免疫とは?自然免疫と獲得免疫の全体像

物理的・化学的防御による侵入防止、自然免疫、獲得免疫という体を守る三段階を示した図 生物基礎
図1 体を守る三段階。物理的・化学的防御による侵入防止、自然免疫、獲得免疫が順に重なって働く

病原体から体を守るしくみは、白血球や抗体だけではありません。体内への侵入を防ぐ物理的・化学的防御、すぐに働く反応、相手に応じて働く反応が重なっています。まずは免疫全体の地図をつくり、このあとの学習の見通しを立てます。

ビオップ

なんでなんで?! 体を守るしくみって、皮膚や胃酸、白血球、抗体までいろいろ出てきて、つながりが分からないよ。

わや先生

まず「侵入させない」「すぐに排除する」「相手に応じて排除する」の三段階に分けましょう。最初の段階は、さらに物理的防御と化学的防御に分けると整理できます。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 体を守るしくみを三段階に分けて説明できる
  • 侵入を防ぐしくみを、物理的防御と化学的防御に分けて説明できる
  • 自然免疫と獲得免疫(適応免疫)の違いを説明できる
  • 体液性免疫と細胞性免疫を区別できる
  • 主な免疫細胞を役割で整理し、B細胞・T細胞・NK細胞がリンパ球だと判断できる
  • 時間変化の資料から、どの防御が先に働いたか判断できる
この記事の位置づけ|生物基礎

ここでは免疫の全体像だけを扱います。食作用や炎症、抗体ができるまでの流れ、免疫記憶は、後の記事で詳しく学びます。細胞表面の受容体、サイトカイン、抗体の詳しい構造など、分子レベルのしくみには進みません。

まず結論|体を守るしくみは三段階で考える

免疫全体の地図

最初は、皮膚や粘膜などの物理的防御と、胃酸・リゾチーム・ディフェンシンなどの化学的防御が異物の侵入を防ぎます。侵入されたときは自然免疫がすみやかに働き、それでも排除しきれない異物には獲得免疫(適応免疫)が相手に応じて働きます。これらを含む、異物から体を守るしくみを免疫といいます。

物理的・化学的防御による侵入防止、自然免疫、獲得免疫という体を守る三段階を示した図
図1 体を守る三段階。物理的・化学的防御による侵入防止、自然免疫、獲得免疫が順に重なって働く

第1段階|物理的・化学的防御が侵入を防ぐ

物理的防御では、皮膚が病原体などの異物を通しにくい壁になります。気道や消化管などの粘膜では、粘液が異物を捉え、繊毛の運動などによって体外へ運び出します。

化学的防御では、胃酸の強い酸性が多くの微生物の増殖や生存を妨げます。涙や唾液に含まれるリゾチームは細菌の細胞壁の主成分を分解し、皮膚や粘膜の上皮などがつくるディフェンシンは微生物の細胞膜を傷つけます。

物理的防御と化学的防御は、厳密に切り離されて働くわけではありません。たとえば粘液は異物を物理的に捉える一方で、抗菌物質も含みます。二つの防御が連携し、体内へ入れない段階から体を守っていると考えましょう。

第2段階|自然免疫がすみやかに働く

異物が組織へ侵入すると、自然免疫が働きます。自然免疫は、特定の一種類だけを狙うのではなく、さまざまな異物に対して共通するしくみです。過去に同じ異物へ出会った経験がなくても働きます。

好中球やマクロファージなどは、異物を細胞内へ取り込んで処理します。この働きが食作用です。樹状細胞も異物を取り込み、その情報をT細胞へ伝えることで、自然免疫と獲得免疫をつなぎます。

NK細胞は自然免疫に関わるリンパ球で、ウイルスに感染した細胞などを攻撃します。好中球やマクロファージのように異物を取り込む食細胞ではない点を区別します。

第3段階|獲得免疫は相手に応じて働く

体内に侵入した異物のうち、リンパ球によって異物として認識される物質を抗原といいます。獲得免疫は、その抗原に応じて働く防御です。自然免疫より働き始めるまでに時間がかかりますが、特定の相手に対して強く働きます。

