恒常性(ホメオスタシス)とは?変化する体を一定範囲に保つしくみ

暑いときも寒いときも、細胞を取り巻く体液の状態が一定範囲に保たれることを示す図 生物基礎
図1 外部環境と、細胞を取り巻く体内環境を区別して考える

体温や血糖など、体の状態が保たれるしくみを学ぶ最初の記事です。「体内環境」と「恒常性」の意味を、身近な例と図解で整理します。表やグラフを読むときに注目したい点も確認しましょう。

ビオップ

なんでなんで?! 夏と冬では気温が全然違うのに、体温も同じくらい変わるわけじゃないよね?

わや先生

今回は、周囲の変化に対して体がどのように反応しているかを見ていきましょう。「一定に保つ」という言葉の意味がポイントです。

この記事でわかること

この記事のゴール

  • 体内環境と恒常性の意味を説明できる
  • 体の状態を保つために、反応が変わることを理解する
  • 表やグラフから「一定の範囲」を読み取れる
この記事の位置づけ|生物基礎

「ヒトの体の調節」の入口です。ここでは、体が何を保っているのかを整理します。神経やホルモンによる詳しい調節は、このあと別の記事で学びます。

体内環境は、細胞を取り巻く環境

私たちの体は多数の細胞からできています。体の奥にある細胞は、外の空気に直接触れて生活しているわけではありません。多くの細胞は、周囲の液体を通じて酸素や栄養分を受け取り、二酸化炭素などを渡しています。

このような細胞を取り巻く体の内部の環境を、体内環境といいます。生物基礎では、特に細胞の外にある体液と、その温度や物質の濃度に注目します。

たとえば、細胞の間を満たす液体が組織液です。組織液は血液などとつながっており、細胞が活動する場の条件を支えています。「体内環境」は、細胞の内部だけを指す言葉ではないのです。

暑いときも寒いときも、細胞を取り巻く体液の状態が一定範囲に保たれることを示す図
図1 外部環境と、細胞を取り巻く体内環境を区別して考える

恒常性は「まったく変わらない」ことではない

外部環境や体の活動が変わっても、体内環境を一定の範囲に維持する性質を恒常性(ホメオスタシス)といいます。

暑い日に歩くと、体内では熱が生じます。それでも体温は気温や活動量の変化にそのまま引きずられるのではなく、熱を逃がす反応などによって調節されます。

まず押さえること

恒常性は、体内の値を一瞬も動かさないことではありません。変化があっても、大きく外れないように調節することです。

体温は一日の中でも変化し、測る部位によっても値が異なります。また、食事の後には血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度である血糖濃度が一時的に上がります。変動すること自体が、直ちに恒常性の破綻を意味するわけではありません。

なぜ、細胞の周囲の状態を保つ必要がある?

細胞の中では、物質をつくったり分解したりする反応が絶えず進んでいます。これらの反応の多くを助けるのが、酵素です。酵素の働きは、温度などの条件によって変わります。

細胞の周囲の温度や物質の濃度が大きく変わると、必要な物質を受け取ったり、体内の反応を進めたりしにくくなります。体内環境の維持は、一つ一つの細胞が働き続けるための条件を整えることでもあります。

酵素と温度の関係を確認したい場合は、酵素の触媒作用と基質特異性の記事へ戻れます。

体温・血糖・水分に共通する考え方

恒常性で扱うのは体温だけではありません。何が変わり、何が調節されるのかを分けて見ると、別々に見える現象を整理できます。

注目する状態 変化を起こす例 調節の例
体温 気温の変化、運動による熱の発生 熱をつくる量や、逃がす量が変わる
血糖濃度 食事によるグルコースの吸収 細胞への取り込みや、蓄え方が変わる
体液の水分・塩類濃度 発汗などによる水分の損失 腎臓で水を体内へ戻す量などが変わる
具体的な神経やホルモンの経路は、後続の記事で扱う。表が見切れる場合は、横にスクロールできます。

