第1分裂後は①2本、②n、③2です。DNA量は同じなので、それだけでは区別できません。複製前には相同染色体が対で存在し、第1分裂後には相同染色体の一方ずつが姉妹染色分体2本からなる状態で存在します。

問7

次のグラフでは、1細胞当たりのDNA量が4→2→1と減少する。DNA複製後の1細胞からできた娘細胞をすべて合わせると、第1分裂後と第2分裂後のDNA量の合計はそれぞれいくらか。DNAの分解・消失は起こらないものとする。

各分裂に続いて細胞質が分かれる場合の、1細胞当たりのDNA量の模式グラフ。第2分裂後を1とし、2→4→2→1と推移する。分裂後は娘細胞1個に注目する。時間幅は実際の所要時間に比例しない。
図8(再掲) 各分裂に続いて細胞質が分かれる場合の、1細胞当たりのDNA量の模式グラフ。第2分裂後を1とし、2→4→2→1と推移する。分裂後は娘細胞1個に注目する。時間幅は実際の所要時間に比例しない。(タップで拡大)
問7の解答・考え方

第1分裂後は2×2細胞=4、第2分裂後は1×4細胞=4です。1細胞当たりの値が小さくなるのは、複製したDNAが娘細胞へ分配されるためです。DNA量の合計が半分ずつ失われるのではありません。

まとめ

学習のチェック

  • 突然変異はDNAの変化、組換えは遺伝子の組合せの変化。
  • 対合で二価染色体ができ、第1分裂で相同染色体、第2分裂で姉妹染色分体が分かれる。核相は第1分裂で2nからnへ変化する。
  • 独立な分配・乗換え・受精が、子孫の遺伝的な多様性を生む。
わや先生

親の情報を受け継ぐことと、親とまったく同じ組合せになることは別です。

ビオップ

配偶子をつくる段階でも受精でも、組合せが変わるんだね。DNA自体が変わる突然変異とは分けて考えられそう!

Plus:「同じDNA」でも、何を比べるかが大切

もう少し先へ

「ヒトは同じDNAをもつ」という言い方は、共通する仕組みを説明するときには便利です。しかし、塩基配列が1文字残らず同じという意味ではありません。「同じ種類の遺伝子をもつ」のか、「対立遺伝子まで同じ」なのか、「配列全体が同じ」なのか。比較する範囲を言葉にすると、似ていることと違っていることを両立して説明できます。

参考資料

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