獲得免疫には、B細胞がつくる抗体を中心とする体液性免疫と、キラーT細胞が感染した細胞などを攻撃する細胞性免疫があります。

「自然免疫は弱く、獲得免疫は強い」ではない

二つは強さだけで上下に分けるものではありません。自然免疫はすみやかに広く対応し、獲得免疫は特定の相手に応じて働きます。役割の異なるしくみが協力しています。

物理的・化学的防御、自然免疫、獲得免疫が働く時期の重なりを時間軸で示した図
図2 体を守る反応の時間経過。物理的・化学的防御は侵入前から働き、自然免疫と獲得免疫も完全に交代せず、働く時期が重なる
比較 自然免疫 獲得免疫(適応免疫)
働き始め すみやか 初めての相手には時間がかかる
相手の見分け方 さまざまな異物に共通する特徴を捉える 特定の抗原に応じて働く
主な担い手 好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞など B細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞など
免疫記憶 生物基礎では基本的に結び付けない 同じ抗原への次の応答に関わる
自然免疫と獲得免疫は、どちらか一方だけで働くのではない。表が見切れる場合は横にスクロールできます。

免疫細胞は、所属だけでなく役割で覚える

白血球には、免疫に関わるさまざまな細胞が含まれます。「白血球」という一種類の細胞が、食作用も抗体産生もすべて行うわけではありません。

好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、B細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞を主な役割とともに配置した免疫細胞の地図
図3 免疫細胞の役割の地図。NK細胞は自然免疫を担い、樹状細胞は自然免疫から獲得免疫への橋渡しも行う

主な免疫細胞には、好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、B細胞、T細胞などがあります。このうちNK細胞・B細胞・T細胞はいずれもリンパ球です。ただし、所属が同じでも働く免疫は同じではありません。B細胞とT細胞は獲得免疫を担い、NK細胞は自然免疫を担います。

共通テスト対策|B・T・NKはリンパ球

生物基礎で扱う主な免疫細胞は、「B・T・NKのアルファベット組=リンパ球」とまとめると覚えやすくなります。そのうえで、「B・Tは獲得免疫、NKは自然免疫」と分けましょう。好中球・マクロファージ・樹状細胞はリンパ球ではありません。なお、「名前にアルファベットがあれば必ずリンパ球」という一般則ではなく、ここに挙げたB細胞・T細胞・NK細胞を整理するための覚え方です。

資料では「いつ」「どこで」「何が増えたか」を読む

免疫の資料では、横軸の時間を先に確認します。異物の侵入直後に増えた反応なのか、時間がたってから増えた反応なのかで、自然免疫と獲得免疫を整理できます。

細胞数や抗体量が増えたという相関だけから、「その細胞が単独で原因だった」とは断定できません。実験で変えた条件と、実際に測定した値を分けて読みましょう。

確認問題

共通テストを意識したオリジナル問題です。各問題の直前にある資料だけで判断できます。

問1 体を守る段階を分類する

次の働きA~Eを、「物理的防御」「化学的防御」「自然免疫」「獲得免疫」のいずれかに分類してください。同じ分類を複数回使って構いません。

  1. 気道の粘液が異物を捉え、繊毛が体外へ運ぶ。
  2. 胃酸が強い酸性によって多くの微生物の生存を妨げる。
  3. 好中球が侵入した細菌を取り込む。
  4. B細胞から分化した細胞が、特定の抗原に結合する抗体をつくる。
  5. NK細胞が感染した細胞を攻撃する。
問1の解答・考え方

解答:A―物理的防御、B―化学的防御、C―自然免疫、D―獲得免疫、E―自然免疫。粘液と繊毛による排出は物理的防御、胃酸による作用は化学的防御です。抗体を中心とする反応は獲得免疫です。NK細胞はB細胞・T細胞と同じリンパ球の仲間ですが、自然免疫に含まれ、感染細胞などを攻撃します。

問2 反応が増える時期を読む

ある異物が組織へ侵入した後、食作用を行っている細胞数と、その異物に結合する抗体量を調べました。

侵入後の時間 食作用を行っている細胞数(相対値) 抗体量(相対値)
30分 12 0
6時間 68 2
48時間 31 54
確認問題用のモデル資料。数値はしくみを考えるために単純化している。