ここで大切なのは、臓器の名前を一度に暗記することではありません。体の状態の変化に応じて、器官の働きも変わるという関係です。

状態を保つために、反応は変わる

体温が上がったときは、汗が蒸発して体から熱が奪われることなどにより、上がりすぎが抑えられます。逆に、寒いときに筋肉がふるえると、熱の発生量が増えます。

同じ反応をいつも続けるのではなく、変化を打ち消す方向の反応が起こることが重要です。こうした調節には、意識とは無関係に内臓などの働きを調節する自律神経系や、ホルモンという情報を伝える物質を血液中へ分泌する内分泌系などが関わります。分泌は、つくられた物質を細胞の外へ出すことです。

体温上昇時の汗の蒸発と、体温低下時の筋肉のふるえを対比した模式図
図2 体温の変化を打ち消す反応の例。体温調節には、図以外の反応も関わる
ビオップ

状態を一定に保つなら、体の働きもずっと同じにしておけばいいんじゃない?

わや先生

周囲の条件が変わるので、同じ働きを続けるだけでは状態を保てません。たとえば、暑いときと寒いときでは、熱の逃がし方やつくり方を変える必要があります。

なお、恒常性があれば、どのような環境でも体の状態を保てるわけではありません。調節能力には限界があります。ここでは通常の調節の考え方を学び、体調の診断基準として図や数値を使わないでください。

表やグラフでは「何が、どの範囲で変わったか」を読む

測定値が小さく上下しながら一定の範囲内に保たれることと、凡例の位置を示す概念グラフ
図3 完全な横一直線でなくても、一定の範囲に保たれている場合がある。実測値や正常値の基準ではない

凡例は、図の色や線が何を表すかを説明する部分です。図3の下にある「凡例」では、濃い線が測定値、水色の帯が保たれる範囲を表しています。まずここを確認してから線の変化を読みます。

次の表は、読み取り練習のために作った架空のデータです。「周囲の温度」と「体の中心部の温度」を別々の測定値として比べてみましょう。

時点 周囲の温度(℃) 体の中心部の温度(℃)
開始時 22 36.8
10分後 24 36.9
20分後 26 37.0
30分後 28 36.9
読解練習用の架空データ。実験の実施や健康判定を勧めるものではない

周囲の温度は22〜28℃、体の中心部の温度は36.8〜37.0℃です。この表では、体の中心部の温度変化は周囲より小さくなっています。ただし、この表だけから、どの神経やホルモンが働いたかまでは断定できません。

確認問題

問1 恒常性とは、どのような性質ですか。

解答例:外部環境や体の活動が変わっても、体内環境を一定の範囲に維持する性質です。

問2 食後に血糖濃度が一時的に上がることだけで、恒常性が失われたといえますか。

解答:いえません。恒常性は完全な不変ではなく、変化に応じて一定の範囲へ調節されることだからです。

問3 体温が上がったときの汗の蒸発は、変化を強める反応ですか、打ち消す反応ですか。

解答:打ち消す方向の反応です。汗の蒸発で体から熱が奪われ、体温の上がりすぎが抑えられます。

問4 上の表で、それぞれの温度の最大値と最小値の差を求めてください。

解答:周囲は28−22=6℃、体の中心部は37.0−36.8=0.2℃です。単位をそろえ、同じ測定項目の最大値と最小値を比べます。

問5 上の表だけから「ホルモンだけが体温を調節した」と結論できますか。

解答:できません。示されているのは温度の変化であり、神経やホルモンの働きを個別に調べたデータではないからです。

まとめ

  • 体内環境は、細胞を取り巻く体の内部の環境。
  • 恒常性は、体内環境を一定の範囲に保つ性質。
  • 状態を保つために、器官の働きや反応は変化する。
  • 資料では測定項目・単位・変動範囲を確認し、結果と原因の推測を分ける。
わや先生

夏と冬で周囲の条件が変わっても、細胞が働く場の状態は大きく変わりすぎないよう調節されています。

ビオップ

なるほど! 体が何もしないから同じなんじゃなくて、働き方を変えて保っているんだね。「一定」は、ずっと同じ数字という意味じゃなかった!

Plus|室温調節にたとえると?

本編の理解を助けるたとえ

室内が暑くなったときに冷房を強める、と考えると「状態を保つために反応を変える」ことをイメージできます。ただし、体の中に一台の機械があるわけではありません。実際には複数の器官や情報伝達のしくみが協調しています。たとえと体のしくみは区別しましょう。

参考資料

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