免疫に関わる病気|アレルギー・自己免疫疾患・免疫不全

アレルギーは特定の異物への反応、自己免疫疾患は自己成分への反応、免疫不全は防御の低下という観点で比較する図 生物基礎
図1 三つの整理の視点。実際には複数のしくみが重なる場合もあり、単純な免疫の強弱の順ではない。

体を守る免疫が、病気に関わることもあります。花粉などへの反応、自分の成分への反応、防御の低下を区別し、アレルギー・自己免疫疾患・免疫不全を学びます。図と資料を使い、反応の相手と防御の働きに注目して整理します。

ビオップ

なんでなんで?! 免疫は体を守るのに、花粉症みたいにつらい症状を起こすの? 強ければ強いほどいいわけじゃないのかな?

わや先生

免疫は、反応の強さだけでなく相手や調節も重要です。「何に反応するか」と「防御が働くか」の二つから見ていきましょう。

この記事でわかること

  • アレルギー・自己免疫疾患・免疫不全の違い
  • 花粉症に関わる反応と、免疫寛容の意味
  • HIV感染とエイズ発症を区別して説明する方法
この記事の位置づけ|生物基礎

免疫のしくみを病気と結び付けて学びます。本記事は学習用の説明で、症状から病気を診断するためのものではありません。

まず結論|反応する相手と、防御の働きを分ける

アレルギーは特定の異物への反応、自己免疫疾患は自己成分への反応、免疫不全は防御の低下という観点で比較する図
図1 三つの整理の視点。実際には複数のしくみが重なる場合もあり、単純な免疫の強弱の順ではない。

アレルギーとは、特定の抗原に免疫が過剰に反応し、体に症状や障害が生じることです。花粉や食物の成分など、通常は害を及ぼさない物質に対しても反応が起こります。自己免疫疾患は、自己の成分に対する免疫反応が組織や器官を傷つける病気です。免疫不全は、防御に必要な免疫の働きが十分でない状態です。

この三つを「免疫が強い・普通・弱い」という一本の物差しだけで並べると、何が起きているか分からなくなります。反応の相手が花粉なのか自分の成分なのか、あるいは防御が低下しているのかを確認しましょう。

アレルギー|特定の抗原に免疫が過剰に反応する

アレルギーの原因となる抗原をアレルゲンといいます。花粉、ダニ、食物中の成分などが例です。同じ物質に触れても、すべての人に同じ反応が起こるわけではありません。

花粉症は、花粉の成分に対するアレルギー反応によって、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどが起こる例です。花粉そのものが体内で増殖して症状を起こしているわけではありません。

花粉症で学ぶ、肥満細胞とヒスタミン

花粉症などの反応では、対応する抗体が肥満細胞(マスト細胞)の表面に結合します。この抗体にアレルゲンが結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出され、症状につながります。肥満細胞という名前は、体脂肪を蓄える脂肪細胞という意味ではありません。

肥満細胞に結合した抗体へアレルゲンが結合し、ヒスタミンなどが放出されて症状につながる花粉症の反応の模式図
図2 花粉症などで見られる反応の例。すべてのアレルギーをこのしくみだけで説明するわけではない。

ここでは、アレルゲン・抗体・肥満細胞・ヒスタミンのつながりを押さえましょう。接触皮膚炎など、T細胞が関わる別のしくみのアレルギーもあります。

全身に強い症状が現れることもある

アレルギー反応により、短時間に複数の器官へ症状が現れる状態をアナフィラキシーといいます。さらに血圧低下などによって循環が保てなくなる状態はアナフィラキシーショックと呼ばれます。「アレルギーはくしゃみだけ」とは限りません。呼吸困難や意識の異常などが急に現れた場合は緊急の医療対応が必要です。

自己免疫疾患|自分の成分が反応の対象になる

通常、免疫は自己の成分に対して有害な反応を起こさないよう調節されています。このように、特定の抗原に反応しない状態を免疫寛容といいます。自分の成分に対する免疫寛容は、自己の組織を守るうえで重要です。

この調節がうまく働かず、自己の成分に対する免疫反応によって病気が起きることがあります。関節の組織に炎症が起こる関節リウマチなどが例です。Ⅰ型糖尿病でも、多くの場合、ランゲルハンス島B細胞が自己免疫によって傷つけられ、インスリンの分泌が不足します。

アレルギーと自己免疫疾患は、どちらも免疫反応による障害を含みますが、反応の相手が違います。花粉のような外からの成分か、自己の組織の成分かを区別します。

免疫不全|体を守る働きが十分でない

免疫不全には、生まれつき免疫のしくみに問題がある場合と、感染などの影響で後から免疫の働きが低下する場合があります。防御が低下すると、通常は大きな問題を起こしにくい微生物によっても感染症が起こりやすくなります。これを日和見感染といいます。

HIVはウイルス名、エイズは病気の状態

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、ヘルパーT細胞などに感染するウイルスです。感染が進行してヘルパーT細胞が減少すると、免疫細胞どうしの連携が弱まり、体液性免疫や細胞性免疫の働きが障害されます。

HIV感染に伴うヘルパーT細胞の減少が免疫の連携低下につながることと、HIV感染が直ちにエイズ発症を意味しないことを示す図
図3 HIVと免疫不全の関係。進行には個人差があり、治療によって進行を抑えることができる。

エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)は、HIV感染により免疫機能が低下し、特徴的な病気を発症した状態です。HIVに感染したことと、エイズを発症したことは同じではありません。現在は治療によってウイルスの増殖を抑え、エイズへの進行を防ぐことができます。

HIVは握手や同じ教室で過ごすことなど、日常の接触では感染しません。免疫の知識を、感染している人への偏見につなげないことも大切です。

資料では、症状だけでなく反応の相手を見る

炎症という言葉だけでは、アレルギーか自己免疫疾患かは決まりません。資料が何を抗原として示しているか、どの細胞や物質が変化したかを確認します。また、教科書的な模式資料からしくみを判断することと、実際の人を診断することは別です。

確認問題

当サイト独自の問題です。選択式は最も適切なものを一つ選んでください。

問1 三つの特徴を分類する

資料 観察された特徴
P 花粉成分への免疫反応が症状に関与
Q 自分の組織の成分への免疫反応が障害に関与
R 防御が低下し、通常は問題を起こしにくい微生物による感染症が増加
学習用の模式資料。実際の診断を行う資料ではない。

P・Q・Rを、それぞれアレルギー・自己免疫疾患・免疫不全のどれと対応させますか。

問1の解答・考え方

Pはアレルギー、Qは自己免疫疾患、Rは免疫不全です。PとQは反応の相手、Rは防御の低下に着目します。すべてを「免疫が弱い」とまとめないようにします。

問2 肥満細胞の反応

アレルゲンを加えたときの反応を、ほかの条件をそろえて比べました。

条件 肥満細胞からのヒスタミン放出
対応する抗体が表面にある 多い
対応する抗体が表面にない 少ない
当サイト独自のモデル実験。

支持される説明はどれですか。

  1. 表面の対応する抗体が、アレルゲンによる放出反応に関与する。
  2. すべてのアレルギーは同じ反応である。
  3. 肥満細胞は脂肪を蓄える細胞である。
  4. アレルゲンは抗体へ分化する。
問2の解答・考え方

正解:1。比較した条件と放出量の違いが根拠です。この一つのモデルから全アレルギーに一般化する2は不適切です。3は名前からの誤解、4は抗原と抗体の混同です。

問3 免疫寛容

自分の組織の成分を認識したリンパ球による有害な反応が抑えられています。このしくみの意義を説明してください。

問3の解答・考え方

自己の成分への有害な免疫反応を抑え、自分の組織が傷つけられるのを防ぐ意義があります。免疫寛容は、単にすべての免疫反応が停止するという意味ではありません。

問4 HIVとエイズ

正しい説明はどれですか。

  1. HIVとエイズは同じウイルスの別名である。
  2. HIV感染が確認されれば、その時点で必ずエイズを発症している。
  3. HIVによるヘルパーT細胞などへの影響は、複数の免疫の働きに関わる。
  4. エイズは抗体が過剰に分泌されるアレルギーである。
問4の解答・考え方

正解:3。ヘルパーT細胞は複数の免疫細胞の働きを助けます。1と2はウイルス・感染・発症の区別がなく、4は免疫不全とアレルギーの混同です。

問5 免疫は強いほどよいか

「免疫反応を強くすれば、免疫に関わる病気はすべて改善する」という説明が適切でない理由を、本文の二つの病気の分類を使って説明してください。

問5の解答・考え方

解答例:アレルギーでは特定の異物への反応が、自己免疫疾患では自己成分への反応が障害に関わるため、反応を一律に強めればよいとは言えない。相手と調節を無視して強弱だけで考えないことがポイントです。

まとめ

  • アレルギーでは、通常は害を及ぼさない物質などの特定の抗原に免疫が過剰に反応し、症状や障害が生じる。
  • 自己免疫疾患では自己の成分への反応が障害に関わる。
  • 免疫寛容は自己への有害な反応を抑えるうえで重要である。
  • 免疫不全では防御が低下し、日和見感染が起こりやすくなる。
  • HIV感染とエイズ発症は区別する。
わや先生

免疫を強さだけで考えられない理由が見えましたか。

ビオップ

反応の相手や調節も大切なんだね。必要な防御が弱い場合と、免疫反応が自分の体を傷つける場合を分けて考えるよ!

Plus|IgA血管炎――抗体が関わる、小さな血管の炎症

ここからは発展

IgA血管炎は、IgAという種類の抗体を含む免疫複合体の沈着が関わり、細い血管に炎症が起こる病気です。IgAは「免疫グロブリンA」の略で、抗体の一種です。免疫複合体とは、抗体とその反応相手などが結び付いた複合体をいいます。

血管に炎症が起こると、皮膚では血液が血管外へ漏れて紫色の斑点である紫斑が生じることがあります。関節痛や腹痛、腎臓の障害に伴う血尿・タンパク尿が見られる場合もあります。ただし、症状の組合せや程度は人によって異なります。

以前は「アレルギー性紫斑病」などと呼ばれたこともありますが、花粉症と同じ反応として説明することはできません。IgAは本来防御に役立つ抗体であり、「IgAそのものが悪い物質」という意味でもありません。

発症のしくみには未解明な点があります。見た目の紫斑だけで診断せず、腎臓への影響などを含めて医療機関で評価します。ここでは、免疫反応と血管の炎症がつながる例として理解しましょう。本文の確認問題では、この病気の知識を必要としません。

参考資料

Plus欄の追加参考:日本皮膚科学会・血管炎・紫斑病。感染経路の参考:HIV.gov・How Is HIV Transmitted?。

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