この資料から直接いえることとして最も適切なものを選んでください。

  1. この条件では、食作用を行う細胞の増加が、抗体量の大きな増加より早く見られた。
  2. 抗体は自然免疫によってつくられた。
  3. 48時間後には自然免疫がまったく働いていない。
  4. 食作用を行う細胞が減ったことだけで、異物が完全に排除されたと分かる。
問2の解答・考え方

正解:1。6時間では食作用を行う細胞数が大きく増え、抗体量の大きな増加は48時間後に見られます。数値が0でないため、48時間後も食作用は確認されています。また、この資料だけでは異物の完全な排除までは判断できません。

問3 皮膚の役割を対照条件から考える

同じ数の細菌を用いて、皮膚表面に置く実験を行いました。Pでは傷のない皮膚、Qではごく小さな傷のある皮膚を用い、一定時間後に皮膚の内側で細菌が検出されたか調べました。

条件 皮膚表面に置いた細菌数 皮膚の内側での検出
P:傷なし 同じ 検出されなかった
Q:小さな傷あり 同じ 検出された
確認問題用のモデル実験。PとQでは皮膚の傷の有無だけを変えた。

結果を最も適切に説明するものを選んでください。

  1. 皮膚は、異物の侵入を防ぐ最初の防御として働く。
  2. 傷のない皮膚では抗体が一切つくられないことが証明された。
  3. 傷をつけると、すべての自然免疫が失われる。
  4. 皮膚表面にある細菌は、すべて獲得免疫で排除された。
問3の解答・考え方

正解:1。細菌数をそろえて傷の有無だけを変えた結果なので、皮膚の連続した構造が侵入防止に関わると考えられます。抗体量や自然免疫の全体は測定していません。

問4 自然免疫と獲得免疫の橋渡しを考える

樹状細胞が異物を取り込む能力は保たれているものの、T細胞へ抗原を提示できないモデルを考えます。このモデルで起こりやすい変化として最も適切なものを選んでください。

  1. 樹状細胞による異物の取り込みは起こりうるが、T細胞を介した獲得免疫の開始が起こりにくくなる。
  2. 好中球がすべてB細胞へ変化する。
  3. 物理的・化学的防御による侵入防止が直ちに消失する。
  4. NK細胞が抗体を大量につくるようになる。
問4の解答・考え方

正解:1。条件では異物を取り込む能力は残っています。一方、抗原提示ができないため、樹状細胞からT細胞へ情報をつなぐ段階が進みにくくなります。

問5 体液性免疫と細胞性免疫を区別する

次の組合せのうち、最も適切なものを選んでください。

  1. 体液性免疫―B細胞の働きによって抗体産生につながる
  2. 体液性免疫―キラーT細胞が感染細胞だけを取り込んで消化する
  3. 細胞性免疫―形質細胞が感染細胞を直接攻撃する
  4. 細胞性免疫―皮膚の角質層が抗体へ変化する
問5の解答・考え方

正解:1。体液性免疫ではB細胞から形質細胞への分化と抗体産生が中心です。細胞性免疫では、キラーT細胞が感染した細胞などを攻撃します。

まとめ

  • 体の防御は、皮膚・粘膜などの物理的防御と、胃酸・リゾチーム・ディフェンシンなどの化学的防御による侵入防止から始まる。
  • 物理的防御と化学的防御は厳密に独立せず、連携して働く。
  • 自然免疫は、過去の経験がなくてもすみやかに働く。
  • 獲得免疫(適応免疫)は、特定の抗原に応じて働く。
  • 獲得免疫には、抗体を中心とする体液性免疫と、感染細胞などを攻撃する細胞性免疫がある。
  • B細胞・T細胞・NK細胞はリンパ球で、B細胞・T細胞は獲得免疫、NK細胞は自然免疫を担う。
  • 樹状細胞は異物を取り込み、T細胞へ抗原提示することで二つの免疫をつなぐ。
  • 細胞名は、所属だけでなく「何をするか」と対応させる。
わや先生

白血球や抗体がばらばらに見えたときは、何から整理しますか。

ビオップ

まず物理的・化学的防御が侵入を防ぎ、入られたら自然免疫がすぐ働き、そのあと獲得免疫が相手に応じて働く。この三段階の地図に置けば、つながりが見えるね!

参考資料

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